コラム

公開 2023.11.16

養育費が払えない場合どうなる?対処方法を弁護士がわかりやすく解説

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養育費について取り決めをしたものの、その後事情が変わるなどして支払いが難しくなる場合もあるでしょう。
たとえば、勤務先から解雇をされ収入が大きく減少した場合や、再婚相手に子どもができた場合などが挙げられます。

養育費を支払えない事情によっては、減額が認められるかもしれません。
今回は、養育費が減額できるケースや減額をする方法などについて、弁護士が詳しく解説します。

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養育費の概要

はじめに、養育費の概要について解説します。

養育費とは

養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用です。
一般的には、子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する衣食住に必要な経費や教育費、医療費などが該当します。

養育費の支払いは義務?

親が離婚をして一方の親が親権を持っても、もう一方の親が子どもの親でなくなるわけではありません。
子どもは親の離婚にかかわらず引き続き両親の子どもであり、親は子どもの扶養義務を負います(民法877条)。
この扶養義務こそが、養育費を支払うべき根拠です。

離婚とは関係なく親は子どもを扶養する義務があり、親権を持たなかった親は養育費の支払いによって扶養義務を履行することとなります。

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養育費を支払えないとどうなる?

養育費を離婚時などに取り決めたにもかかわらず、その後支払えなくなった場合はどうなるのでしょうか?
養育費を滞納した場合は、次の事態が生じる可能性があります。

財産や給与が差し押さえられる可能性がある

公正証書や調停で合意しり、判決で定められた養育費を滞納した場合は、相手が裁判所に強制執行を申し立てる可能性があります。

強制執行とは、義務を履行しない者の預貯金や不動産、給与などを差し押さえ、強制的に義務を履行させる手続きです。
給与が差押えの対象となった場合は、手続きの過程で勤務先の会社に養育費トラブルについて知られることとなるでしょう。

財産開示手続に協力しない場合には刑事罰の対象となる

強制執行をしようにも、相手方の勤務先や預金先の金融機関などを知らなければ差押えは困難です。
そのため、財産の所在がわからない場合は、強制執行に先立って財産開示手続が取ることがあります。

財産開示手続とは、強制執行を前提に債務者(養育費を滞納している者)に裁判所へ出頭させ、財産状況を陳述させる手続きです。

しかし、以前は裁判所から届いた財産開示手続きへの呼び出しを無視しても、30万円以下の過料に処される可能性があるのみでした。
そのため、過料の支払いと強制執行がなされることを天秤にかけた結果、呼び出しを無視する人も少なくありませんでした。

この点が問題視された結果、民事執行法が改正され、2020年4月1日から改正法が施行されています。
改正後は、正当な理由なく呼び出しに応じなかったり虚偽の陳述をしたりした場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることとなりました。

また、新たに「第三者からの情報取得手続」も制定されています。
第三者からの情報取得手続とは、市区町村役場や日本年金機構などの公的機関や金融機関が持っている情報の開示を受けられる手続きです。
これにより、強制執行から逃げ切ることは非常に困難となりました。

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養育費を支払えない場合の対処法

養育費を支払えなくなった場合、養育費の減額を検討することとなります。
では、養育費を減額したい場合は、どのように対処すればよいのでしょうか?
養育費を減額する方法は次のとおりです。

相手と減額交渉をする

養育費を減額したい場合は、直接相手と減額交渉を行います。
たとえ裁判では認められにくい理由であったとしても、相手との合意さえまとまれば減額できます。

話し合いによって減額交渉がまとまったら、その旨を書面化しておいてください。
書面化していない場合、後日相手から「減額に合意をした覚えはない」などと主張された際に反論することが難しくなるためです。

また、調停で当初の合意がなされていたり公正証書でなされていたりする場合、減額に関する合意も公正証書としておくことをおすすめします。

養育費減額調停を申し立てる

相手との交渉がまとまらなかったり相手が話し合いに応じなかったりする場合は、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てます。
調停とは、裁判所の調停委員が当事者の主張を交互に聞くことによって進行する話し合いの手続きです。

調停はあくまでも話し合いの場であるため、裁判では減額が認められにくい理由によるものであっても、双方の合意によって減額する余地があります。
合意がまとまった場合は、調停調書が作成されます。

養育費減額審判を申し立てる

調停でも交渉がまとまらない場合は、養育費減額審判へと移行します。
審判では、裁判所が養育費の減額の妥当性や、減額後の金額について、一切の事情を考慮して決定します。

勝手に養育費を滞納することは避ける

養育費の減額は、交渉や調停、審判を通じて行います。
養育費を支払えなかったり支払いたくない事情が生じたりしたとしても、相手方の承諾を得ないまま勝手に滞納をしたり減額をしたりすることは避けてください。

勝手に滞納や減額をした場合は、先ほど解説したように強制執行がなされる可能性があります。

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養育費の減額が認められやすいケース

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養育費の減額はどのようなケースで認められやすいのでしょうか?
ここでは、養育費の減額が認められる可能性の高いケースについて解説します。

養育費を支払う側の事情

養育費を支払う側に次の事情が生じた場合は、養育費の減額が認められる可能性があります。

  • 再婚や再婚相手の出産で扶養家族が増えた
  • 再婚相手の子どもを養子にした
  • 収入が大きく減少した

再婚や再婚相手の出産で扶養家族が増えた

養育費の支払い義務者が収入のない相手と再婚したり、再婚相手との間に子どもが生まれたりしたことで扶養家族が増えた場合、養育費の減額が認められる可能性があります。
養育費は、支払い義務者の収入というひとつのパイを本人とその扶養家族との間で分け合うイメージであるためです。
再婚や子どもの誕生によってパイを分ける人数が増えると、その分だけひとりあたりの取り分は小さくなるということです。

再婚相手の子どもを養子にした

養育費の支払い義務者が再婚相手の子ども(いわゆる「連れ子」)を養子にした場合、養育費の減額が認められる可能性があります。
この場合も、扶養親族が増えることで収入というパイを分け合う人数が増えるためです。
なお、再婚相手の連れ子と一緒に生活をしているものの、養子縁組をしていない場合は、養育費には影響しない可能性が高くなります。

収入が大きく減少した

養育費の支払い義務者の収入が本人に責任のない理由によって大きく減少した場合は、養育費の減額が認められる可能性が高いでしょう。
たとえば、勤めていた会社をリストラされ場合や、病気やケガによって働けなくなった場合などが該当します。

養育費を受け取る側の事情

養育費を受け取っている側に次の事情が生じた場合は、養育費の減額が認められる可能性があります。

  • 再婚をして子どもが再婚相手の養子になった
  • 収入が大きく増加した

再婚をして子どもが再婚相手の養子になった

養育費を受け取っている人が再婚し、子どもが再婚相手の養子となった場合は、養育費の支払義務自体がなくなる可能性が高いでしょう。なぜなら、再婚相手との養子縁組によって、子どもの一次的な扶養義務者は養親となった再婚相手となるためです。

なお、子どもが再婚相手の養子になったとしても、その子が自分の子どもでなくなるわけではありません。
あくまでも扶養義務者としての順位が下がるのみであり、引き続き二次的な扶養義務は負い続けます。
また、自分が亡くなった際は原則として子どもは相続人となりますが、子どもが他者の養子になったとしても相続権を持つことには変わりありません。

収入が大きく増加した

養育費を算定する際は、裁判所が公表している「養育費算定表」が参考となります。
この表を参照するとわかるように、養育費の額は子どもの人数のほか、養育費を支払う義務者と養育費を受け取る権利者の収入のバランスによって変動します。
そのため、養育費を受け取っている人の収入が大きく増加した場合は、養育費の減額が認められる可能性が高いといえます。※1

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養育費の減額が認められにくいケース

次の場合は、養育費の減額が認められない可能性が高いでしょう。
ただし、養育費を減額することについて両者間の合意がまとまれば、養育費を減額できます。

特に事情の変化がない場合

当初取り決めた養育費の額が高すぎたことに後から気がつく場合もあるでしょう。
その場合は、養育費を相場程度にまで引き下げたいと考えるかもしれません。

しかし、このことをだけを理由として養育費を減額するのは困難です。
たとえ合意した額に後悔していたとしても、養育費を取り決めた時点から特に事情の変化がなければ、原則として養育費の減額は認められません。

そのため、養育費を決める際は、相手の言い値をそのまま飲んだりその場の感情やプライドなどで決めたりすることは避け、弁護士に相談するなどして、目安となる額を確認したうえで回答するようにしてください。

相手の再婚のみを理由に減額を求める場合

元配偶者が再婚したことや交際相手と同居を始めたことなどのみでは、原則として養育費の減額は認められません。
一方、先ほど解説したように、子どもが再婚相手の養子となった場合は養育費の支払義務がなくなる可能性が高くなります。

面会交流が実現しないことを理由とする場合

養育費を支払いたくないと考える理由として多いのは、面会交流が希望どおりに実現していないことが挙げられます。
離婚時に面会交流について取り決めたにもかかわらず、元配偶者の妨害などによって実現しない場合は養育費を支払いたくないと考えるかもしれません。

しかし、面会交流と養育費の支払いは交換条件ではありません。
たとえ面会交流が実現していなくても養育費の支払い義務がなくなることはなく、一方的に滞納すると強制執行がなされる可能性があります。

面会交流が実現しない場合は、養育費の問題とは別に、裁判を通して面会交流を求めることが一般的です。

収入の減少が意図的なものである場合

意図的に養育費支払い義務者が収入を減少させた場合は、養育費の減額が認められない可能性があります。
たとえば、転職の必要が低いのにあえて給与の低い会社に転職する場合や、会社経営者が特に収益が悪化したのでないにもかかわらず自身の給与を引き下げる場合などが該当します。

収入の減少を理由に養育費の減額を求めるには、収入の減少に合理的な理由があることがポイントです。

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養育費の減額請求を有利に進めるポイント

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養育費の減額を求める際は、できるだけ有利に相手との交渉を進めたいことでしょう。
では、養育費減額交渉を有利に進めるにはどうすればよいのでしょうか?
主なポイントは次のとおりです。

養育費に詳しい弁護士に相談する

養育費交渉を有利に進めたい場合は、離婚や問題に詳しい弁護士にご相談ください。

自分で相手と交渉する場合、相手が連絡を無視したり減額を拒否したりする可能性が高いと考えられます。
これは、相手が「無視していればそのうち諦めるだろう」などと軽く考えている可能性が高いためです。

弁護士が代理で交渉することは、交渉が決裂した場合に調停や審判に移行するとのメッセージとなります。
その結果、裁判外の交渉を有利に進められる可能性が高くなります。
なぜなら、相手も調停や審判にまで移行することは望んでいないことが少なくないためです。

また、たとえ調停や審判へ移行したとしても、弁護士が法的な観点から減額に応じるべき理由を主張することで、減額を実現しやすくなるでしょう。
養育費減額を有利に進めたい場合は、お早目に弁護士へご相談ください。

養育費の相場を把握しておく

相手と養育費減額の交渉をする前に、現状に即した養育費の目安となる金額をあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
相場を確認することで、相手から不利な提案をされた場合に合意してしまうリスクを避けられるほか、自身の主張が相当であるか判断することができるため自信をもって交渉に臨みやすくなるでしょう。

養育費相場の確認は、先ほど紹介した「養育費算定表」が参考となります。
ただし、養育費算定表は目安となる基準にすぎず、事案に応じて修正する必要があります。
そのため、算定表を参考に確認したうえで弁護士へ相談し、現状の一般的な金額を確認しておくとよいでしょう。

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まとめ

収入の減少や扶養親族の増加などで養育費が支払えない場合でも、一方的に養育費を滞納することは避けるべきです。
相手に無断で養育費を滞納した場合、預貯金や不動産、給与などが差し押さえられてしまう可能性があります。

中でも、給与が強制執行の対象となる場合は、勤務先に養育費の滞納を知られてしまうこととなり、職場で気まずい思いをしてしまう可能性があります。
そのため、養育費の支払いが難しくなる事情が生じた場合は、相手との交渉を試みてください。

交渉による減額が難しい場合は、調停や審判によって解決を図ります。
自己都合によらない収入減や扶養親族が増えたことなどが理由である場合は、養育費の減額が認められる可能性が高いでしょう。

しかし、自分で養育費減額に関する交渉を行い、希望する結果を得ることは容易なことではありません。
そのため、取り決めをした養育費が支払えない事情が生じた場合は、養育費問題に詳しい弁護士へご相談ください。

Authense法律事務所では離婚問題や養育費交渉に力を入れており、これまでも数多くのトラブルを解決してきました。
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Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。家事事件(離婚・相続)、一般民事事件(交通事故)、不動産法務など幅広い分野を取り扱い、刑事事件では、裁判員裁判の経験も有する。相談者が抱える法律問題に真摯に向き合い、正確かつ丁寧に説明するよう心がけている。
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