コラム

公開 2020.04.30 更新 2023.12.11

離婚後の住宅ローンは誰が支払う?養育費の計算に住宅ローンは考慮される?

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離婚する際に家の財産分与にはどのような方法はあるのか、ローンはどうすれば良いのか弁護士がわかりやすく解説します。
家を共同名義にする方法もありますがおすすめではありません。
家を売らないで住み続ける場合や、売却する場合ではどちらが良いのでしょうか?

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離婚による「財産分与」とは

財産分与とは、離婚時にこれまで夫婦で築いてきた財産を分けることを指します。
夫婦の一方が、もう一方に対して財産を渡す形でおこなわれることが一般的です。

法務省によれは、財産分与には次の3つの性質があり、中でも「1」が基本であるとされています。

  1. 夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配
  2. 離婚後の生活保障
  3. 離婚の原因を作ったことへの損害賠償の性質

財産分与の割合はどれくらい?

財産分与の割合は、原則として当事者間の協議によって決められます。
協議がまとまらない場合などには「調停」や「審判」で決めることが多いですが、結果的には2分の1ずつとされるケースが多いです。

これは、仮に一方のみが外部から収入を得て、もう一方が専業主婦(主夫)であっても変わりません。
なぜなら、婚姻後に築き上げた財産は外で働いた側のみの功績によるものではなく、それを支える配偶者の存在があったからこそであると考えられるためです。

財産分与の対象となるものならないもの

婚姻後に夫婦の協力によって形成された財産は、すべて財産分与の対象となります。
夫婦の共有名義である財産はもちろん、仮に一方が専業主婦(主夫)であったとしても内助の功があったと考えられますので、外で稼いでいる人がその名義で得た財産も、財産分与の対象です。

たとえば、夫のみが外で働き、妻が長年専業主婦であった場合などには、預貯金の大半は夫名義となっており、かつ婚姻後に取得した自宅土地建物も夫名義であることが多いでしょう。
この場合であっても、この夫名義の預貯金や自宅土地建物も財産分与の対象になるということです。

一方、婚姻前に夫婦それぞれが所有していた財産は、原則として財産分与の対象とはなりません。
これらは、夫婦の協力で築かれた財産ではないためです。

また、たとえ婚姻期間中に得た財産であっても、相手の協力により得たわけではない財産は、財産分与の対象外です。
たとえば、親からの相続で得た財産などがこれに該当します。

財産分与に税金はかかる?

財産分与で財産を受け取ったとしても、原則として所得税や贈与税の対象とはなりません。
ただし、分与された財産の額がさまざまな事情を考慮してもなお多過ぎる場合や、贈与税や相続税逃れのための偽装離婚である場合などには、例外的に課税対象となります。

ただし、財産分与に際して次の税金は課税される可能性があります。

  • 登録免許税:財産分与で家や土地の名義を変える際に法務局で支払う税金です。
  • 固定資産税や都市計画税:財産分与など財産取得の理由に関係なく、1月1日時点の家や土地の所有者に毎年課される税金です。
  • 譲渡所得税:財産の譲渡益に課される税金です。財産分与で土地や家の名義を変えた場合は時価で譲渡をしたとみなされるため、その時点での時価と購入時の時価との差額が課税対象となります。

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家を財産分与する方法


これまで夫婦で住んできた家を財産分与することは少なくありません。
では、家の財産分与にはどのような方法があるのでしょうか?

どちらかが家を取得して代償金を支払う

もっともシンプルな方法は、今後もその家で暮らす側がその家の名義を取得し、その代わりに金銭(代償金)を相手に支払う方法です。
ただし、財産分与で名義を変える家にローンが残っている場合には、注意しなければなりません。
こちらに関しては、後ほど詳しく解説します。

家を共有とする

家を共有名義とすることも、家の財産分与における一つの方法です。
ただし、家を共同名義としてしまうと、その後売却したり大規模な修繕をしたりする際などに、原則として相手の同意を得なければなりません。

離婚する相手と今後も積極的に関わりたいというケースはさほど多くないと思いますので、現実的にはあまりおすすめできない方法です。

家を売却して現金化する

家の財産分与の方法として、家を売却して得た金銭を分けることも選択肢の一つとなります。

たとえば、離婚後に住むには家が広すぎる場合や、その場所で引き続き暮らしたくないなどの事情がある場合、また、共有名義は避けたい一方で財産分与を受ける側に代償金を支払う能力もない場合などには、この方法を選択すると良いでしょう。

家に住宅ローンが残っている場合であっても、売却した対価で返済することが可能です。
ただし、オーバーローンの場合には売却してもなおローンの支払いが残ってしまう場合がありますので、今後のローンの支払いについても協議をしておく必要があります。
こちらに関しては、後ほど改めて解説します。

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離婚後は家を売らないで住み続けるのと売却するのはどちらが良い?

離婚後に家を売らずにそのまま一方が住み続けるのが良いのか、売却して金銭で分けるのか良いのかは、一概に判断できるものではありません。

たとえば、離婚後、子の親権を持つ妻がその家に住み続ける場合には、子にとっての環境が変わりづらいという点が大きなメリットとなるでしょう。
また、転居するには転居費用もかかります。

一方で、離婚による嫌な思い出を忘れたい場合や、ご近所との関係などでその場所に住み続けたくないなど、その家に住み続けることを苦痛に感じるケースもあります。
また、家が広い場合には、以後のメンテナンスや毎年の固定資産税の支払いなどが負担となる可能性もあります。

このように、家を売らずにそのまま一方が住み続けるのが良いのか、売却して金銭で分けるのが良いのかは、一律に判断できるものではありません。
個々の事情に応じて、慎重に判断すべきでしょう。

家を財産分与する際に住宅ローンの支払いはどうなる?

離婚の際、家に住宅ローンが残っていた場合にはどのように対応すれば良いのでしょうか?
ここでは、一般的な住宅ローンの処理方法を解説します。

1. 不動産を売却して住宅ローンを支払う

不動産を売却して住宅ローンを支払う場合、アンダーローンかオーバーローンかで方法が異なります。

アンダーローンの場合

売却して出た利益を使って、まず住宅ローン残額や手数料を支払います。
それでもなお利益が余っているのであれば、余った利益は夫婦間で分割します。
原則として財産分与は財産全体を2分の1ずつに分割することが多いです。

オーバーローンの場合

不動産を売却しても、不動産価格がローン残額を下回ってしまう場合は、残ったローンは支払い続けなければなりません。

2. 夫(住宅と住宅ローンの名義人)がそのまま住み続ける

夫(住宅と住宅ローンの名義人)が離婚後もそのまま住み続ける場合、住宅ローンは夫が支払いを続けていくことになります。
ただし、主債務者が夫であっても、妻が連帯債務者や連帯保証人になっている場合、妻も金融機関に対して債務を負い続けることになります。

金融機関に交渉して、妻を連帯保証人などから外せることもありますが、金融機関の了承を得られないことも多いです。
妻を連帯保証人などから外してもらえる場合、夫は、金融機関から新たに保証人を立てることや、ローンの一部をまとめて支払うことを要求される可能性もあります。

また、不動産価値がローン残額を上回っている場合、住居を売却しなくても、プラスとなっている金額に関しては財産分与の対象になります。

3. 妻(住宅と住宅ローンの名義人ではない人)がそのまま住み続ける

妻(住宅と住宅ローンの名義人ではない人)がそのまま住み続ける場合、夫がローンを支払い続けるケースもあります。
しかし、夫が完済まで支払いを続けてくれる保証があるわけではありません。夫が支払いを滞った場合、妻は立ち退きを要求されることもあるため、非常に深刻な問題です。

また、妻に経済的余裕があれば、債務者を夫にしたまま、実質的に妻が返済を続けるという取り決めをする例もあります。

この際、名義が夫のままの状態では、住宅は夫の財産という扱いになってしまいますが、金融機関としては、ローンが完済するまでは、住宅の名義変更を認めてくれないのが実情です。

そのため、離婚協議をする際は、ローン完済後の名義変更について合意をしておくなどの対策をしておきましょう。

4. 夫から妻へ住宅ローンの名義を変更して、妻がそのまま住み続ける

家に住み続ける妻に経済力があるなら、住宅ローンの債務者を妻に変更できる場合もあります。
この場合は住宅ローンを組んだ金融機関に交渉して、審査してもらわなければなりません。

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離婚時の財産分与における注意点


離婚時の財産分与では、次の3点に注意しましょう。

財産分与には時効がある

財産分与は、離婚が成立した後であっても請求することが可能です。
しかし、財産分与を求める権利は離婚が成立した日から2年間が経過すると時効によって消滅してしまうことには注意してください。

また、離婚成立後は相手が財産分与の話し合いに応じてくれないリスクがあります。
その場合も調停や審判を申し立てることはできますが、可能な限り離婚する際に財産分与についても取り決めておく方が良いでしょう。

相手の財産隠しに注意する

財産分与にあたっては、相手の財産隠しに注意が必要です。
たとえば、婚姻期間中に貯めた金銭の一部を別の口座に移すなどして、財産額を実際よりも少なく提示するかもしれません。

相手の提示額が疑わしい場合などには、弁護士へ依頼して財産の調査をすることも検討すると良いでしょう。

家の財産分与は譲渡所得税の対象となることがある

財産分与の対象として、家や土地などの不動産を渡した場合には財産分与をした側に対して譲渡所得税が課される可能性があります。

譲渡所得税とは、資産を譲渡した際の「儲け」に対してかかる税金です。
財産分与は売却とは異なり対価を得るわけではないため、「儲け」などないと考えるかもしれません。

しかし、家を渡す分については金銭での財産分与を免れると考えれば、家を時価で譲渡したと考えることもできるでしょう。
そのため、家や土地を財産分与の対象とした場合には、その資産を時価で譲渡したものとみなして譲渡所得税の対象になることとされています。

譲渡所得税は毎年の確定申告で申告と納税が必要ですので、申告を忘れないように注意しましょう。

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まとめ

離婚後、不動産を維持する場合で、住宅ローンの負担が大きい場合、支払いができないなどのトラブルが発生します。離婚時に、不動産を売却するのか、あるいは住宅ローンの支払いをどのように行なっていくかなどを決め、公正証書にまとめておくことをおすすめします。

今回ご紹介したケースは一般的なもので、各家庭によって、ローンの状況等は異なります。離婚後もトラブルになりにくい最善の対処法を見つけるために、弁護士など専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
女性弁護士が数多く在籍しており、面談予約時に「弁護士性別」をご希望いただくことも可能です。

弁護士らで構成する離婚専任チーム

離婚問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
感情的になりがちな相手方との交渉を弁護士に任せることで、精神的なストレスから解放されますし、日常生活への影響も最小限に留められます。
相手方に有利な条件での示談や和解を要求された場合でも、弁護士に依頼することによって、過去の判例などを踏まえた対等な交渉ができます。
また、問題終結後に弁護士を通して合意書を作成しておけば、和解成立後に相手方から再び慰謝料を請求されたり、不貞行為の内容をSNSに投稿されたりといった事後的なトラブルを未然に防止することも可能になります。

私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
どうぞお気軽にご相談ください。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
早稲田大学法学部卒業、一橋大学大学院法務研究科修了。離婚、相続問題等の一般民事事件や刑事事件、少年事件、企業の顧問など、幅広い分野を取り扱う。
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