コラム

公開 2021.07.13 更新 2024.02.14

離婚協議中の「子どもの連れ去り」は違法?連れ出す方法は?

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子どもの連れ去りとは、配偶者のどちらかが相手の合意なく子どもを連れて勝手に別居してしまうことです。離婚協議中に別居する場合には、法的な決まりはありません。
子どもを連れ去って別居した場合には、大きなトラブルに発展しかねないため注意が必要です。

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連れ去り別居とは?

連れ去り別居とは、配偶者のどちらかが相手の合意なく、子どもを連れて勝手に別居してしまうことです。
法律的な用語ではなく、あくまで事実状態をそのように表現しているものにすぎません。

子どもがいる夫婦が離婚する際には、父母どちらかを親権者として指定する必要があります。
離婚協議中に別居を開始する際、別居する配偶者が子どもを連れて行ってしまうことがよくあります。
親権を争っているような場合には、連れ去り別居を巡って大きな問題を引き起こすことがあるため、注意が必要です。

連れ去り別居は違法になる?

連れ去り別居について、法律は何も規定していません。
連れ去られた方の配偶者は、子どもを誘拐されたと思ってしまうでしょう。

監護の継続性という観点から、連れ去り別居して監護の環境を既成事実とできるため、好ましいとする立場もありましたし、家庭裁判所も監護の継続性を重視し、親権者の指定にあたって、連れ去る行為についてはあまり重要視していませんでした。

しかし、日本がハーグ条約を締結した平成25年頃から、家庭裁判所においても連れ去り別居の経緯などを重視する傾向に変化してきました。
親といえども相手方配偶者の同意なくして子どもを連れ去って別居を開始した場合には、違法になる可能性があります。

連れ去った側の配偶者も親権者なのですが、連れ去りの態様、経緯などから、未成年者誘拐罪等などの刑事責任を問われる可能性もあります。
また、家庭裁判所において違法な連れ去り別居だと認定されれば、親権者指定の際に適格性がないとの判断の一要素になります。

一方、配偶者からのDVが原因で別居をする場合など、子どもを残しておくことが妥当ではないケースもあります。
そのような場合には、連れ去り別居が違法ということにはならないと考えられます。

このように、子どもを連れて別居するに至った経緯などについては、配偶者双方の言い分が相容れないケースが多くあります。
そのため、当事者にとって不本意な別居であったとしても、必ずしも違法な連れ去りと認定されないケースも多くあります。

違法にならずに子どもを連れだす方法はある?

違法にならずに子どもを連れだす方法はある?

子どもを連れ去って別居する行為はその態様や経緯から違法と判断される可能性があるため、他方の配偶者の承諾なく連れ去る行為は、できれば避けるべきです。
まずは、他方の配偶者と合意をしてから、子どもを連れて別居するようにしましょう。

ただし、話し合いをした結果として合意に至ることができなかったり、離婚に向けた別居の原因が相手方配偶者のDVなどによって、そもそも話し合いをしたりすること自体困難な場合もあります。
上記のとおりDVなどによって明らかに違法な連れ去りとならないと判断できる場合は別ですが、そうではないときには、家庭裁判所に「子の監護者の指定調停」を申し立てるという方法も考えられます。
実際にはどういう状況なのか適切に見極めて進め方を決める必要があり、法律的な判断を迫られることになりますので、実行に移す前に弁護士に相談すると良いでしょう。

監護者の指定は、子どもの健全な成長を助けるためという観点から、子どもの監護者に相応しい親を決定する手続きです。

そのため、調停手続きでは、監護者の指定を希望する事情や親権者の意向、子どもの今までの養育状況、双方の経済力や家庭環境等の他、子の福祉の観点から、子どもの年齢、性別、性格、就学の有無、生活環境等に関して第三者である調停委員が事情を聴取し、必要に応じて資料等を提出してもらうなどして、事情をよく把握した上で、子どもの意向も尊重した取り決めができるように、話し合いがされます。

「子の監護者の指定調停」にて合意に至ることができなくなった場合には、調停不成立となりますが、自動的に「子の監護者の指定審判」の手続きに移行することになります。
審判の手続きでは、裁判官が一切の事情を考慮して、配偶者のいずれが監護者として適切かを判断し決定することになります。
裁判所による決定になりますので、審判によって決定した場合には当事者の合意を必要としません。

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子どもが連れ出された場合の対処

子どもが連れ出された場合の対処

それでは、子どもが連れ出されてしまった場合はどのように対処するべきでしょうか?

連れ戻すことは適切ではない

まず、連れ出された子どもを物理的に連れ戻す方法が真っ先に考えられます。
しかし、この方法は適切ではありません。
連れ戻された側の両親が同じような方法を取ることが考えられますが、そうすると「子の奪い合い」のような状況となってしまいますし、上で書いたように、物理的に連れ戻すと、未成年者誘拐罪などの刑事責任を問われる可能性があります。

法律に則った対応が必要

そのため、子どもを取り戻すためには、法的な手続きに則って対処するべきです。
子どもを取り戻すためには、「子の引き渡し」や「子の監護者の指定」の調停または審判を家庭裁判所に申し立てる方法があります。その他緊急性が高い内容では「審判前の保全処分」という手段を使うこともあります。

子の引き渡しは、子どもにとっては環境の変化を伴いますので、生活の場の変化が子の健全な成長に悪影響を与えないよう、十分に注意する必要があります。
調停等の手続きでは、子どもの年齢や性別、性格、就学の有無、生活環境等を考え、子どもに精神的な負担をかけることのないように十分配慮し、子どもの意向を尊重した取り決めができるように、協議や審理がなされます。

調停での協議が不成立になったら審判が行われる

なお、調停から手続きを行った場合は、調停での協議がまとまらず不成立になったときは、そのまま自動的に審判の手続きが開始され、裁判官が一切の事情を考慮して、審判をすることになります。事案に応じて、当初から審判手続きを利用する場合もあれば、上記の保全処分を申し立てることもあります。

調停は月に1回程度のペースで進みます。
そのため、子どもに差し迫った危険がある場合など、現状のままにしていたのでは調停や審判によって解決が困難になるような場合には、上記のとおり、審判の申し立ての他に、保全処分の申し立てをするべきです。
家庭裁判所は、緊急性が認められる事案(子どもに対する虐待があるケースなど)では、迅速に子どもを仮に引き渡すように命ずる保全処分をしてくれます。

審判に従わない場合は強制執行となる

子の引き渡し審判や審判前の保全処分によって引き渡しが認められたとしても、命令に従わずに引き渡しをしないといった場合もあり得ます。
その場合には、強制執行(引き渡しの断行)を申し立てて、強制執行の手続きを取ることによって子の引き渡しを実現する必要があります。

その他の手続きとしては、人身保護法に基づく「人身保護請求」の申し立てや、「未成年者略取誘拐罪」になるとして、警察に被害届を提出したり刑事告訴したりする方法があります。
しかし、「人身保護請求」は要件が厳格であり、警察は家庭内の問題であるとしてなかなか捜査してくれないといった問題があります。
そのため、状況に応じて、実施する手続きを見極める必要があります。

まとめ

子を連れ去って別居した場合、連れ去った方も、連れ去られた方も問題を抱えることになります。
そのため、離婚を前提とした別居を開始する場合には、子どもの生活環境をどうするのか、しっかり話し合って取り決めをすることが大事です。

そもそも子どもを連れて別居するべきかどうか、安易に個人で判断するのは危険であり、弁護士に相談してアドバイスをもらうべきです。
また、子どもを連れて別居する際に検討が必要なこと、必要な対応、行動や、その後の動き方、相手の動き方の予想やその見通しなど、実際の裁判の実例などを踏まえた判断が必要な場面が多いため、弁護士からの適切なアドバイスが役に立ちます。
子どもを連れ去られてしまった側であっても、その場合にどのように動くべきかなどについて、弁護士であれば具体的なアドバイスが可能です。

子を連れ去って別居した場合であったとしても、法的な対応方法が用意されているため、いずれにしても協議の場が持たれて取り決めがなされます。
もし、夫婦が別居した際に子の連れ去りがなされた場合には、子を連れ去った側も連れ去られた側も、早急に法的な対応を検討するべきです。
具体的な状況によって法的な対応が変わってくる場合もありますので、まずは弁護士に相談をすることが肝心です。

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