コラム

公開 2020.03.10 更新 2024.03.06

離婚調停中の別居は不利になる?注意点を弁護士がわかりやすく解説

離婚_アイキャッチ_129

離婚調停に半年ほどの期間がかかることは珍しくなく、中には1年近い期間がかかることもあります。
離婚調停が長期に及ぶと、その間に別居したいと考えることもあるでしょう。

では、離婚調停中に別居すると調停において不利となるのでしょうか?
また、離婚協議中に別居をする際は、どのような点に注意する必要があるでしょうか?

今回は、離婚調停中の別居について弁護士が詳しく解説します。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

離婚調停中に別居することは可能?

離婚調停中に、配偶者と別居をすることは可能です。

民法は、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」として夫婦の同居義務を定めています(民法752条)。
しかし、離婚調停に至っている以上はすでに夫婦関係は破綻しているものと考えられ、別居すること自体が直ちに法律違反となるわけではありません。

ただし、相手の承諾を得ることなく一方的に家を出た場合などは、離婚調停で不利となる可能性があります。
これについては、次で改めて解説します。

離婚調停中に別居が不利となるケース

離婚調停中の別居が不利となるのは、特に理由がないまま、相手の承諾を得ることなく一方的に家を出た場合です。
相手の承諾を得ることなく一方的に家を出た場合は離婚原因の1つに挙げられている「悪意の遺棄」にあたる可能性があり、離婚調停で不利となる可能性があります(同770条)。

同様に、自分が出ていくのではなく、家の鍵を変えるなどして相手を家から閉め出して別居に至った場合も、悪意の遺棄などに該当する可能性が高いでしょう。

離婚調停中の別居が不利となりづらいケース

離婚調停中に別居をしたからといって、必ずしも離婚調停において不利となるわけではありません。
ここでは、離婚調停中に別居しても不利となりづらいケースを4つ紹介します。

ただし、実際はケースバイケースである側面も強いため、自分一人で判断せず、あらかじめ離婚問題を取り扱う弁護士へご相談ください。

双方が合意して別居した場合

1つ目は、夫婦の双方が合意して別居に至った場合です。

合意をして別居した場合は悪意の遺棄には当たらず、離婚調停において不利とはなりません。
合意のうえで別居する場合は相手から悪意の遺棄であると主張されてしまわないよう、合意書などを取り交わしておくようにしてください。

ただし、相手が離婚したがっており自分は離婚をしたくない場合は、別居に応じるかどうかを慎重に検討したほうがよいでしょう。
なぜなら、別居期間が長くなると、調停が不成立となり裁判へと移行した場合において、裁判所の判断で離婚が認められやすくなる可能性があるためです。

離婚原因が相手のDVなどによる場合

相手のモラハラやDVなどに耐えかねて家を出た場合は、原則として悪意の遺棄には該当せず、離婚調停において不利とはなりません。
ただし、相手からDVなどを否定され悪意の遺棄にあたるなどと主張されるリスクは残ります。

そのため、相手のモラハラやDVを原因として家を出たい場合は可能な限りモラハラやDVの証拠を残すとともに、離婚問題に強い弁護士へご相談ください。

すでに夫婦関係が破綻している場合

すでに夫婦関係が破綻している場合は、別居をしても悪意の遺棄であると判断される可能性は低いでしょう。
ただし、自分では夫婦関係が破綻していると考えていても、相手は破綻には至っていないと考えている可能性もあります。

特に、自分は離婚したいと考えている一方で相手が離婚を拒んでいる場合には、注意しなければなりません。
そのため、相手と別居についての合意ができない場合は、あらかじめ弁護士へご相談ください。

転勤などやむを得ない理由による場合

離婚調停中に、転勤や親の介護、病気の療養などのやむを得ない事情によって別居せざるを得なくなることもあるでしょう。
この場合は、悪意の遺棄などと判断される可能性は低く、離婚調停において不利となる可能性は低いといえます。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。


離婚調停中に別居する際の注意点

離婚調停中に別居する場合、どのような点に注意する必要があるでしょうか?
ここでは、離婚調停中の別居に関する主な注意点を4つ解説します。

婚姻費用のやり取りが発生する

離婚調停中であっても離婚が成立していない場合は、夫婦であることに変わりありません。
そのため、原則として別居期間中も相手との間に婚姻費用のやり取りが発生します。

夫婦にはお互いに生活扶助義務を負っており、相手に自分と同等レベルの生活を送らせる義務があります。
これを体現したものが婚姻費用であり、「婚姻費用には、衣食住の費用のほか、出産費、医療費、未成熟子の養育費、教育費、相当の交際費などのおよそ夫婦が生活していくために必要な費用が含まれる」とされています。※1

婚姻費用の具体的な額は話し合いで決めることが原則であるものの、話し合いがまとまらない場合は調停や審判(調停がまとまらない場合に裁判所が結論を下すこと)によって定めます。

そのため、夫婦のうち収入が少ない側は、別居をするにあたって婚姻費用の請求を忘れないよう注意が必要です。
夫婦のうち収入が多い側は、調停における争点を増やさないためにも、別居にあたっては一定額の婚姻費用を渡すとよいでしょう。

子どもを連れ去ると子どもを元に戻すよう請求されることがある

未成年の子どもがいる場合、別居するにあたって夫婦の一方が子どもを連れていくことがあります。
夫婦間の合意によって子どもを連れていく場合は問題がない一方で、相手に無断で子どもを連れて別居に至った場合は子の引渡し調停を申し立てられ、子どもを元に戻すよう請求される可能性があります。

また、配偶者と居住しており自分とは別居していた子どもを待ち伏せして連れ去ったり別居している配偶者の居宅に侵入して子どもを連れ去ったりした場合は、未成年者略取等罪に該当するリスクもあります(刑法224条)。

そのため、子どもを連れて別居する場合は、できるだけ相手と合意することが望ましいといえます。
相手と合意できない場合や、相手による虐待やDVなどから逃れるために子どもとともに別居したい場合は、あらかじめ弁護士へご相談ください。
また、配偶者が子どもを連れ去ってしまった場合であっても子どもを待ち伏せするなどして強制的に連れ戻すことなどは避け、弁護士へご相談ください。

別居中でも子どもとの面会交流は認められる

離婚が正式に成立する前であっても、子どもともう一方の親との面会交流は認められることが原則です。
正当な理由がないにもかかわらず、面会交流を拒んだり妨害したりした場合は、親権の判断において不利となる場合があります。

別居中でも第三者との交際は避ける

たとえ離婚調停中に別居をした場合あっても、正式に離婚が成立していない以上は、相手と夫婦であることに変わりはありません。
そのため、離婚調停中に配偶者以外の人と交際したり、交際を疑われるような言動をしたりすることは避けましょう。

正式に離婚が成立する前に配偶者以外の人と交際した場合、自分が離婚を請求する側であれば、有責配偶者として離婚請求が認められなくなる可能性があるためです。
相手から慰謝料請求をされる可能性や、相手に請求できたはずの慰謝料が大きく減額される可能性も否定できません。
たとえ別居したとしても、相手と正式に離婚するまでは、配偶者以外の人との交際は控えましょう。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。


離婚調停中の別居を弁護士に相談する主なメリット

離婚調停中の離婚について弁護士に相談する主なメリットは、同居義務違反や悪意の遺棄とならないことをあらかじめ確認しやすくなることです。
離婚調停で不利となる事態を避けるため、離婚調停中に別居したい場合はあらかじめ弁護士へ相談することをおすすめします。

離婚調停中の別居に関するよくある質問

最後に、離婚調停中の別居にまつわるよくある疑問と、その回答を紹介します。

住民票は異動するべき?

住民票を異動させるべきかどうかは、その住まいが一時的であるのか、その後当面の間居住する予定であるかによって異なります。
あくまでも一時的な住まいである場合は、住民票を移さなくてもよいでしょう。

たとえば、離婚調停が成立するまでの間一時的に実家に身を寄せ、その後落ち着いたらすぐに新居を探す予定である場合などがこれに該当します。

一方、その住所にその後しばらく居住する予定である場合は、住民票を移した方が
公的なサービスを受けやすくなります。

また、子どもとともに別居する場合において、子どもの転校や転園が必要な場合は、原則として転校先や転園先の区域に住民票を移しておかなければなりません。
この点については、転園や転校の候補先にあらかじめ相談しておくとよいでしょう。
一方、住民票を異動させると、もとの住民票には転出先が記載され、相手(配偶者)も見ることができます。相手に別居先を知られたくない場合などは、慎重に検討する必要があります。

このように、離婚調停中の別居で住民票を移すべきかどうかは状況によって異なります。
迷う場合は、離婚問題に詳しい弁護士へご相談ください。

調停中に一方的に別居した相手を強制的に連れ戻せる?

離婚調停中に相手が一方的に家を出て別居を開始した場合、相手を連れ戻すことはできるのでしょうか?

相手が一方的に家を出て別居を開始した場合、夫婦同居を求める調停等を申し立てる方法はあります。
しかし、実際には、本人の意思に反して同居を強制する法的手段はなく、効果的とはいえません。
そのため、相手が一方的に家を出た場合は無理に連れ戻そうとは考えず、弁護士へ相談したうえで対応を検討した方がよいでしょう。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。


まとめ

離婚調停中に夫婦が別居をしたからといって、必ずしも調停で不利となるわけではありません。
ただし、一方的に家を出た場合は悪意の遺棄や同居義務違反を指摘され、離婚調停で不利となるおそれがあります。
そのため、離婚調停中に別居したい場合は相手と合意をし、合意の証拠を残したうえで別居するとよいでしょう。

また、相手によるモラハラやDVから逃れたいなどの事情がある場合は、一方的に別居をしても原則として同居義務違反とはなりません。
ただし、モラハラやDVの十分な証拠がない場合は、相手がDVなどを否定し悪意の遺棄であるなどと主張されるおそれがあるため、あらかじめ証拠を残したうえで弁護士へご相談ください。

Authense法律事務所には離婚問題に強い弁護士が多く在籍しており、離婚調停中の別居に関するサポート事例も数多く蓄積しています。
離婚調停中に別居を希望している場合や、配偶者が子どもを連れて出て行ってしまいお困りの場合、離婚調停を有利に進めたい場合は、Authense法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。
離婚に関するご相談は、初回60分間無料でお受けしています。

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
女性弁護士が数多く在籍しており、面談予約時に「弁護士性別」をご希望いただくことも可能です。

弁護士らで構成する離婚専任チーム

離婚問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
感情的になりがちな相手方との交渉を弁護士に任せることで、精神的なストレスから解放されますし、日常生活への影響も最小限に留められます。
相手方に有利な条件での示談や和解を要求された場合でも、弁護士に依頼することによって、過去の判例などを踏まえた対等な交渉ができます。
また、問題終結後に弁護士を通して合意書を作成しておけば、和解成立後に相手方から再び慰謝料を請求されたり、不貞行為の内容をSNSに投稿されたりといった事後的なトラブルを未然に防止することも可能になります。

私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
どうぞお気軽にご相談ください。

関連記事

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。


記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。家事事件(離婚・相続)、一般民事事件(交通事故)、不動産法務など幅広い分野を取り扱い、刑事事件では、裁判員裁判の経験も有する。相談者が抱える法律問題に真摯に向き合い、正確かつ丁寧に説明するよう心がけている。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

こんな記事も読まれています

コンテンツ

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。