様々な事情から離婚という決断を下します。悩んで下した結論もあれば、衝動的に離婚に至るケースもあります。どのような事情にしろ、離婚時点で明らかになった事実を下に、決断をするしかありません。しかし、そのように離婚を決めた後に、まさかの「妊娠」が発覚するというケースもあります。当然、離婚に至るまでは夫婦の関係があるため、妊娠の可能性もあるわけですが、当事者としては、何から考えればいいのか、立ち止まってしまうのではないのでしょうか。
そこで、今回は「離婚後に妊娠が発覚した場合」において、気になる「親権」や「養育費」などを中心にご説明します。
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離婚後の妊娠!親権や戸籍はどうなる?
まず、一番気になるのが、親権や戸籍の問題でしょう。離婚したといっても、生まれてくる子どもの父親は、別れた相手であることが一般的です。離婚しても、前の夫が当然に父親になるのか、それともこちらから頭を下げて認知をしてもらわなければならないのか、非常に重要な事柄でしょう。そこで、まずは基本的な事項から説明後、様々なケースをみていきます。
離婚後の妊娠!親権は母親に
親権については、民法で「子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う」(民法819条3項)と規定されています。
ここで、親権とは、大きく2つに分かれます。
- ・財産管理権
子どもの財産を管理し、子どもが単独で行うことのできない法律行為を代わりに行うこと - ・身上監護権
子どもと同居し、身の回りの世話などを行うと共に、教育などを行うこと
この2つを有する人を親権者といいますが、離婚後に生まれた子どもについては、母親が親権者となります。
本来であれば、離婚前に生まれていれば、どちらが親権者になるのかは、当事者の協議で決まりますが、離婚後であれば、母親が親権者であると決められているのです。
ただ、「子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる」(民法819条3項)との規定もあるので、出生後に話し合いによって、親権者を父親と決めることも可能です。
離婚後の妊娠の場合、戸籍はどうなる?
それでは、離婚後に生まれた子どもの戸籍はどうなるのでしょうか。
民法には次のような規定があります。
「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」(民法772条2項)
端的にいえば、出産する日により、子どもの戸籍が変わってくるということです。
- ・離婚後300日以内に生まれた場合は、前の夫の子どもと推定
- ・離婚後300日を超えて生まれた場合は、前の夫の子どもと推定されない
つまり、前の夫の子どもと推定されるということは、今は離婚していますが、当時は結婚していたため、「法律上結婚していた夫婦の間でできた子ども(嫡出子)」として、結婚時の戸籍に入ることになります。
例えば、結婚して妻が夫の戸籍に入っていた場合は、子どもは父親の戸籍に自動的に入ることになります。
離婚して、新しく母親が戸籍を作ったとしても、前の夫である父親の戸籍に入ります。
なお、離婚後300日以内に生まれた子でも、何らかの事情により真実の父ではない場合などは、家庭裁判所に「親子関係不存在確認」の調停を申し立てる必要があります。
そこで親子関係がないと判断されれば、母親の戸籍に入ることになります。
また、平成19年5月からは、離婚後300日以内に生まれた子のうち、医師の作成した「懐胎時期に関する証明書」が添付され、推定される妊娠の時期で最も早い日が離婚後であれば、前の夫が父親とはならない出生の届出が可能です。
一方で、離婚後300日を超えて子どもが生まれた場合、再婚していなければ、「法律上結婚していない男女の間でできた子ども(非嫡出子)」として、母親の戸籍に自動的に入ります。
事実上、父親が前の夫であったとしても、離婚後300日を超えてしまえば、男性から自分の子どもであるという認知がなければ、法律上では父親が不明となるわけです。
そのため、前の夫の子どもであるという「嫡出子」として、法律上の取り扱いを望むのであれば、前の夫からの認知が必要になります。
生まれる子どもが父親の戸籍に入る場合、変更はできないのか?
両親が離婚後300日以内に生まれた子どもは、結婚時に妻が夫の戸籍に入っていた場合、子どもも父親の戸籍に入ることになります。
そのため、母親は親権者となって同居するにもかかわらず、父親側の戸籍と姓という状況に陥ります。こ
のようなケースにおいては、子どもと母親が同じ姓、戸籍になるには、一定の手続きが必要となります。
まず、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申請し、子どもの姓を母親の姓にすることを認めてもらいます。
その後、母親の戸籍に入籍するために「入籍届」を市町村の役場に提出すれば、母親の姓で戸籍に入ることになります。
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離婚後の妊娠で、養育費は請求できる?
次に問題となるのが、子どもを育てるための費用です。
一人で生活するのとはわけが違い、このまま出産するとなると、一定の期間は働くことができず、子どもを育てるお金に不安が残ります。
そこで養育費を相手に請求することができないのか、気になるところでしょう。
養育費とは?
養育費とは、一般的には「未成熟の子が社会的に独立するまでにかかる費用全般」といえます。
内容としては、生活費や医療費、教育費など、通常生活していくためにかかるお金が含まれます。
養育費は親であれば当然に支払う義務があります。
民法887条の「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」の規定により、親は子どもを扶養する義務があるため、生活するためのお金を、父親、母親がそれぞれ負担するわけです。
離婚後の妊娠でも養育費の請求は可能
それでは、前の夫に養育費を請求することは可能でしょうか。
・離婚後300日以内に生まれた子ども
離婚後300日以内に生まれた子どもであれば、前の夫の子どもと推定され、法律上における「親子」となります。
そのため、養育費の請求は可能となり、当事者で協議し、まとまらなければ調停や審判で決定することになります。
・離婚後300日以降で生まれた子ども
この場合、当然に前の夫の子どもとは推定されないため、まずは、自分の子どもであるという認知を前の夫にしてもらう必要があります。
認知されれば、同様に、法律上における親子となるため、養育費の請求が可能となります。
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離婚後の妊娠と慰謝料は関係ない
それでは、離婚後に妊娠が発覚した場合、相手に慰謝料は請求できるのでしょうか。
結論としては、要件を満たせば慰謝料請求を行うことができます。
そもそも、離婚の慰謝料は、離婚により当然に支払われるべきものではありません。
離婚を巡って、互いが精神的に傷つくこともあるでしょう。
この「傷ついた」という損害に対して支払われるのが慰謝料なのです。
また、ただ傷ついただけでは請求しても認められません。
相手の不法な行為で、自分が精神的・肉体的に傷ついたという関係性が必要です。
このように慰謝料とは「不法行為による損害賠償(民法709条)」ですから、上記の要件に該当するような事実がなく、ただ離婚後に妊娠が発覚しても、その事実だけでは慰謝料は認められないでしょう。
ただ、離婚後に妊娠が発覚した場合、一般的に考えれば、その後、子どもを産んで一定の期間は子育てのため、働けなくなるでしょう。
事実上、育児休業ができるような環境で働いている場合は別ですが、それが難しいケースもあります。
とすると、離婚後一人で生活できると想定していた事情が変わります。
一人で自活できない場合に、実務では財産分与の中に扶養的という意味合いを込めて、通常の割合よりも多い財産分与を行うことがあります。
そのため、財産分与などについては、再度交渉の余地があるかもしれません。
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まとめ
離婚後に妊娠が発覚した場合、これからの生活に対して不安を感じるのは当然です。
ただでさえ、妊娠、出産と、肉体的にも精神的にも心配すべきことがある上、支えてもらうはずだった人が離婚によりそばにいないからです。
しかし、まずは冷静に落ち着いて、将来のことを考える必要があります。
これからは自分一人ではなく、子どものことも考えて、様々なことを決めていくことが重要です。
そのためにも、離婚条件について見直すべきところがあるもしれません。
早期に弁護士などの専門家に相談をして、必要なアドバイスをもらうことをお勧めします。
Authense法律事務所が選ばれる理由
Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
女性弁護士が数多く在籍しており、面談予約時に「弁護士性別」をご希望いただくことも可能です。
離婚問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
感情的になりがちな相手方との交渉を弁護士に任せることで、精神的なストレスから解放されますし、日常生活への影響も最小限に留められます。
相手方に有利な条件での示談や和解を要求された場合でも、弁護士に依頼することによって、過去の判例などを踏まえた対等な交渉ができます。
また、問題終結後に弁護士を通して合意書を作成しておけば、和解成立後に相手方から再び慰謝料を請求されたり、不貞行為の内容をSNSに投稿されたりといった事後的なトラブルを未然に防止することも可能になります。
私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
どうぞお気軽にご相談ください。
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