離婚する際にもっとも気になるのが子どもの身の回りのことです。トラブルを防ぐためにも、お金の問題にはしっかり取り組みたいものです。
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離婚をしても子どもは遺産を相続できる
離婚をすると、母親、もしくは父親のどちらか一方が親権を持ち、子育てを継続するケースが多いですが、この場合、子どもの遺産相続の権利が無くなることはありません。
親権の有無に関わらず、子どもは離婚して離ればなれになった親の遺産を相続できます。
親の遺産相続が親権に左右されない理由は、遺産相続と親権が、まったく異なる考えを背景にして作られた法律であるためです。
親権とは、子どもの健全な成長のために保護者が必要とする権利です。子どもの財産を管理する権利と養育する権利の2つで構成されています。
親権は、子どもの保護者が持つ権利ですが、簡単に放棄できないため、親側からすると実質義務であると考えてよいでしょう。
一方、遺産相続の仕組みは、被相続人の財産はなるべく親族に分配されるべきであるという考えを基に作られた制度です。
遺産を相続する権利がある人
被相続人の遺産を受け取る権利を持つ人のことを、法定相続人といいます。被相続人の配偶者は法定相続人の1人であり、必ず遺産を相続できます。
それ以外の法定相続人に関しては、第1順位、第2順位、第3順位と順番が決められています。
第1順位に属するのは、被相続人の子どもです。親権の有無に関係なく、子どもは遺産を相続できます。結婚していない相手との間に授かった子どもでも、認知をしているのであれば、法定相続人にカウントされます。
また、血縁関係がなくとも、養子として迎え入れた子は法定相続人になります。
子どもがすでに亡くなっている場合は、その子どもの子ども、つまり孫が相続人になります(ただし、養子の場合には、養子縁組「前」に生まれた養子の子ども(孫)は相続人とならないので、注意が必要です。)。
子どもや孫がいない場合は、第2順位である親、もしくは祖父母が相続人に選ばれます。さらに、親もすでに他界している場合は、被相続人の兄弟が相続人になります。
負債も相続の対象になる
遺産相続というと、多額のお金が突然舞い込んでくるものというイメージが強いですが、実際には、プラスの資産だけではなく負債も相続の対象になります。
たとえば、親が資産300万円と負債1,000万円を抱えている場合、それをすべて1人の子どもが相続すると、プラス300万円とマイナス1,000万円を受け取ることになります。結果的に700万円の負債を抱えてしまうというわけです。
このように、子どもに遺産を相続させてあげることが、必ずしも子どもの利益になるとは限りません。
子どもは相続放棄を行うことで負債を相続することを避けることが可能です。
また、負債を相続するリスクを避ける方法として、限定承認と呼ばれる遺産の相続方法も用意されています。
限定承認を行うと、被相続人のプラスの資産の範囲でマイナス分の支払いを行えばよく、それを超えて負債を抱える必要がなくなります。
ただし、法定相続人全員の協力が必要となる手続きなので、意見の不一致でうまく行えないことも少なくありません。
権利や義務も相続される
権利や義務といったものも相続の対象です。たとえば、生前に親族や友人の借金の保証人になった場合、保証人であることで発生した義務も相続人に引き継がれます。
つまり、保証人の地位を相続してしまった子どもは、遺産を相続したばっかりに、見ず知らずの他人の借金を肩代わりしなければならない状況に陥る場合もあるのです。
遺産相続について考える際は、自身がこれまで行ってきた契約にも気を配るようにしましょう。
相続の方法は遺言書で指定できる
遺産は、原則相続人が法定相続分に応じて受け取ることになっていますが、遺言書がある場合はその内容が優先されます。
つまり、遺言書を活用すれば、子どもに遺産(負債を含む。)を相続させないことが可能なのです。
また、遺言書であれば、本来相続人とはなり得ない関係性である人物に遺産を渡すことも可能です。
ただし、遺言書があれば法定相続人が遺産を相続するのを完全に阻止できるわけではありません。法定相続人には、遺留分を受け取る権利(遺留分侵害額請求権)があります。
たとえ遺言書で遺産を受け取る人を指定したとしても、必ずその人に全額が渡るわけではなく、法定相続人が請求すれば遺産の一部を渡さなければなりません。
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親権とはどのような権利なのか
親権とは、子どもを養育監護する身上監護権と、子どもの財産を管理する財産管理権の2つからなる権利です。
親権の持つ親には子どもの面倒をみる権利があるので、離婚した場合は、親権を有する親が子どもを預かります。
権利とは、何らかの利益を獲得できる力を意味します。
しかし、親権を放棄するということは、子どもの世話を放棄することと同義であり、自分勝手に放棄できてしまうと、子どもは健全に育ちません。
親権は権利であるとともに義務でなければなりません。親権の放棄を自由に行うことはできません。
親権が放棄できる例としては、親権者が病気である場合や、服役中である場合などが挙げられます。また、再婚を理由に親権を放棄するケースもあります。
離婚時は所定の手続きを行うことで片方の親に親権を委託することができます。
【具体例別】子どもが遺産を相続できるケースとできないケース
以下では4つの具体例を取り上げており、それぞれのケースに対して子どもが遺産相続可能かどうかを解説しています。
1. 離婚後に再婚する場合
結婚をして子どもを授かった後に離婚をして、それから数年後、別の相手と再婚する場合を考えてみましょう。
元配偶者との間に婚姻関係はなくなっているため、配偶者として遺産を相続することはできません。一方で、前の配偶者との間に生まれた子どもは、どちらの親に親権があろうとも、遺産を相続することが可能です。
子どもが相続する権利を有する理由は、親権を放棄したからといって親子関係が途切れる訳ではないためです。
再婚した場合でも、子どもに適用される相続のルールは、基本的に変化はありません。ですので、子どもがすでに亡くなっている場合は、その子どもの子ども、つまり孫に遺産を相続する権利が移ります。
2. 再婚した妻、または夫との間に子どもができた場合
先ほどのように、別の相手と再婚しており、さらに再婚相手との間に子どもを授かった場合を考えてみます。
結論から述べると、このケースでは、以前のパートナーとの間に生まれた子どもと、現パートナーとの子の両方に遺産相続の権利があります。
再婚して新たな子どもを授かったとしても、前の配偶者との間に生まれた子の遺産相続の権利は失われることはありません。このような結果になる理由は、新しい配偶者との間に子どもが生まれようとも、親子であるという関係性が変わる訳ではないためです。
3. 子どもと離縁した場合
子どもと離縁をした場合、親と子の関係が途切れてしまいます。つまり、法律上はもはや親子関係ではなくなるため、実子であったとしても親の遺産を相続する権利はなくなり、遺産を受け取ることはできなくなります。
しかし、離縁した場合でも遺言書で実子に遺産を渡すよう指定すれば、親子関係が途切れていても遺産を受け取ることが可能です。
4. 遺言書で遺産の取り分を決めている場合
親子関係がある場合、子どもは法定相続人になるため遺産を受け取ることができますが、遺言書で子ども以外の別の誰かに遺産を相続するよう指定していると、子どもは親の遺産を受け取ることはできません。
しかし、上述のとおり、法定相続人には遺留分を受け取る権利があるため、請求をすれば遺留分として遺産の一部を相続できます。
遺留分とは、法定相続人が受け取ることができる最低限の遺産の取り分のことです。遺留分の受け取りは、遺言書でも侵害できません。
ただし、この権利は、直近の相続法改正により、遺留分侵害額請求権として金銭債権となったため、相当なお金を受け取ることができる権利となり、遺産となる不動産などを相続できる権利ではなくなったことに注意が必要です。
なお、遺留分を受け取ることを遺言書で阻止することはできませんが、遺言書の内容が遺留分を侵害するものであること自体は問題ありません。
たとえば、遺言書の内容が、「全額再婚したパートナーに遺産を相続させる」といった内容でも問題ありません。
もし不服であるのならば、遺留分を請求すればいいのです。特に問題ないとするのならば、遺産は遺言書に従って相続されます。
まとめ
離婚をして親権が無くなったとしても、子どもに遺産を相続させることはできます。親権と遺産相続はまったくの別物であり、親権の有無で相続が可能かどうかは決まりません。
遺産相続において重要なことは、法的に親子関係が認められるかどうかです。実子であっても離縁すれば相続する権利は無くなり、血縁関係のない子どもでも養子縁組にすれば、遺産を相続させることが可能です。
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