解決事例

監護者指定と子の引き渡し調停の最中に、夫に子どもを連れ去られた。

  • ご相談者
  • 性別:女性
子の引渡しと監護者の指定の審判

ご相談までの経緯・背景

依頼者のA子さんは夫との性格の不一致に悩み、離婚したいと思うようになりました。ふたりの間には小さな子どももいます。
夫婦間で話し合いを進めるも、なかなか折り合いをつけることはできず、A子さんは子どもを連れて別居。その後、離婚調停を進めていきました。
夫は、ただちに子どもを引き渡せと言ってきました。

監護者指定の手続きを進める最中に、ある日、夫と子どもを面会させていたところ、夫はそのまま子どもを連れ去り、実家へと帰ってしまいました。
A子さんは夫に「子どもを返してほしい」と訴えますが、聞き入れてくれません。
警察に駆け込み相談もしたのですが、「夫婦間のトラブルには介入できない」と、なにもしてもらえず途方に暮れていました。

解決までの流れ

A子さんの要望は2つありました。

  • 夫と離婚したい
  • 子どもの親権を取りたい

親権を取るためには、その前段階として、子どもの監護者を決める必要がありました。
今回は、A子さんが子どもを連れて別居しており、さらには監護者を指定する手続きを進める間に、相手方である夫に子どもを連れ去られてしまいました。
夫はいわゆる「イクメン」で監護実績もあり、親権を渡すわけにはいかないという態度を崩しませんでした。

すでに監護者指定と子の引き渡し調停は始まっており、期日の日程も決まっていたので、連れ去られてすぐに今度はこちらから夫を相手方とする監護者指定・子の引き渡し調停とその保全手続きを進めました。
その際、子どもを連れて別居したA子さんには違法性がないと、裁判所を説得しました。
「夫とは子どもの目の前で口論することが増えていた。当然、家庭内の雰囲気は悪くなり、子どもの保育園での様子も落ち着かなくなるなどおかしくなっていた。親の不仲が子どもにもストレスになっている。このままでは子どもの教育に悪影響しかない」
A子さんにはサポートしてくれる家族、友人もいたので、子どもとの二人暮らしでも問題はありませんでした。
迎えた期日では子どもの引き渡し交渉を行いました。

まずは子どもを返してもらって、その代わりに子どもとの面会を増やす方向で調整しませんか?と相手方にも話をしました。
裁判所は直接子どもや夫婦を見ているわけではなく、調査官からの説得で判断しますので、調査官の調査が非常に重要な要素となります。
調査官調査の準備を入念に行って、お母さんが子の主たる監護者であったし、今後もお母さんが子の面倒を見ていくことが子のためになるとの主張を力を入れて行いました。
その結果、裁判官も監護者は母親側が適切であると判断しました。

最終的に、夫側も合意に応じ、子の監護者を母にすることを認め、子の引き渡し請求も取り下げました。
「このままお二人が争っていたら、子どもの心にも傷が残ってしまう」という言葉が伝わったからではないかと思っています。

結果・解決ポイント

相談にお見えになった当初は、ふたりとも態度を崩さず、争っていました。しかし、最終的には落ち着いて向かい合えるようになりました。
その結果、当初は離婚に向けての話し合いを進めていたのですが、離婚はせず、子の監護者をA子さんにすると決めた上で、ふたりでお子さんを協力しあって育てていくことになりました。

子どもの監護権はA子さんが持つことになりましたが、週末は夫の家に子どもを預け、水入らずの時間を作ることになりました。
離婚するまでは夫との事務的な会話すらストレスに感じていたA子さんも、子どもが風邪を引いたり変わった出来事が起こった際には、フランクに連絡できるようになったと伺っています。

A子さんが相談にお見えになったとき、ストレスと不安で精神的にかなり追い詰められていました。
手続きを進めていく中で、A子さんの不安を和らげるために、コミュニケーションを密に取り、進捗や今後の見通しをこまめにお伝えすることを心がけていました。
調停や話し合いはときに長期化します。
その期間の中で、ときに疲れ果て、ときにやる気が無くなり、挫けそうになってしまう時期も出てきます。
そんなときでも、なぜ今頑張らなければならないのか、ここで踏ん張ることでどんな結果が見えるのか、心に寄り添って進めることを大切にしています。

最終的には、おふたりで歩み寄って将来について決断されました。
事態が落ち着いたあと、事務所にお礼にお見えになり、「これから前を向いて歩いていくことができます。子どもも楽しく暮らしています。本当にありがとうございました」と仰っていただけたのは、いまでも印象深く覚えています。

担当弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
上智大学法学部国際関係法学科卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。企業法務や顧問業務、個人法務など幅広い分野に対応。個人法務では、離婚、相続、労働事件などを取り扱う。
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