養育費をいつまで払わねばならないのかは、ケースによって異なります。
基本的には子どもが成人するまでですが、子どもが大学などへ進学する場合、結婚した場合などには終期が変わってくる可能性もあります。
2022年4月1日以降、成人年齢が従来の20歳から18歳へと引き下げられている点にも、注意しなければなりません。
養育費を受け取る側も支払う側も、いつまで支払われるべきか正しく把握しておきましょう。
目次
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養育費の支払義務とは
そもそも、親はなぜ子どもの養育費を払わねばならないのでしょうか?
まずは、法的根拠がどこにあるのか、具体的にはどういった義務内容となっているのか確認しましょう。
養育費は、親が子どもを「扶養すべき義務」の一種です。
民法877条1項は、親子や兄弟姉妹が互いに扶養し合う義務を定めています。
(扶養義務者)第877条1項 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
親である以上、離れて暮らしていても子どもの養育費を負担しなければなりません。
養育費の支払義務は、子どもに自分と同等の生活をさせなければならない「生活保持義務」です。
親は、自分の生活レベルを落としてでも、子どもに自分と同等の生活をさせなければなりません。
養育費はいつまで支払うべき?支払期間は?
養育費は、いつまで支払うべきなのでしょうか?
ここでは、養育費の支払い時期について解説していきましょう。
養育費は夫婦で取り決めた期間まで支払う
養育費の支払い終期は、夫婦間で取り決めをした場合は、その時期までです。
たとえば、「20歳の誕生月まで」や「22歳の誕生月まで」などと年齢で取り決める場合もあれば、「高校を卒業する月まで」や「大学を卒業する月まで」などと卒業時期で取り決める場合もあるでしょう。
養育費の終期を「成人」と定めた場合
2022年4月1日から、民法の改正により、成人年齢が引き下げられました。
これにより、従来は20歳であった成人年齢が、18歳となっています。
では、養育費の終期について「成人する月まで」などと取り決めていた場合には、どうなるのでしょうか?
まず、2022年4月1日以降に取り決めをした場合には、18歳の誕生月までと解釈されるでしょう。
ただし、これから養育費について取り決めをする際には疑義を生じさせないためにも、「18歳の誕生月まで」などとより具体的に定めておくことをおすすめします。
一方、2022年3月31日以前に養育費について「成人する月まで」と取り決めた場合には、20歳の誕生月までと解釈されるでしょう。
改正前に「成人する月まで」と取り決めたのであれば、少なくともその時点においては、双方ともに「20歳の誕生月まで」との認識であった可能性が高いためです(参考:法務省:成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について)。
養育費の計算方法
では、養育費の金額はどのように計算するのでしょうか?
一般的には、「養育費の算定表」を用いて計算します。
養育費の算定表とは、裁判所が公開している養育費の相場を示す表です。
算定表にあてはめると、子どもの人数や年齢、親の年収に応じた相当な養育費の金額を求めることができます。
基本的な考え方としては、支払う親の年収が上がれば養育費の金額が上がり、受け取る親の年収が上がれば養育費の金額が下がる仕組みです。
養育費の計算方法や算定表について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
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養育費の支払期間は延長・短縮できる?
養育費の支払い終期は、両親が合意をしていればその時期、合意がなければ、基本的に子どもが20歳になるまでです。
ただし、子どもや親を取り巻く事情に大きな変更があった場合、養育費の支払い終期を変更できる可能性があります。
ここでは、どういったケースで養育費の支払期間を延長、あるいは短縮できるのか解説しましょう。
成人後の子どもの事情
成人後の子どもの事情によっては、成人をした後であっても養育費の支払い義務が継続される可能性があります。
たとえば、次のような場合です。
大学に進学した場合
まず、子どもが大学や大学院、専門学校などの高等教育機関へ進学した場合があります。
子どもが20歳の誕生日を迎えても、養育費を受け取れるケースはよくあります。
進学すると子どもは自活するだけの収入を得られませんし、学費もかかるでしょう。
親として養育費を負担すべきケースが多いと考えられます。
具体的な養育費の支払期間は、子どもが学校を卒業するまであるいは学校を卒業するはずの月までと定めるケースが多いでしょう。
たとえば、「子どもが22歳になった次の3月まで」などと定めておけば、子どもが浪人、留年した場合に支払期間が延びるリスクも低減できるため、支払う側も納得しやすいでしょう。
未成熟子の場合
養育費は「未成熟子」について負担するものです。
未成熟子とは、独立して生きていくことのできない子どもです。
必ずしも「未成年」とは一致しません。
たとえば、大学や専門学校へ通って自活できていない場合、病弱で働けない場合などには「未成熟子」とみなされるケースが多いでしょう。
未成熟子の場合、成熟するまで養育費が必要なので、子どもが独立するまで別居親が養育費を負担しなければならない可能性があります。
障がいがある場合
子どもに障がいがあって働けない場合にも、養育費の支払い終期が変わるケースが多いです。
重度の障がいがあり働けない場合には、年齢にかかわらず自活は難しく、養育費がからなければと生活の見通しが立たない場合があるでしょう。
よって、親が子どものために養育費を負担すべきと考えられます。
いつまでも支払うことが難しい場合には、親同士で話し合って、お互いが可能な範囲で子どもの生活費を負担する方法を取り決めましょう。
未成年の子どもの事情
子どもの事情によっては、成人するより前に養育費の支払い義務が終了する場合があります。
たとえば、次の場合などです。
結婚した場合
子どもの事情により、養育費の支払い終期が変わるケースもあります。
1つは、子どもが結婚した場合です。
たとえば、子どもが18歳で結婚したら、親同士が「20歳まで払う」とする取り決めをしていたとしても、配偶者による扶養が原因で、親の養育費支払義務が減免になる可能性があります。
仕事に就いている場合
子どもが18歳になるまでに就職して働き始めるケースもあります。
この場合、子どもは未成熟子ではなくなるため、親による養育費支払義務はなくなると考えられます。
また、子どもがプロスポーツ選手や芸能人などであり、十分な収入を得ている場合でも、親による養育費支払義務が認められない可能性があります。
監護者の事情
監護者側の事情によって、養育費の支払い内容が変わる場合があります。
たとえば、次のようなケースです。
年収が上がった場合
養育費の金額や支払義務には、支払義務者や監護者(子どもを養育している人)の収入も影響します。
たとえば、監護者が十分な収入を得ている場合、非監護親が養育費を支払う必要性は低くなるでしょう。
そこで、あまりに監護者の収入が高額な場合、養育費を支払う必要がなくなる可能性があります。
ただし、監護者の年収が上がったとしても、養育費が「減額」される事例が多く、完全に義務が免除されることは稀です。
監護者の年収が上がったら、親同士がしっかり話し合って養育費の算定表を基準に金額を決め直しましょう。
年収が下がった場合
監護者の年収が下がると、養育費の金額は増額される可能性があります。
監護親の年収が低いと、子どもにはより高額な支援が必要となるためです。
監護者の年収が下がったら、親同士がしっかり対応を話し合いましょう。
再婚した場合
監護親が再婚すると、非監護親による養育費の支払義務が消滅する可能性があります。
ただし、単に再婚しただけで養育費支払い義務がなくなるわけではありません。
養育費支払いが終了するのは、子どもと再婚相手が養子縁組した場合です。
養子縁組すると、養親が一次的な扶養義務者となるので、非監護親は原則として養育費を払う必要がなくなります。
ただし、養子縁組が解消されると、また養育費を払わなければならない状態に戻ります。
また、養子縁組したとしても、養親に十分な養育能力がない場合、非監護親の養育費支払義務が残る可能性もあります。
支払者の事情
養育費を支払っている人の事情によって、支払い内容が変わる場合があります。
たとえば、次のようなケースです。
年収が上がった場合
養育費の支払義務者側の事情が支払い内容に影響を与える可能性もあります。
支払義務者の年収が上がった場合などが挙げられます。
支払義務者の収入が上がると養育費の金額は増額される可能性があります。
支払義務者の収入が上がったら、親同士で養育費について改めて話し合うとよいでしょう。
年収が下がった場合
養育費の支払義務者の年収が下がると、養育費を払わなくてよくなる可能性があります。
養育費は、あくまで「子どもに自分と同等の生活をさせるべき義務」であり、自分が生活できないのに援助すべきまでの義務ではないためです。
たとえば、親がケガや障がいではたらけなくなって生活保護を受けるようになったら、養育費の支払義務はなくなる可能性が高いでしょう。
ただし、単に年収が減っただけで養育費の支払いが終わるわけではありません。養育費算定表にあてはめて妥当な養育費の金額を設定しましょう。
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養育費は一括で支払うことも可能か
養育費は、基本的に毎月継続して払っていくものです。
子どもや親の状況は年数の経過によって変わっていくため、その都度の対応が必要だからです。
ただし、親同士の取り決めで、離婚時にまとめて養育費を払ってもらうことはできます。
その場合、監護者が養育費を途中で使い果たしてしまったときは、更に養育費の請求することは困難ですが、子どもから扶養料の請求ができる可能性はあります。
支払義務者にとってリスクの高い方法といえるでしょう。
受け取る側にとっては、養育費がまとめて先に払われるため、確実に受け取れるメリットがあります。
ただし、定期的に受け取るより総額が減る可能性や事情の変更があっても追加請求できない可能性があります。
養育費を減額したい方へ
養育費の適正金額は、子どもや親の事情によって変わります。
たとえば、支払義務者の年収が下がったら、養育費の減額を求められる可能性があります。
支払義務者が再婚し、再婚相手との間に子どもが生まれた場合などにも減額が認められるケースがあります。
監護親の収入が上がった場合にも、養育費を減額すべき場合があるでしょう。
ただ、支払義務者が自分で監護親に養育費の減額を持ちかけても、受け入れられないケースは少なくありません。
相手と合意ができない場合は、家庭裁判所で養育費減額調停を申し立てる必要があります。
養育費の減額を求める場合は、なぜ養育費を減額すべきなのか、法律的な観点から根拠を伝えて監護親と交渉を進めましょう。
自分では交渉をうまく進められない、お互いに感情的になってしまいがちなケースなどでは弁護士に交渉を任せることをおすすめします。
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養育費を増額したい方へ
反対に、養育費を増額できるケースもあります。
たとえば、別居親の年収が上がった場合や、同居親の年収が下がった場合などがあるでしょう。
こういった状況になったら、養育費の増額に応じてもらうよう相手と交渉しましょう。
増額を求める際には、なぜ養育費を増額すべきなのか、増額の法的根拠を提示して相手を説得しましょう。
相手が無視する場合や自分たちで話し合っても合意できない場合には、弁護士へ増額交渉を依頼するようおすすめします。
弁護士であれば、法律の観点から相手を説得できる可能性が高くなりますし、合意ができたときには増額に関する合意書の作成まで行います。
相手が養育費の増額に応じない場合、家庭裁判所での養育費増額調停も任せられて安心でしょう。
養育費取り決め時の「公正証書」の大切さ
協議により養育費の取り決めをする際には、必ず公正証書を作成しましょう。
公正証書があれば、支払義務者が約束した支払いをしないときに、権利者が義務者の資産や給料などを差し押さえられるからです。
公正証書がない場合は、改めて養育費調停や審判を申し立てなければ、差し押さえができません。
養育費の公正証書は、公証役場へ申込みをすると作成してもらえます。
自分でも対応できますが、手続きにも手間がかかりますし、文面を自分で考えなければならないなど負担も大きくなるものです。
弁護士に依頼すると、公証人とのやり取りや必要な段取りをすべて整えてくれるため、手間がかかりませんし、自分で公証役場へ行く必要もありません。
相手と顔を合わせずに公正証書を作成できるメリットもあります。
そのため、養育費の公正証書作成は弁護士に依頼することを検討するのがよいでしょう。
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支払者が養育費を支払ってくれない場合
養育費の取り決めをしても相手が払ってくれない場合、以下の手順で請求を進めましょう。
公正証書や調停調書がある場合
養育費について取り決めた公正証書や調停調書があれば、それらを使って相手の給料や預貯金などを差し押さえましょう。
相手の勤務先や財産に関する情報がわからないときには、裁判所の手続きを利用して調べられる可能性もあります。
自分で情報取得や差し押さえの手続きをするのが難しければ、弁護士へご相談ください。
公正証書や調停調書がない場合
公正証書や調停調書などの書類がない場合には、先に養育費調停を申し立てなければなりません。
調停や審判を得た後、差押えの手続きを進めましょう。
まとめ
養育費をいつまで支払うべきであるのかは、子どもや親の状況によって異なります。
事案の内容に応じて適切な時期をお互いに話し合って決めるとよいでしょう。
養育費の金額や支払期間について、自分たちで協議してもうまくいかない場合は、弁護士へ依頼することをおすすめします。
弁護士が対応すれば公正証書作成もスムーズに進められて安心です。
養育費について悩んだときには離婚や子どもの問題に熱心に取り組んでいる弁護士に相談してみましょう。
Authense法律事務所には養育費や離婚問題にくわしい弁護士が多数在籍しており、養育費を支払っている側と受け取っている側の、いずれからのご相談であっても対応することが可能です。
離婚問題にまつわる初回のご相談は、原則として無料でお受けしております。
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また、問題終結後に弁護士を通して合意書を作成しておけば、和解成立後に相手方から再び慰謝料を請求されたり、不貞行為の内容をSNSに投稿されたりといった事後的なトラブルを未然に防止することも可能になります。
私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
どうぞお気軽にご相談ください。
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