コラム

公開 2021.07.20 更新 2023.12.25

婚姻費用とは?婚姻費用算定表の見方や計算方法を弁護士がわかりやすく解説

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離婚前に別居を考えたとき、「別居したらお金がなくて生活できなくなるかも」と、不安に感じる方もいらっしゃると思います。
ただ、法律上は別居しても夫婦間で生活費を支払わなければならないため、心配しすぎる必要はありません。
今回は、離婚前の別居中の夫婦が負担すべき「婚姻費用」について解説します。

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婚姻費用とは

婚姻費用とは、法律上夫婦がお互いに負担すべき生活費です。

民法では、夫婦はお互いに助け合わねばならないという相互扶助義務が定められています。
この義務は「相手に自分と同等の生活をさせなければならない」という高いレベルのものであり「余裕がある場合に援助すれば良い」という程度のものではありません。
別居しても夫婦である限り、収入の高い側は収入の低い側の生活を維持するため、婚姻費用を支払い続けなければならないのです。

専業主婦の方が夫と別居する場合には、原則として、別居中の夫に婚姻費用を請求できます。子どもを連れて家を出た場合には、子どもの生活費も含めて加算された金額を支払ってもらえます。

婚姻費用分担請求とは

婚姻費用分担請求とは、婚姻費用を支払うよう、夫婦の相手方へ請求することです。

原則として、婚姻費用分担請求は、相手に対して直接行います。
金額についても、双方が合意するのであればいくらであっても構いません。

相手に請求しても支払ってもらえない場合や提示された金額に納得がいかない場合などには、弁護士へ相談してください。
弁護士から内容証明郵便を送ったり弁護士から直接話をしたりすることで、請求に応じる可能性が高くなります。

それでも支払いを拒む場合などには、婚姻費用分担請求調停を申し立てましょう。
婚姻費用分担請求調停とは、婚姻費用の支払いの要否や金額などについて、家庭裁判所で話し合いをする手続きです。
調停では裁判所の調停委員が双方の意見を調整し、話し合いをまとめます。

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婚姻費用算定表と婚姻費用の計算方法

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婚姻費用は、お互いが合意するのであればいくらであっても構いません。
しかし、ある程度の目安がわからなければ、どの程度の金額で折り合いをつけるべきか判断することが困難でしょう。

そのような際には、「婚姻費用算定表」が参考となります。
なお、上で紹介した婚姻費用分担調停に至った場合には、この婚姻費用算定表を目安として意見が調整されることが一般です。

婚姻費用算定表とは

婚姻費用算定表とは、裁判所が公表している、婚姻費用の目安を知るための表です。※1

婚姻費用算定表は、子の有無や子の人数、子の年齢によって、10の表に分類されています。
まずはご自信の状況にとって適切な表を参照しましょう。

たとえば、子が2人おり、子がいずれも「0歳~14歳」である場合の算定表は、次のとおりです。
【参考】裁判所:(表13)婚姻費用・小2人表(第1子及び第2子0〜14歳)

婚姻費用の計算方法

婚姻費用算定表では、夫婦それぞれの収入の種類と金額によって、適正な婚姻費用が算定されます。

たとえば、夫婦がそれぞれ給与所得者(いわゆるサラリーマンやパートなど)であり、夫の年収が700万円、妻の年収が350万円であると仮定して見ていきましょう。
子は2人おり、子がいずれも「0歳~14歳」、子はいずれも妻と同居するものとします。

まずは、子の有無や子の人数、子の年齢によって、適切な算定表を選択しましょう。
ここでは、「子が2人、いずれも0歳~14歳」と仮定しますので、上で掲載した算定表を使用します。

次に、権利者の年収を算定表から探します。
権利者とは婚姻費用を受け取ることとなる側であり、通常は子どもと同居する側(子どもがいない場合には、収入の低い側)が、収入を多く配分される計算となることから、権利者となることが多いです。

例のケースでは、妻が「権利者」となりますので、横軸から妻の年収である「350万円」の欄を探しましょう。
自営業の場合と給与所得者の場合とで見る欄が異なるため注意してください。

次に、縦軸から義務者の年収を探します。
義務者とは養育費を支払いこととなる側であり、例の場合には夫です。
こちらも、自営業の場合と給与所得者の場合とで見る欄が異なりますので、注意してください。

例のケースでは、夫の年収は「700万円」ですので、縦軸から該当の欄を探しましょう。

それぞれの年収を見つけたら、権利者の年収からは縦に線を延ばし、義務者の年収からは横に線を延ばします。
それぞれの線がクロスする場所が、婚姻費用の適正額となります。

例の場合に目安となる婚姻費用の額は、「12万円~14万円」ということです。

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婚姻費用の請求方法

婚姻費用を請求するときには、以下のように進めましょう。

話し合う

まずは相手と直接話合って決定するのがもっともスムーズです。
できれば別居前に婚姻費用について話し合い、別居直後から支払いを受けられるようにしましょう。

話し合いが成立したら、必ず「合意書」を作成して書面化しておくようお勧めします。

相手の支払いに不安がある場合には「公正証書」にしておくと、支払いが止まったときにすぐに給料や預貯金などを差し押さえられます。

婚姻費用分担調停を申し立てる

話し合いをしても支払ってもらえない場合や、DVなどの事情で話し合いが困難な場合には、別居後すぐに「婚姻費用分担調停」を申し立てましょう。

調停の申立先は、相手の住所地を管轄する家庭裁判所です。
調停では「調停委員」が間に入って婚姻費用の話し合いを調整します。
相手が拒絶しても「法律上支払い義務があります」と言って説得してくれますし、相場の金額も算定してくれるので、相手も納得しやすくなるでしょう。

婚姻費用の支払い始期は「調停申立時から」とされることが多いので、できるだけ早く申し立てる方がよいでしょう。

婚姻費用審判で決定される

調停で話し合いをしても婚姻費用の金額について合意できない場合、手続きは「審判」に移ります。
審判になると、審判官(裁判官)が夫婦それぞれの収入や子どもの状況などから妥当な婚姻費用の金額を算定し、義務者へ支払い命令を下します。

審判に従わない場合には、給料や預貯金などを差押えすることもできます。

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婚姻費用を支払ってもらえる期間

婚姻費用を支払ってもらえる期間

婚姻費用は「いつからいつまで」支払ってもらえるのでしょうか?

支払始期について

婚姻費用は、別居直後からの分を請求できます。
ただし相手方が支払いに応じず、裁判所での解決を求めた場合には、「請求時」からの分しか認められない可能性が高くなっています。

夫と別居して婚姻費用が支払われなくなったら、すぐに家庭裁判所で「婚姻費用調停」を申し立てましょう。
そうすれば調停申立時からの分の支払いを受けられます。

支払終期について

婚姻費用は「離婚するまで」支払われる

婚姻費用は「夫婦の生活費」なので、離婚したら支払われなくなります。
「離婚後の生活費」を婚姻費用として請求することはできません。夫婦のみの家庭では、離婚と同時に婚姻費用の支払いは受けられなくなります。

未成年の子どもと同居している場合には「養育費」として、原則として離婚後も子どもの生活費を請求できます。

再び同居した場合

別居状態が解消されて夫婦の家計が同一に戻ると、別途「婚姻費用」として生活費を支払う必要がなくなるので、基本的に婚姻費用の支払いは終了します。

ただし、同居を再開しても相手が生活費を渡してくれない場合には、同居中でも婚姻費用を請求できます。

婚姻費用に関するよくある質問

婚姻費用に関するよくある質問は、次のとおりです。

婚姻費用は絶対に受け取れる?

婚姻費用は、別居すれば絶対に受け取れるのでしょうか?

通常、夫婦のうち収入の少ない側は、相手から婚姻費用を受け取ることが可能です。
しかし、例えば不貞などにより婚姻関係が破綻する原因を作った側が一方的に家を出ていく場合など、婚姻費用を請求する側の非が大きい場合には、婚姻費用の請求が認められない可能性があります。

婚姻費用を請求できるかどうか迷ったら、弁護士へご相談ください。

婚姻費用は別居後でも請求できる?

婚姻費用について話し合いをしないまま別居に至ってしまった場合、後から婚姻費用の請求をすることはできるのでしょうか?

別居に至ってからであっても、婚姻費用の請求をすることは可能です。
ただし、請求できる婚姻費用は、原則として請求時点以後の分のみとなります。
請求時点前の婚姻費用を遡って請求することは困難ですので、できるだけ早く請求するようにしましょう。

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まとめ

婚姻費用とは、婚姻関係にある夫婦が別居状態にある場合において、通常、収入の少ない側が収入の多い側に対して請求できる金銭のことです。
夫婦には相互扶助義務があることが、その根拠とされています。

しかし、相手が婚姻費用の支払いを拒んだり低い額の支払いしかしないと主張したりしている場合に、適生額の婚姻費用を自分で請求し、受け取ることは容易ではありません。

そのため、婚姻費用の請求でお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。
Authense法律事務所では夫婦問題にくわしい弁護士が多数在籍しており、婚姻費用の請求を総合力でサポートいたします。

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
女性弁護士が数多く在籍しており、面談予約時に「弁護士性別」をご希望いただくことも可能です。

弁護士らで構成する離婚専任チーム

離婚問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
感情的になりがちな相手方との交渉を弁護士に任せることで、精神的なストレスから解放されますし、日常生活への影響も最小限に留められます。
相手方に有利な条件での示談や和解を要求された場合でも、弁護士に依頼することによって、過去の判例などを踏まえた対等な交渉ができます。
また、問題終結後に弁護士を通して合意書を作成しておけば、和解成立後に相手方から再び慰謝料を請求されたり、不貞行為の内容をSNSに投稿されたりといった事後的なトラブルを未然に防止することも可能になります。

私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
どうぞお気軽にご相談ください。

参考文献:
※1 裁判所:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶応義塾大学法学部法律学科卒業、上智大学法科大学院修了。個人法務から企業法務まで多様な案件に従事する。特に、離婚、相続を中心とした個人法務については、請求側・被請求側、裁判手続利用の有無などを問わず、数多くの案件を解決してきた実績を有する。
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