コラム

公開 2022.09.08 更新 2024.03.06

財産分与に時効はある?離婚後に請求可能?財産分与の除斥期間を弁護士がわかりやすく解説

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財産分与には、時効(期限)が存在します。
財産分与について特に取り決めないまま離婚してしまったとしても、離婚後に財産分与を請求すること自体は可能です。

ただし、時効を過ぎてしまうと原則として財産分与を受けることはできなくなるため注意しなければなりません。

では、財産分与の時効は、何年なのでしょうか?
また、所定の時効を過ぎてしまうと、財産分与は絶対に認められないのでしょうか?

今回は、財産分与の時効やその他の注意点などについて弁護士が詳しく解説します。

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財産分与とは

財産分与とは、夫婦の財産を離婚に際して分割する手続きです。

婚姻期間中に築いた財産は、たとえ名義こそ夫婦のうち一方のものになっていたとしても、実質的には夫婦の共有財産であると考えられます。
外から収入を得ているのが夫婦の一方のみであり、もう一方が専業主婦(夫)やパートなどで比較的少額の収入のみを得ている場合であったとしても、財産が形成されたのは夫婦が協力をしてきた成果であると考えられるためです。

夫婦関係が円滑である場合、財産の名義が夫婦のいずれであるのかが問題になることはさほど多くないことでしょう。
財産の多くが外から収入を得ていた側の名義であり、専業主婦(夫)であった側の名義となっている財産はほとんどないかもしれません。

しかし、離婚後は別々の生活を送ることになるため、婚姻期間中に築いた財産を清算しておく必要があります。
この手続きが財産分与です。

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財産分与割合はどれくらい?

財産分与の割合は、原則として2分の1です。
婚姻期間中の夫婦の収入に多少の差はあっても、特段考慮されません。

たとえば、夫婦の一方が専業主婦(夫)であり外部からの収入をまったく得ていなかった場合であっても、2分の1の割合で財産分与を行うことが原則です。

また、財産分与の割合は、原則として離婚原因によって変動するものでもありません。
たとえば、夫婦の一方の不貞行為が原因で離婚をする場合などであっても、原則として財産分与の割合は2分の1ずつとなります。
この場合には別途、慰謝料請求の問題となるためです。

ただし、次の場合など特殊なケースでは例外的に、2分の1ではない割合で財産分与がなされる可能性があります。

  • 夫婦の一方が特殊な能力(病院の経営など)で多くの財産を築いた場合
  • 夫婦の一方が多くの財産を浪費してきた場合

財産分与の対象となる財産

夫婦の婚姻期間中に築かれた財産は、原則としてすべて財産分与の対象となります。
財産分与の対象となるかどうかに、財産の名義は関係がありません。

たとえば、夫婦の共有名義である不動産は、当然財産分与の対象です。
また、たとえ夫や妻の一方のみの名義となっている場合であっても、すべて財産分与の対象となります。

先ほど解説したように、仮に専業主婦(夫)でありその名義の財産が一切ない場合であっても、内助の功があると考えられるためです。

財産分与の対象とならない財産

次のようなものは、原則として財産分与の対象とはなりません。
なお、これらの財産のことを「特有財産」といいます。

婚姻前から所有していた財産

夫婦のそれぞれが婚姻前から有していた財産は、財産分与の対象とはなりません。
これは、夫婦の協力で築かれたものであるとはいえないためです。
たとえば、独身時代に得た金銭を貯蓄した定期預金などが該当します。

夫婦の協力で得られたとは言えない財産

たとえ婚姻期間中に得た財産であっても、夫婦の協力で得られたとはいえない財産は財産分与の対象外です。
たとえば、親からの相続で受け取った預貯金や不動産などがこれに該当します。

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時効とは

時効とは、一定の期間中に権利が行使されない場合において権利を消滅させる制度です。
たとえ権利があったとしても、ある出来事から相当の期間が経過してから権利を行使された場合、法的な安定性を損なうこととなりかねません。

たとえば、離婚後10年も20年も経過してから請求されても、相手は請求を予期することができず困ってしまうでしょう。
また、あまり長い期間が経過すると、財産分与の適正額の算定も困難となります。

そこで、民法ではさまざまな請求に対して権利の性質に応じた期限を設け、これを過ぎると権利を失う旨を規定しています。
時効については、「権利の上に眠る者は保護されない」とのことばで表現されることもあります。

なお、財産分与の請求権は厳密には「時効」ではなく「除斥期間」です。
時効と除斥期間にはさまざまな違いがあり、これについては後ほど詳しく解説します。

財産分与は離婚後でも請求できる?

財産分与は、離婚に際して行うことが一般的です。

しかし、財産分与などについて何ら取り決めをしないまま離婚をしてしまうケースもあるかと思います。
このような場合には、離婚後であっても財産分与を請求することが可能です。

先に離婚をしてしまったからといって、財産分与請求ができなくなるわけではありません。
諦めずに請求することを検討しましょう。

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財産分与の請求に期限や時効はある?

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財産分与は離婚後であっても請求することができますが、いつまでも請求ができるわけではありません。
なぜなら、財産分与には期限が定められているためです。

財産分与の期限は離婚後2年以内

財産分与の期限は、離婚が成立したときから2年以内です。
離婚から2年を過ぎてしまうと、基本的には財産分与を請求することはできません。

財産分与について取り決めをしないまま離婚をしてしまった場合には、この2年という期限に注意をして請求するようにしてください。

財産分与の期限は「時効」ではなく「除斥期間」

財産分与の2年という期限は「除斥期間」であり、「時効」ではないことに注意が必要です。
時効と除斥期間との主な違いは次のとおりです。

援用が必要かどうか

時効は、その期間を過ぎたからといって自動的に権利が消滅するわけではなく、義務者側が援用をしてはじめて時効が成立します。
援用とは、「すでに時効期間が経過したため、もうそのお金は支払いません」などと主張をすることです。

一方、除斥期間に援用は必要なく、期間の経過により自動的に権利が消滅します。
財産分与の期限は除斥期間であることから、相手から「もう2年の期間を過ぎたので財産分与を行いません」という主張が何らなされなかったとしても、2年を過ぎた時点で権利が消滅するということです。

更新や完成猶予が可能かどうか

時効は、更新や完成猶予をすることが可能です。

更新とは、これまで経過してきた時効期間を最初に戻して、再スタートさせることです。
たとえば、相手が権利の存在を承認することなどにより、時効が更新されます。

完成猶予とは、一定期間中は時効が完成しないよう猶予をすることです。
たとえば、相手に対して催告を行うと、そこから6ヶ月の間は時効の完成が猶予されます。

一方、除斥期間には更新や完成猶予の制度はありません。
つまり、たとえば2年の期間経過間近になってから催告をしたとしても、期間を伸長させることはできないということです。

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離婚後2年の期限経過後も例外的に財産分与が認められるケース

次の場合には、離婚後2年が経過した後であっても、例外的に財産分与が認められます。

相手が任意に支払うケース

期間が経過したからといって、お互いが合意の上で財産分与を行うことまでが禁止されるわけではありません。
期間経過後であっても、相手が請求に応じてくれるのであれば財産分与を受けることは可能です。
ただし、本来の権利自体は消滅している以上、離婚から2年が経過した後の財産分与については、税務上、財産分与と認められない可能性があります。この場合には贈与税等が課税される可能性があるため、慎重な検討が必要です。

相手が財産隠しをしていたケース

相手が財産分与の対象となる財産を隠していた場合は、離婚から2年経過後であっても相手に請求することが可能な場合があります。
ただし、財産分与として請求はできないため、不法行為に基づく損害賠償などとして請求することが考えられます。

たとえば、相手の「財産など一切ない」とのことばを信じて財産分与をしないまま離婚をしたにもかかわらず、実は隠し財産があったことが後から発覚した場合などがこれに該当します。
この場合には、早期に弁護士へご相談ください。

財産分与の手続きをスムーズに進めるにはどうすればよい?

財産分与ができる期間を過ぎてしまうことのないよう、財産分与の手続きをスムーズに進めるにはどうすればよいのでしょうか?
財産分与の手続きをスムーズに進めるための主なポイントは次のとおりです。

離婚問題に詳しい弁護士へ相談する

財産分与の手続きをスムーズに進めたい場合は、離婚問題に詳しい弁護士へ早期にご相談ください。
財産分与では相手が財産を隠したり嘘の申告をしたりするケースが少なくなく、自分で話し合いをまとめることは容易なことではありません。
また、相手の都合のよい内容で言いくるめられてしまう場合もあることでしょう。

離婚問題に詳しい弁護士は、財産分与にまつわる判例を熟知している他、相手との交渉にも慣れています。
無理に自分で交渉をして後悔してしまうことのないよう、財産分与の交渉は弁護士へお任せください。

あらかじめ主張をまとめて交渉に臨む

財産分与について主張をしたい内容が定まっていなければ、相手の言い分に沿って交渉が進んでしまう可能性が高いほか、交渉の落としどころを探ることも困難です。
そのため、財産分与の交渉に臨む前に、まずは自分の主張をまとめておきましょう。

ただし、自分の主張をまとめるには、過去の事例を知っておく必要があるほか、財産分与の対象となる相手の財産をある程度把握しておく必要があります。
弁護士はこの点でもお手伝いが可能ですので、早期に弁護士へご相談ください。

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期限以外の財産分与の注意点

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財産分与を請求する際には、期限以外に次の点に注意が必要です。

相手の財産隠しに注意する

財産分与に際しては、分与をする財産をできるだけ減らしたいと考える相手が財産を隠す可能性があります。
財産については相手のことばを鵜呑みにするのではなく、その根拠資料を求めるようにしてください。
財産隠しが疑わしい場合には弁護士へ相談のうえ、可能な限り調査をしてから交渉に挑むとよいでしょう。

特有財産と共有財産を分けておく

財産分与を受ける金額は、相手の財産のみならず、自分の財産も影響します。
そのため、自分の財産の中に、先ほど解説した財産分与の対象とならない財産がある場合には、あらかじめきちんと分けておくとよいでしょう。

住宅ローンが残っている場合には金融機関へ相談する

財産分与により、自宅の名義を変える場合もあるかと思います。
この際、自宅のローンが残っている場合は、財産分与の取り決めをする前にあらかじめ金融機関へ相談しておいてください。
なぜなら、住宅ローンの約款では、金融機関の事前承諾なくローン対象となっている住宅の名義を変更した場合、ローン残額の一括返済を請求できる旨の内容が盛り込まれていることが多いためです。

後のトラブルを防ぐため、住宅ローンの残った住宅を財産分与の対象とする場合、あらかじめ金融機関へ相談することを忘れないようにしてください。

不動産を受け取った場合には登録免許税が課税される

財産分与を受けた場合において、贈与税は原則として課税対象外です。
しかし、他のあらゆる税金までもが免除されるわけではありません。

財産分与において特に注意しておくべき税金は、登録免許税です。
登録免許税とは、法務局で不動産の名義を変える際などにかかる税金です。

財産分与で不動産をもらった場合の登録免許税は、次のように計算されます。

  • 登録免許税額(財産分与)=その不動産の固定資産税評価額×1,000分の20

たとえば、受け取った不動産の固定資産税額が2,000万円であれば40万円、受け取った不動産の固定資産税額が4,000万円であれば80万円もの登録免許税がかかるということです。
不動産の価値が大きければかなりの額の登録免許税がかかることとなりますので、どの程度の登録免許税がかかるのかあらかじめ確認しておくべきでしょう。

不動産を渡した場合には譲渡所得税の課税対象となることがある

譲渡所得税とは、不動産などの財産を売った場合の「儲け」に対してかかる税金です。
実は、財産分与で不動産を渡した場合であっても、この譲渡所得税の対象となります。

財産分与に対価はなく、売ったわけではありません。
それにも関わらず、なぜ譲渡所得税の対象となるのかと腑に落ちない人もいることでしょう。

財産分与で不動産を渡したということは、その代わりに金銭など他の財産を支払わずに済んだということです。
そのため、財産分与で不動産を渡した場合には、その不動産を時価で売却したものとみなして譲渡所得税が計算されることになっています。

そもそも、譲渡所得税は売った際の対価(財産分与の場合には、時価)よりも買った際の対価などが高い場合にはかかりません。
また、マイホームを売った場合には、最高3,000万円までの特別控除が定められています。

そのため、離婚に伴う財産分与で譲渡所得税を実際に支払うべきケースは、さほど多くはないかもしれません。
ただし、特別控除を使うには申告をする必要があるため、不安な場合には管轄の税務署か税理士などの専門家へ確認しておいてください。

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財産隠しが発覚した場合の請求が可能な期間

相手が財産を隠していた場合は、例外的に、除斥期間である2年の経過後も財産分与を請求する余地があります。

たとえば、相手に財産がまったくないことを信じて財産分与を受けなかったものの実は財産を有していた場合や、相手が財産について嘘の申告をしており実際はさらに多くの財産を有していた場合などが該当します。

このような財産隠しは相手方による「不法行為」であると考えられ、次のいずれか早い時期までは財産分与を請求することが可能な場合があります。

1. 財産隠しをされていたと知ったときから3年
2. 不法行為のときから20年

ただし、財産隠しを理由として相手に対して財産分与を直接請求したところで、素直に支払うとは考えにくいでしょう。
そのため、財産隠しを理由として2年の除斥期間後に財産分与を請求するには、証拠が重要となります。

これを自分で行うことは容易ではないため、除斥期間の経過後に財産分与を請求したい場合は弁護士へご相談ください。

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財産分与を受ける側のポイント

財産分与を受ける側が知っておくべき時効にまつわるポイントとして、2点を解説します。

財産分与が迫っている場合は早期に調停を申し立てる

財産分与の時効が迫っている場合は、できるだけ早期に調停を申し立てるようにしてください。
除斥期間である2年が経過する前に調停を申し立てることで、調停の進行中に離婚から2年が経過したとしても、財産分与を受けることが可能となるためです。

悪質な財産隠しがあった場合、2年の時効を経過しても財産分与が可能な場合があるとはいえ、実際にはごく例外的なケースに限られます。
そのため、まずは2年の除斥期間内に調停を申し立てることを目指しましょう。

財産分与をする側のポイント

財産分与をする側は、財産分与にあたってどのようなことに注意する必要があるでしょうか?
最後に、財産分与をする側が知っておくべきポイントを解説します。

財産分与の時効は除斥期間である

財産分与を請求できる期間である「2年」は、時効ではなく除斥期間です。
そのため、財産分与で財産を渡す側による援用(「時効が経過したので、もう請求は応じない」旨の主張)は必要ありません。
悪質な財産隠しなどがない場合、2年を経過したことをもって相手による財産分与の請求権は自動的に消滅します。

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まとめ

財産分与の時効(正確には「除斥期間」)は、離婚が成立してから2年間です。
この期間を過ぎてしまうと原則として財産分与の請求ができなくなってしまうため、期限内に請求するよう注意が必要です。

財産分与の交渉を早期にスムーズにまとめるには、弁護士へご相談ください。

Authense法律事務所には、離婚問題や財産分与に詳しい弁護士が多数在籍しており、法的な観点から日々問題の解決にあたっています。
時効が過ぎてしまう前に財産分与の請求をしたいとお考えの場合には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
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離婚問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
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相手方に有利な条件での示談や和解を要求された場合でも、弁護士に依頼することによって、過去の判例などを踏まえた対等な交渉ができます。
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私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
どうぞお気軽にご相談ください。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。家事事件(離婚・相続)、一般民事事件(交通事故)、不動産法務など幅広い分野を取り扱い、刑事事件では、裁判員裁判の経験も有する。相談者が抱える法律問題に真摯に向き合い、正確かつ丁寧に説明するよう心がけている。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

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