コラム

公開 2023.02.02 更新 2023.12.13

内縁の妻(夫)に相続権はある?内縁関係でも相続できるのか弁護士がわかりやすく解説

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内縁の妻(夫)とは、婚姻届を出さないままに夫婦として生活している相手を指します。
婚姻届を出さない理由は、たとえば同性であるなど法律婚ができない事情がある場合や、法律婚の形に縛られたくないと考えている場合など、そのカップルによってさまざまでしょう。

では、内縁関係にある相手が亡くなった際、その内縁の妻(夫)に相続権はあるのでしょうか?
今回は、内縁の妻(夫)の相続権について弁護士がくわしく解説します。

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内縁の妻(夫)とは

内縁の妻(夫)とは、長年同居生活を送るなど夫婦のような生活をしながらも、婚姻届を出していないパートナーのことを指します。

法律上の夫婦とはならず内縁関係としている理由は、そのカップルによってさまざまです。
たとえば、次の理由などが挙げられるでしょう。

  • 同性であることから法律婚ができないため
  • 法律上の配偶者との離婚が成立していないため法律婚ができないため
  • どちらも名字を変えたくないため
  • 法律婚の形に縛られたくないため
  • 法律婚の必要性を感じないため
  • 相手に相続権を発生させないため

なお、市区町村によっては同性カップルが利用できるパートナーシップ制度を設けていることもあります。
しかし、パートナーシップ制度を利用していても、相続の場面においては内縁関係であることに変わりありません。

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内縁の妻(夫)に相続権はあるのか

内縁のパートナーが亡くなった場合、内縁の妻(夫)は遺産を相続することができるのでしょうか。

内縁の妻(夫)に相続権はない

結論をお伝えすると、内縁の妻(夫)に相続権はありません。
「何年同居すれば相続権が発生する」などということはなく、たとえ30年や40年も夫婦同然の暮らしをしてきたとしても同様です。

なお、法律上の夫婦であれば、たとえ婚姻してからすぐに夫が亡くなったとしても、妻には相続権が発生します。

内縁の解消は財産分与や慰謝料の対象になり得る

内縁のパートナーの死後にその財産を相続することはできない一方で、生前に内縁関係の解消(法律婚における「離婚」)をした場合には、財産分与や慰謝料請求の対象となり得ます。

それぞれ、次のような内容です。

  • 財産分与:離婚にあたって夫婦の財産を清算すること。仮に一方が専業主婦(夫)であったとしても、婚姻期間中に夫婦の協力で形成された財産は、原則として2分の1ずつで清算することになります。
  • 慰謝料:精神的な苦痛に対して行う金銭的な賠償。一方が「離婚」の原因を作った場合などには、慰謝料請求の対象となる可能性があります。

生前の離別にまつわるこれらの請求は、内縁関係であっても対象となる可能性があります。

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パートナーの死亡で内縁の妻(夫)が受け取れる可能性のある権利

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内縁の妻(夫)には相続権がない一方で、次の権利は例外的に受け取れる可能性があります。
それぞれ、次のとおりです。

遺族年金

遺族年金とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者や元被保険者が亡くなったときに、その者によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。
受給には要件がありますが、この遺族年金は、内縁の妻(夫)であっても受給できる可能性があります。

ただし、受給資格を得るためには、一定の資料により内縁関係であったことを証明しなければなりません。※1

特別縁故者への財産分与

次の要件をすべて満たす場合には、内縁の妻(夫)が特別縁故者として遺産の分与を受けられる可能性があります。

  1. 被相続人に相続人が誰もいないこと
  2. 被相続人が遺産の全部を対象とする遺言書を遺していないこと
  3. 被相続人の債務を清算しても、まだ財産が残っていること
  4. 公告をしても、相続権を主張する者が現れないこと
  5. 公告期間の満了後3か月以内に内縁の妻が家庭裁判所に申し立て、特別縁故者であることを裁判所に認められること

このうち、そもそも「1」の要件を満たすケースはさほど多くありません。
なぜなら、相続人の範囲はかなり広く、次の人が1人でもいれば「相続人が誰もいない」場合には該当しないためです。

  • 配偶者相続人:法律上の配偶者
  • 第一順位の相続人:子。子のうち被相続人より先に他界した者がいればその子の子である孫。子も孫も先に他界していればひ孫。
  • 第二順位の相続人:両親。両親がともに被相続人より先に他界していれば祖父母。
  • 第三順位の相続人:兄弟姉妹。兄弟姉妹のうち被相続人より先に他界した者がいればその兄弟姉妹の子である甥姪。

内縁の妻は特別縁故者に該当する可能性が高いとはいえ、特別縁故者に遺産が配分されるケースは非常に限定的であることを知っておきましょう。

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内縁の妻(夫)に相続発生時に財産を渡す方法

生前に何ら対策をしなければ、内縁の妻(夫)は遺産を受け取ることができません。

これは、自宅である不動産なども例外ではなく、仮に内縁の夫が所有する家に内縁の妻とともに住んでいた場合には、相続が起きた後で内縁の妻は不安定な立場に置かれてしまうリスクもあるでしょう。

では、内縁の妻(夫)に相続で財産を渡すためには、どうすればよいのでしょうか?
主な対応方法は、次の2つです。
なお、これらはいずれか一つを選択すべきということではなく、対策を併用しても構いません。

生命保険の受取人に指定する

1つ目の方法は、生命保険契約を締結し、内縁の妻(夫)を受取人として指定することです。
保険金受取人に内縁の妻(夫)を指定しておくことで、相続が起きた後、内縁の妻(夫)が保険会社に請求をして保険金を受け取ることが可能となります。

なお、親族ではない人を受取人として指定できるかどうかは、保険会社によって異なります。
そのため、保険商品を検討する際には、内縁のパートナーを受取人にできるかどうかを重視して選択するとよいでしょう。

遺言書を作成する

2つ目の方法は、遺言書を作成しておくことです。
遺言書とは、自分の死後の財産の行き先などを生前に決めておく書類のことです。

遺言書で遺産を渡す相手には、特に制限はありません。
そのため、内縁の妻(夫)に対して遺産を渡す内容の遺言書を作成することも可能です。

有効な遺言書を遺しておくことで、遺言書に従って内縁のパートナーが遺産を受け取ることが可能となります。

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内縁の妻(夫)に遺言書で財産を渡す場合の注意点

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内縁の妻(夫)に遺産を渡したいとの思いから遺言書を作成したとしても、次の点を理解しておかなければ、内縁の妻(夫)が困った状況に置かれてしまうかもしれません。

そのため、遺言書を作成する際には、次の点に注意しましょう。

公正証書遺言とする

1つ目の注意点は、遺言書はなるべく公正証書で作成することです。

遺言書を作成するための要件は法律で詳細に定められており、主に使用されている方式には次の2つが存在します。

  • 自筆証書遺言:遺言者が全文を自書して作成する遺言書。全文、日付、氏名の自書と、押印が要件とされている。
  • 公正証書遺言:公証人が関与して作成する遺言書。公証人と2名の証人の面前で作成する遺言書。

内縁のパートナーに遺産を渡す内容の遺言書を作成する際には、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言にするとよいでしょう。
なぜなら、自筆証書遺言は書き損じなどにより無効となるリスクや、他の相続人などから偽造を疑われてトラブルとなるリスクがあるためです。

遺留分に配慮する

相続が起きた際、内縁の妻(夫)に遺産を渡す内容の遺言書を作成する際には、遺留分に注意しましょう。
なぜなら、安易に遺留分を侵害する内容の遺言書を遺してしまえば、トラブルとなる可能性があるためです。

遺留分とは

遺留分とは、一定の相続人が保有する、遺産の一定割合を最低限受け取る権利のことです。
遺留分のある相続人は、次のとおりです。

  • 配偶者相続人:法律上の配偶者。
  • 第一順位の相続人:子。子のうち被相続人より先に他界した者がいればその子の子である孫。子も孫も先に他界していればひ孫。
  • 第二順位の相続人:両親。両親がともに被相続人より先に他界していれば祖父母。

一方、被相続人の兄弟姉妹や甥姪は相続人になる場合であっても、遺留分は発生しません。

また、遺留分割合は遺産全体の2分の1、または3分の1です。
遺留分のある相続人が複数いる場合には、これに法定相続分を乗じた割合が個々の遺留分となります。

たとえば、被相続人に子が2名いる場合における1人あたりの遺留分は、4分の1(=遺留分割合2分の1×法定相続分2分の1)です。

第二順位の人のみが相続人となる場合の遺留分割合は、遺産全体の3分の1となります。

遺留分を侵害したらどうなるか

遺留分を侵害したからといって、遺言書が無効になるわけではありません。
たとえば、子どもが1名いる被相続人が「内縁の妻に全財産を遺贈する」との遺言書を遺していたとしても、この遺言書は有効です。

しかしこの場合、相続が起きた後で、子どもから内縁の妻に対して遺留分侵害額請求がなされ、トラブルになる可能性があります。
遺留分侵害額請求とは、遺産を多く受け取った人に対して、侵害された遺留分相当の金銭を支払うよう請求することです。

この請求がなされると、内縁の妻は遺留分権利者である内縁の夫の子どもに対して、遺留分相当額の金銭を支払わなければなりません。
特に遺産の大半が不動産など容易には換価できないものである場合には、遺留分を支払うための金銭が用意できない可能性もあるでしょう。

相続税が2割増しとなる

相続税とは、遺産相続や一定の生前贈与に対してかかる税金です。
遺産や一定の生前贈与の総額が、次の式で算定をする「相続税の基礎控除額」を超える場合には、相続税の申告と納税をしなければなりません。

  • 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

そして、内縁の妻などに遺産を渡した場合には、相続税が2割加算されます。
そのため、相続税がかかるほどの財産ボリュームがある場合において内縁の妻(夫)に財産を遺贈する遺言書を作成する場合には、相続税額を試算したうえで、納税が可能かどうかについてもあらかじめ検討しておく必要があるでしょう。

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まとめ

内縁の妻(夫)には、相続の権利がありません。
そのため、相続が起きた後で内縁のパートナーの生活を守るためには、遺言書などの相続対策が必須であるといえるでしょう。

そして、相続対策をする際には、遺留分などさまざまな法律知識が不可欠です。
そのため、弁護士へ相談をしながら対策を進めるとよいでしょう。

Authense法律事務所では、内縁関係であるご夫婦の相続対策に力を入れております。
内縁のパートナーに遺産を渡したい場合など相続対策を講じたい場合や相続トラブルが発生している場合などには、お早めにAuthense法律事務所までご相談ください。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。早稲田大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学法科大学院法学研究科修了。一般民事、特に離婚事件に関する解決実績を数多く有する。離婚カウンセラーの資格を取得しており、法律的な問題を解決するのみならず、常に依頼者の方の心情に配慮し、不安や悩みに寄り添う対応を心掛けている。
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