コラム

公開 2019.01.15 更新 2023.12.07

養育費は増額請求できる?増額の要件や相手に拒否された場合の対応を弁護士が解説

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養育費を取り決めた後で、増額することはできるのでしょうか?
今回は、養育費の増額が認められるケースや認められないケースを紹介するとともに、養育費増額請求の流れなどについて弁護士が詳しく解説します。

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養育費は増額できる?

一度取り決めた養育費を、増額することはできるのでしょうか?
まずは、養育費とはどのようなものかご説明します。

養育費とは

養育費とは、簡単にいえば離婚した後の子どもの生活費のことをいいます。
そもそも、民法は両親に子どもを扶養する義務を定めています(民法877条1項、820条)。

離婚をしたからといって、この義務がなくなるわけではありません。夫婦は互いに他人となり、それぞれの生活の面倒をみる必要はないですが、親と子どもの関係は変わりません。
そのため、離婚して子どもと別居したとしても、親として子どもの生活にかかるお金は支払う必要があるのです。

平成24年より施行された改正後の民法766条1項でも、離婚する際に決める必要がある事項として「子の監護に要する費用の分担」(養育費の分担)が明示されています。
具体的には、両親のどちらかが親権・監護権を得て同居することになった場合、離れて暮らす別居親が養育費を渡すという形式になります。

養育費の金額を取り決める際によくあるトラブル

養育費の金額を取り決める際、取り決めの障害となる事項や後のトラブルの原因となる主な事項は次のとおりです。

「適正額」の判断が困難

必要な額の養育費を、適正に算定することは容易ではありません。
一般的には、後ほど解説する算定表を参考とすることが多いですが、実際にかかる養育費は居住地域や子の進学先などによって大きく異なるためです。

相手と冷静に話し合うことが難しい

養育費について話し合うとしても、離婚前後に相手と冷静に話し合うことは容易ではありません。
一刻も早く離婚をすることを優先し、養育費を取り決めなかったり相手が提示した養育費の金額そのままに合意をしてしまったりする場合も少なくないでしょう。

取り決め時に書面を残していない

養育費について取り決めたにもかかわらず、口頭の合意のみで書面に残さない場合もあります。
口頭であっても取り決め自体は有効ですが、後から、相手に「そのような合意はしていない」などと主張されてしまう可能性があるでしょう。

養育費の相場は「養育算定表」が基準となる

養育費に含まれるものとしては、一般的に衣食住に必要な費用、教育費や医療費と解されています。親の子に対する扶養義務は、自分と同じ水準の生活を保障するという生活保持義務といえます。
裁判所が養育費を決定する場合、金額の算定は一般的に「養育費の算定表」を基準とします(令和元年12月23日に改訂されました)。
実際の養育費の金額ですが、離婚した父親からの養育費の平均月額(養育費の額が決まっている世帯)は43,707円、他方、離婚した母親からの養育費の平均月額(同)は32,550円となっています(平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果)。

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養育費を増額の判断基準

養育費を増額するための判断基準は、原則として次の3つです。

  • 合意時点から事情が変化したこと
  • 合意した時点で、事情の変化の予測ができなかったこと
  • 増額の必要性があること

たとえば、次の場合にはこれらの条件を満たし、増額が認められる可能性が高いでしょう。

子どもの進学等による教育費の増加

子が進学したことや、当初の予定よりも学費の高い学校へ進学することなどによって多くの費用が必要となった場合には、養育費の増額請求が認められる可能性があります。

子どもの医療費が必要な場合

子が病気になるなどして多額の医療費が必要となった場合には、養育費の増額請求が認められる可能性が高いでしょう。

受け取る側の収入が減少した場合

養育費を受け取る側の収入がやむを得ない事情により大幅に減った場合には、養育費の増額請求が認められる可能性があります。

支払う側の収入が増加した場合

養育費を支払う側の収入が大幅に増えた場合には、養育費の増額請求が認められる可能性があります。

どのくらい増額できる?

増額後の養育費の金額は、原則として裁判所が公表する算定表が参考になります。
事情変化後の収入を表に当てはめて、新たな相場を確認しましょう。但し、後述するとおり、養育費算定表は、私立学校の学費が考慮されておりませんので、増額の見込額をより正確に知りたい場合は、弁護士に個別に相談することをおすすめします。

なお、調停や審判で養育費を決める際にはこの算定表を基準にしつつ、他の事情も考慮して総合的に判断されます。

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養育費の増額を求めるための手続き

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養育費の増額を求めるための手続きは、次のとおりです。

任意請求で合意を得る

まず相手に対し、「養育費の増額」についての話し合いがしたいという要望を伝えます。
養育費の増額は、相手にとってみれば支出に関わることなので、今後の生活にも影響を及ぼす重大事項です。現在の自分の資力や、増額が必要な事情をしっかりと説明し、当事者間で話し合いを行います。ここで両者が合意に至った場合は、その内容で今後の養育費が変更となります。

相手に増額を拒否されたら

相手と任意での合意ができず、増額を拒否された場合には、養育費増額調停や養育費増額審判を検討しましょう。

養育費増額調停の申し立て

養育費増額調停とは、調停委員の立ち合いのもと、家庭裁判所で行う養育費増額についての話し合いのことです。
話し合いですので、増額をするには相手の合意が必要となります。

詳しくは、次のリンク先をご参照ください。

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養育費増額審判

養育費増額調停でも話し合いがまとまらない場合には、養育費増額審判へと移行します。
養育費増額審判では、原則として裁判所が増額の可否や変更後の金額を決定します。

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養育費の増額が認めらないケースとは

養育費増額調停や養育費増額審判を申し立てたとしても、次の場合には、その点も含めて事情の変更があるとされ、増額が認められる可能性は低いでしょう。

受け取る側の収入が大幅に増えた

子のかかる養育費が増えた一方で、受け取る側の収入も大幅に増えている場合には、養育費の増額請求が認められる可能性は低いでしょう。

支払い側が再婚し、子が生まれた

養育費の支払い側が再婚をして、再婚相手との間に子が生まれている場合には、養育費の増額請求が認められない可能性があります。

むしろ、支払い側に扶養家族が増えた以上、養育費を減額すべき事情の変更にあたると考えられるためです。

支払い側の収入が大幅に減少した

子にかかる養育費が増えた場合であっても、支払い側の収入が大幅に減少している場合には、養育費の増額が認められる可能性は低いでしょう。
むしろ、収入が下がり具合などによっては、養育費の減額が求められる可能性もあります。

増額を求める際の注意点

養育費の増額を求める場合には、次の点に注意しましょう。

養育費増額請求調停を急ぐ方が良い理由

養育費の増額を求めたい場合には、できるだけ早期に養育費増額請求を行うことをおすすめします。
なぜなら、たとえ増額請求が認められたとしても、原則として請求時からの増額が認められるにとどまるためです。

新算定表が作成されたことは増額の理由にならない

養育費算定の参考となる算定表は、令和元年12月23日に改訂されました。
しかし、新しい算定表に当てはめたところ現在受け取っている養育費よりも高い金額が算定されたことのみを理由に、増額を求めることは困難です。

上述したように、養育費の増額を求めるには、予測できなかった事情の変化などの理由が必要となります。

養育算定表の学費は「公立学校」が前提

養育費算定表は、公立学校の学費を前提として作成されています。
そのため、私立学校の学費は考慮されておりません。
しかし、離婚後、子どもが私立学校へ入学したからといって、必ずしも養育費の増額が認められるわけではありません。

私立に通ったことを理由に養育費の増額が認められるかどうかは、私立学校への進学についての支払い義務者の合意の有無や、支払い義務者の収入などから総合的に判断されることとなります。

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養育費の増額について合意ができたら、合意書を「公正証書」にする

調停や審判であれば調停調書や審判書がありますが、話し合いで養育費を決めた場合は、合意内容を確実に行ってもらうために、公証役場にて公正証書を作成することをおすすめします。

単なる口約束や書面では、のちに支払いをしてくれない場合に、実際にそのような約束の事実があったことを証明する必要があり、時間がかかります。
養育費は日々の生活費であるため、支払われるまでに時間がかかれば、子どもとの生活に影響が出る恐れがあります。

しかし、公正証書は公正な第三者である公証人が権限に基づいて作成する文書であり、高い証明力があります。
さらに、公正証書の内容に、金銭の支払いができなければ強制執行を受けることを応諾する文言があれば、裁判所の手続きを経ることなく、すぐに強制執行をして、別居親の給料などを差し押さえることができます。

子どもの利益を最優先に考えれば、子どもを十分に養育できる環境を作る必要があります。
そのためには、相当額の養育費が継続して確実に支払われることが重要です。

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養育費の増額を成功させるためのポイント

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養育費の増額を成功させるための主なポイントは、次のとおりです。

弁護士へ依頼する

養育費の増額請求は、離婚や養育費の問題に詳しい弁護士へ依頼しましょう。
弁護士へ依頼することで、事例に合った交渉の進め方についてアドバイスが受けられますので、交渉を有利に進めることが可能となります。

増額が必要となる根拠となる金額をできるだけ正確に算定する

交渉に際しては、なぜ増額が必要となったのか、その根拠となる金額をできるだけ正確に算定しましょう。
具体的な金額を示すことで、相手や調停委員の納得が得やすくなります。

養育費の増額を求められたら

養育費を支払う側として、相手から養育費の増額を求められた場合、その場ですぐに合意をすることは避けた方が良いでしょう。
いったん持ち帰り、増額の理由に正当性があるのかということや、金額の妥当性などについて慎重に検討したうえで回答することをおすすめします。
相手の請求が妥当かどうかの判断が難しい場合には、弁護士へご相談ください。

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まとめ

養育費は、子が受けるべき当然の権利です。
適正な金額を受け取るため、養育費を増額すべき事由がある場合には、ぜひ養育費増額請求を検討しましょう。

しかし、自分で交渉をして養育費増額を実現させることは容易ではありません。
養育費の増額請求を希望する場合には、弁護士へ相談することをおすすめします。

Authense法律事務所には、離婚問題や養育費増額請求に詳しい弁護士が多数在籍しております。
養育費増額請求は、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

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Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
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離婚問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
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また、問題終結後に弁護士を通して合意書を作成しておけば、和解成立後に相手方から再び慰謝料を請求されたり、不貞行為の内容をSNSに投稿されたりといった事後的なトラブルを未然に防止することも可能になります。

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どうぞお気軽にご相談ください。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
早稲田大学法学部卒業(3年次卒業)、東京大学大学院法学政治学研究科修了。企業法務から、離婚、相続問題を中心とした一般民事事件、刑事事件など幅広く取り扱う。
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