コラム
公開 2020.06.16 更新 2023.11.27

親権問題 母親が親権者になれないケースとは?

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離婚の際、未成年の子どもがいたら父親か母親のどちらかを親権者に指定しなければなりません。多くのケースでは母親が親権者に指定されますが、ときには母親でも親権者になれないケースがあります。

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1.母親が親権者になれないケース

日本の家庭裁判所は、未だに「子どもの親権者は母親が望ましい」という根強い考えを持っています。徐々に変わってきてはいますが、基本的には女性側が親権獲得に有利といっても良い状況です。

ただし以下のようなケースでは母親が親権を獲得できない可能性が高くなります。

1-1.子どもを虐待している

婚姻中、母親が子どもを虐待していた場合には親権は認められません。

虐待には、以下のようなパターンがあります。

  • ・身体的虐待
    子どもをたたいたり蹴ったり髪の毛を引っ張ったり強く揺すったりして暴力を振るっていた場合です。
    しつけの範囲で頭を叩いた、平手打ちをしたという程度であれば虐待にはなりません。
  • ・精神的虐待
    子どもが寄ってきても無視する、罵倒する、怒鳴り付ける、暴言を吐くなどの行為です。
    多少口が悪いという程度では精神的虐待になりません。
  • ・ネグレクト
    ネグレクトとは育児放棄のことです。
    たとえば主婦なのに一日中ゲームをしたり子どもを家において外出して遊んでいたりして、食事も作らない、掃除もせず不衛生な状態で放置する、病気になっても病院に連れて行かないなどの問題があれば親権者になれない可能性が高くなります。
  • ・性的虐待
    子どもにわいせつ行為をする虐待です。母親の場合には少数です。

1-2.子どもの世話を夫任せにしている

母親であっても子どもの面倒をみず夫に任せきりにしているケースでは、夫に親権が認められやすくなります。
裁判所は親権者を判断するとき、これまでの育児に対する実績を重視するからです。
たとえば夫が専業主夫で子どもが生まれたときから主に監護してきたケースでは夫に親権が認められやすくなります。

1-3.家出した

母親が夫と子供を置いて家出した場合には親権獲得がかなり厳しくなると考えましょう。
育児を放棄し夫に子どもを託したとみなされる可能性が高いです。

1-4.離婚時に子どもと一緒に暮らしていない

離婚前に夫婦が別居する場合、子どもは夫婦のどちらか一方と生活することになります。
別居時に子どもと一緒に暮らしていない側は親権獲得に際して大きく不利になります。
裁判所は「子どもが安定して生活できているなら、その現状を維持すべき」という基本的な考えをもっているためです。

子どもが乳幼児であれば別居していても母親が親権を獲得しやすいのですが、学童期に入った子どもと別居している(子どもと父親が同居している)場合には、母親が親権を獲得するのが困難となります。

1-5.健康状態が悪い

母親の心身の健康状態が相当悪化しており育児に耐えうる状態でないと判断されると、親権獲得は困難となります。
ただし、病気であっても育児ができる程度であれば親権を取得できます。

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2.不貞していた場合は?

母親と親権の関係で、よく「母親が不貞(不倫)していると親権を獲得できないのか?」というご相談をお受けします。

不貞していても、親権を獲得できないとは限りません。
確かに不貞していないよりは不利になりますが、「不貞していたら親権を認めない」というわけではありません。

たとえば以下のような場合には、不貞していても親権が認められやすくなっています。

  • ・不貞関係を清算し、子どもを育てる環境を用意している
  • ・不倫しても家庭生活や育児をおざなりにすることはなかった
  • ・不倫相手との交際と子どもとの関わりはきちんと分けており、子どもに悪影響を与えていない
  • ・不倫についてしっかり反省し、子どもとの関係を真面目に考えている

反対に以下のような場合、親権が認められにくくなります。

  • ・離婚前に不倫相手と子どもを会わせたり、不倫相手を「お父さん」と呼ばせたりしている
  • ・不倫相手と同棲するために家出した
  • ・子どもを連れて家を出て不倫相手と子どもと一緒に暮らしている

子どもの問題と不倫問題をしっかり分別できているか、不倫によって子どもに悪影響を与えていないかなどが重要視されます。

不倫相手と別れない限り親権が認められない、というものでもありませんが、別れて子どもとしっかり向き合っている方が親権を獲得しやすくなるのは事実です。

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3.経済事情について

母親と親権の関係で「経済力がないと親権を獲得できないのか?」というご相談も非常に多くお受けします。

結論として、経済力はなくても親権を獲得できます。
裁判所は「母親の収入が少なくても行政給付や夫からの養育費で子どもを育てられるなら親権を認めても良い」と考えているからです。
実際にも、生活保護を受給しながら子どもを育てている母親の方もたくさんおられます。

4.母親が親権を獲得する方法

母親が親権を獲得するのは、父親と比べると難しくはありません。
そのためには、以下のような対応を心がけるようにしましょう。

4-1.積極的に育児に関わる

まずは自らが積極的に育児に関わることが重要です。
子どもの食事を作り与えること、子どもの様子をしっかりみて学校との連絡役になること、掃除などをして生活環境を整えること、乳幼児であればミルクやおむつなどの世話をするなど、基本的なことを行っていたら大丈夫です。

4-2.子どもとの関係を良好に保つ

子どもを虐待してはならないのは当然ですが、なるべく子どもとの関係を良好に保ちましょう。
密接にコミュニケーションをとって話を聞いてあげて、両親の離婚に悩んでいる子どもの気持ちに寄り添いながら、なるべくリラックスして過ごせるように配慮しましょう。

4-3.別居する際には必ず子どもを連れて出る

夫と別居する際には、必ず子どもを連れて出る必要があります。「後で迎えに来よう」と思って子どもを置いて出ると、そのまま夫に親権が認められる可能性が高くなります。
一方、夫が家を出るケースでは一人で出ていってもらいましょう。また、連れ去りにも十分に注意が必要です。

4-4.離婚後の生活設計をする

離婚後、あなたと子どもが困窮せずに生きていけるように生活設計しましょう。
職探しや家探しをして、子どもを引き取ったときの収支予定や1日の生活スケジュールなどを考えます。
「こんな風にきちんと育てます」と裁判所に説明できれば、親権を認められる可能性が高くなります。

子どもの年齢が高くなるにつれて、父親にも親権が認められやすくなってきます。
親権問題でお悩みの方がいらっしゃったらお気軽にご相談ください。

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Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
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また、問題終結後に弁護士を通して合意書を作成しておけば、和解成立後に相手方から再び慰謝料を請求されたり、不貞行為の内容をSNSに投稿されたりといった事後的なトラブルを未然に防止することも可能になります。

私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
どうぞお気軽にご相談ください。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
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