コラム

公開 2024.01.29 更新 2024.03.08

裁判で親権者を決める判断基準は?有利に進めるポイントを弁護士がわかりやすく解説

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未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、いずれを親権者とするかを定めなければなりません。
いずれを親権者とするかは夫婦間の協議で決めるのが原則であるものの、話し合いがまとまらない場合は、裁判所にいずれが親権者となるかを決めてもらうこととなります。

では、裁判所はどのような基準で親権者を決めるのでしょうか?
また、親権者を決める裁判で有利になるには、どのような対策を講じればよいでしょうか?

今回は、裁判で親権者を決めるポイントについて弁護士が詳しく解説します。

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親権とは

親権とは、子どもの利益のために監護や教育を行ったり、子どもの財産を管理したりする権利であり、義務でもあります。
子どもの両親である夫婦の婚姻中は、夫婦が共同で親権を行使します。

一方、子どもの父母が離婚をするとその後は共同で親権を行使することができず、いずれか一方が子どもの親権者となります。
親権者は離婚にあたって必ず定めなければならず、親権者が決まらないうちは離婚を成立させることはできません。

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親権者を決める方法

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離婚に際して、親権者はどのような方法で決めるのでしょうか?
ここでは、親権者を決める方法を順を追って解説します。

夫婦間で話し合う

離婚後にいずれが親権者となるのかは、まず夫婦の協議(話し合い)によって決めることとなります。
夫婦間の話し合いさえまとまるのであれば、夫婦間の合意のみで親権者が決まります。

とはいえ、親権者は子どもの利益を守るための存在であることから、子どもを適切に監護養育するとの視点からいずれが親権者として適任であるか夫婦間でよく話し合ったうえで、子どもの意見も尊重した方がよいでしょう。

離婚届には、「夫が親権を行う子」と「妻が親権を行う子」をそれぞれ記載する欄があります。
夫婦間で話し合いがまとまったら、それぞれの欄に未成年の子どもの氏名を記載して離婚届を提出することで、親権者が決まります。

離婚調停で決める

夫婦間の話し合いによって親権者が決まらない場合は、離婚調停へと移行します。
離婚調停とは、家庭裁判所で行う話し合いです。

とはいえ、夫婦が直接対峙するのではなく2名の調停委員が交互に当事者から意見を聞く形で話し合いが進行することから、お互いが冷静になって話し合いをしやすくなります。

夫婦間の合意がまとまると調停が成立し、これにより親権者が決まります。

離婚裁判で決めてもらう

調停が不成立となった場合は、裁判を申し立てます。
裁判では、諸般の事情を考慮のうえ、どちらを親権者とするのかを裁判所が決定します。

離婚する夫婦がいずれも自分が親権者となることを希望している場合、裁判所の決定にはいずれかは不満を持つことでしょう。
しかし、たとえ不服があっても裁判所の決定には原則として従わなければならず、不服がある場合は、判決文を受け取った翌日から14日以内に控訴するほかありません。

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裁判で親権者を決める判断基準

裁判で親権者を決める場合、裁判所などのような視点で親権者を決めるのでしょうか?
ここでは、裁判所が親権者を決める際の主な判断基準について解説します。

これまでの養育状況

もっとも重視されるポイントの一つは、これまでの養育状況です。

裁判所は、両親の離婚によって子どもの環境が大きく変わらないことが望ましいと考えます。
そのため、夫婦のうちこれまでメインで育児を担ってきた側が親権者として選ばれやすい傾向にあります。

子どもが幼い場合は母親優先

親権争いの有利・不利に、男女のよる差はないことが原則です。
しかし、子どもが非常に幼い場合は、母親が優先される傾向にあります。
なぜなら、この時期の子どもは特に母親との結びつきが強いうえ、子どもを主に監護しているのは母親であることが多いためです。

また、特に乳児の場合は母親が選ばれやすい傾向にあります。

心身の健康状態

親権者の選定では、親の心身の健康状態も判断要素の一つとなります。
たとえば、健康上の理由から頻繁に寝込んだり入院したりするようでは子どもの監護や養育が適切に行われないおそれがあることから、親権獲得において不利となる傾向にあります。

とはいえ、多少持病があるからといって子どもの養育に支障がない程度であれば、必ずしも不利となるわけではありません。

子どもと過ごす時間がもてるかどうか

親権者を決める際には、今度子供と過ごす時間がとれるかどうかも判断要素の一つとなります。
特に子どもが幼いうちは、子どもと過ごす時間を持ちやすいほうが有利になる傾向にあります。

ただし、現実的な問題として、子どもとの生活や教育などに必要となるお金を稼ぎつつ子どもと過ごす時間を長く確保することは、容易ではないでしょう。
そのため、次で紹介する周囲のサポート体制とも合わせて判断されることが一般的です。

周囲のサポート体制

親権の判断では、周囲のサポート体制も考慮されます。
たとえば、離婚後の子どもの祖父母と同居する場合や祖父母の近隣に住みサポートを受けら得る場合は、プラスの要素となるでしょう。

面会交流の柔軟性

一般的に、裁判所は未成年の子どもとは両親ができるだけ交流する方がよいと考えています。
そのため、面会交流について柔軟な考えである方が、親権の判断において有利になりやすいといえます。

きょうだい不分離の原則

未成年の子どもが2人以上いる場合、夫婦の協議によって親権者を決める場合は、子どもによって親権者を分けることも可能です。
たとえば、長男の親権者を夫とし、長女の親権者を妻にすることなどもできるということです。

一方、裁判所はきょうだい不分離を原則としています。
そのため、裁判で親権者を決める場合は、複数の子どもの親権者は原則として同一となります。

子ども本人の希望

親権者を決めるにあたっては、子ども自身の希望も判断要素の一つとなります。

中でも、子どもが15歳以上である場合は、裁判所は子どもの意見を聴取しなければならず、子どもが希望は尊重されます。
たとえ未成年であっても15歳ともなれば、ある程度正確な判断能力が備わっていると考えられるためです。

親権者を決めるにあたって、15歳以上である子どもの陳述を聴くべきことは法律で定められています(家事事件手続法169条4項、人事訴訟法32条4項)。
また、子どもがおおむね10歳以上である場合も、必ずしも子どもの意見がそのまま通るわけではないものの、ある程度子どもの意見が斟酌されます。

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裁判で親権獲得のために有利となるポイント

裁判で親権獲得を有利に進めるポイントには、どのようなものがあるでしょうか?
ここでは、親権獲得のための裁判を有利に進める主なポイントを3つ解説します。

弁護士へ依頼する

1つ目は、離婚問題や親権獲得を得意とする弁護士からサポートを受けることです。

親権獲得を有利に進めるには、証拠とともに自身が親権者としてふさわしいことを論拠を持って主張しなければなりません。
いくらこれまで子どもに愛情をもって接し、これからも大切な子どもを責任を持って養育していく覚悟があるとしても、これをうまく裁判官に伝えられなければ親権獲得において不利となるおそれがあるでしょう。

弁護士からサポートを受けることで、必要な主張や証拠の提示がしやすくなり、親権争いを有利に進められる可能性が高くなります。

証拠を提出する

2つ目は、証拠を提出することです。
先ほども触れたように、裁判では何よりも証拠が重視されることが原則です。

裁判官は、日ごろの家庭生活を直接見ているわけではありません。
そのため、証拠を提示することで主張の確からしさを確認し、いずれが親権者としてふさわしいかを判断せざるを得ません。

証拠としては、たとえば母子手帳や育児日記、保育園や幼稚園との連絡帳のやり取りなどが挙げられます。
また、相手が子どもを虐待していた場合、虐待について警察に相談した記録や病院の受診記録なども証拠となります。

ほかにも、写真や育児に関するメールのやり取りなどが参考となるでしょう。
自身の主張を裏付ける証拠を提示することで、親権獲得を有利に進めやすくなります。

調査官による調査にしっかり対応する

3つ目は、裁判所の調査官による調査にしっかりと対応することです。

家庭裁判所には「家庭裁判所調査官」がおり、事案の解決へ向けた調査を行います。
そのうえで報告書を作成しますが、この報告書は親権者を決める際の重要な判断材料となります。

調査員は、次の調査などを行うことが一般的です。

  • 子ども本人との面談
  • 家庭訪問(生活環境の確認)
  • 保育園や学校の訪問

このような調査は、調停、訴訟のいずれの手続でも行われることがありす。

実態を確認してもらうことで自身が親権者としてふさわしいと判断してもらえるよう、環境を整えたり、資料を用意したりして、十分に準備して調査に対応するとよいでしょう。

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親権獲得へ向けた裁判で重視されること

親権獲得へ向けた裁判では、裁判所はどのような点を重視するのでしょうか?ケースバイケースであるものの、ここでは一般的に重視される要素を3つ紹介します。

これまでの育児経験

親権争いの裁判では、これまでの育児経験が重要です。

これまでどのように子どもと関わってきたのか、これまでどのような育児を担ってきたのか、子どもの様子をどれだけ知っているかなどは、親権を決めるにあたって非常に重要となるためです。

離婚後の生活環境

親権者を決める裁判では、離婚後の生活環境も重視されることが一般的です。

たとえば、次の今後の住まいの間取りや家賃のほか、子どもの転校や転園の要否などが問題となります。

子どもと接する時間が確保できるか

親権獲得の裁判では、今後子どもと接する時間がとれるかどうかについても重視されます。

仕事をする場合は、仕事中に子どもを見てくれる人はいるのか、周囲のサポートが受けられるのかなども問題となります。

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親権獲得へ向けた裁判に関するよくある疑問

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最後に、親権獲得の裁判に関するよくある質問とその回答を紹介します。

親権の獲得には母親が有利?

先ほど解説したように、子どもが乳児であるうちは確かに母親が優先される傾向にあります。
これは、子どもを出産するのが女性であるとの性質上、幼いうちは特に母親との結びつきが強くなりやすいことによるものです。
ただし、これ以外の場合には、性別によって有利・不利があるわけではありません。

そうであるにも関わらず、親権争いで女性が有利になりやすいとイメージされやすい理由は、実際に女性が親権を獲得しているケースが多いためでしょう。

しかし、これは「女性であること」を理由に親権者として有利になっているわけではなく、「これまで主に子どもの育児を担ってきたのが女性であるケースが多いこと」から、結果的に女性が選ばれているにすぎません。

家族の在り方が多様化しているとはいえ、未だ「育児は母親がメインで担う」という家庭は多く、これが結果的に女性が親権者として選ばれやすい理由の一つとなっています。

そのため、母親がほとんど育児を担ってこなかった場合にまで女性が有利となるわけではなく、父親が育児を主に担ってきた場合は、父親が親権を獲得できる可能性が高くなります。

子どもを連れ去ると親権獲得に影響する?

実親による子どもの連れ去りは、社会問題になっているともいえます。
特に、離婚の前後では子どもが一方の親に連れ去られるケースが少なくありません。
では、子どもを連れ去った場合、親権争いに影響するのでしょうか?

結論をお伝えすると、子どもの連れ去りが親権争いに影響するかどうかはケースバイケースです。

たとえば、以前から母親と暮らしていた子どもを父親が学校帰りに待ち伏せして連れ去ったり、母親と子どもが住む居宅に侵入して連れ去ったりした場合は、親権争いで不利となる可能性があります。
これらは、子どもに大きな負担を与え、親権者の行為としてふさわしくないと評価されうるためです。

一方で、子どもを連れ去った理由が相手の虐待から守るためであれば、親権獲得で不利となる可能性は低いでしょう。

このように、一口に子どもの連れ去りといっても、その目的や態様はさまざまです。
実際のケースにおいて子どもの連れ去りが親権争いに及ぼす影響を知りたい場合は、弁護士へご相談ください。

将来親権者を変更することは可能?

結論としては、「変更する余地はゼロではないものの、ハードルが高い」といえます。

まず、将来元夫婦間の合意によって親権者を変えようとする場合も、親権者変更は夫婦間の合意のみで行うことはできません。
離婚時は夫婦間の合意さえあれば親権者を決められる一方で、離婚後の親権者変更はたとえ元夫婦間が合意していても、裁判所の調停や審判を経る必要があります。
親の都合で簡単に親権者を変えられてしまうと、子どもにとって不都合となり得るためです。

また、親権者となった元配偶者が親権者の変更に同意しない場合において親権者を変更するには、親権者が子どもを虐待しているなど、相当な事情がある場合に限られます。
そのため、離婚時に「後から変えればよい」という考えで親権を相手に譲ることは、絶対に避けるべきでしょう。

親権者変更についてお悩みの際は、弁護士へご相談ください。

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まとめ

夫婦間の合意によって親権者が決まらない場合は、調停や審判で親権者を決めることとなります。
裁判では、これまでの子どもとの関わり方や今後子どもと過ごす時間が確保できるかなどの視点から、どちらが親権者としてふさわしいかが判断されます。
親権獲得を有利に進めるためには証拠を揃えて提示するほか、親権争いに強い弁護士へ相談することがポイントです。

Authense法律事務所には離婚問題に強い弁護士が多数在籍しており、親権獲得についても豊富な解決実績があります。
親権獲得の裁判を有利に進めたい場合は、Authense法律事務所までご相談ください。

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Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
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私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。家事事件(離婚・相続)、一般民事事件(交通事故)、不動産法務など幅広い分野を取り扱い、刑事事件では、裁判員裁判の経験も有する。相談者が抱える法律問題に真摯に向き合い、正確かつ丁寧に説明するよう心がけている。
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