コラム
公開 2020.02.13 更新 2023.12.15

離婚協議書とは?自分で作成できる?書き方や注意点を弁護士が解説

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離婚をすることになったけれど、調停や裁判をするほど話がこじれていないという場合に、当事者同士の話し合いで離婚を決める方法が「協議離婚」です。
調停や裁判による離婚では調停調書や判決書が作成されますが、協議離婚をするときは、自分たちで離婚協議書を作らない限り、書面で離婚の条件の内容は残りません。
口約束のみでは、後になってそんな約束をした覚えはないといわれる可能性があります。

では、離婚協議書はどのように作成すればよいのでしょうか?
また、離婚協議書を公正証書とすることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?

今回は、離婚協議書について弁護士がくわしく解説します。

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離婚協議書とは?なぜ必要?

協議離婚には離婚協議書を
離婚協議書とは、「協議離婚」をするにあたって、当事者同士で離婚の条件について定めた契約書のことです。

日本は協議離婚が多いが離婚協議書の重要性が知られていない

夫婦が離婚する方法は、大きく分けて、以下の3種類があります。

  • 話し合いのうえ、離婚届を役所に提出する「協議離婚」
  • 家庭裁判所での話し合いの手続きを用いて離婚する「調停離婚」
  • 裁判所の裁判手続きで、夫婦間に離婚原因かあるかどうかを、裁判所が証拠に基づいて判断する「裁判離婚」

もう一つ審判離婚という方法もありますが、実際にはほとんど利用されていません。

このうち、もっとも一般的な離婚方法は、話し合いで解決する協議離婚です。
実際、政府の統計でも2020年に離婚をした夫婦193,253件のうち、170,603組、およそ「88.3%」が協議離婚を選んでいます。※1
しかし、協議離婚ではお互いの意思で離婚協議書を作らない限り、離婚時の財産分与や養育費の支払いなどの約束が証拠にのこらない危険があります。

  • 「浮気をした相手と一刻も早く別れたいので離婚届を提出した。しかし離婚後、約束していた慰謝料と養育費が振り込まれない」
  • 「子どもと月に一度面会させてくれるという条件で離婚届に判を押したが、あれこれと理由をつけて面会を断られている」

といったトラブルが起きた際、離婚協議書がないとトラブルを解決するまでに多大な労力と時間と費用がかかってしまうでしょう。
離婚協議書は、自分や子どもの権利・財産を守るために必要な合意書なのです。

自分からお金のことについて話題にすることを嫌がったり、相手から責められて交渉をするのが嫌になったりする人も多いですが、どれだけ信頼している相手であったとしても、離婚後に考えが変わり、離婚条件が守られない可能性はあります。
離婚時に苦労するかもしれませんが、離婚時の約束を確実に履行してもらうためにも、協議離婚をする場合は積極的に離婚協議書を作成しましょう。

離婚協議書を公正証書にすれば養育費などを回収しやすくなる

離婚協議書は、あくまでも当事者同士が作成する合意書です。
そのため、たとえ離婚協議書で「月3万円の養育費を支払う」と決めていても、協議書を作成した段階では、相手が支払いを滞らせた際に給料を差し押さえるといった対応を直ちにとることができません。

しかし、作成した離婚協議書を「公証役場」で「強制執行認諾付公正証書」という書類にすれば、裁判所の強制執行により、給与の差し押さえなどもできます。
公正証書を作る際に費用がかかるものの、相手が履行を怠った場合に備える必要がある場合、公正証書にすることも検討するとよいでしょう。

この公正証書については、後ほどくわしく解説します。

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離婚協議書の書き方

離婚協議書を作成する手順は、次のとおりです。
なお、仮に離婚協議書を公正証書とする場合には公証人側で文言を作成してくれるため、自分で文言を作成する必要はありません。

親権について記載する

未成年の子どもがいる場合には、親権について記載します。

なお、令和4年(2022年)4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられました。
これにより、親権に服する期間も、子が18歳に達するまでとなっています。

養育費について記載する

養育費の支払いが生じる場合には、養育費について記載します。
養育費は一括で支払うのではなく、定期的に授受することが一般的です。

次の事項を協議して、明記しましょう。

  • 子どもごとの養育費の金額
  • 養育費の支払い時期(毎月末日までなど)
  • 養育費の支払い開始時期と支払い終期
  • 養育費の支払い方法(銀行振込など)
  • 特別出費時の負担について

なお、養育費の額は双方の協議がまとまるのであれば、いくらであっても構いません。
目安となる金額が分からない場合には、裁判所が公表している算定表を参考にするとよいでしょう。※2

面会交流について記載する

未成年の子どもがいる場合には、面会交流について記載します。
合意内容に応じて、頻度、場所、面会方法などを記載する場合もあります。

慰謝料について記載する

離婚によって慰謝料が生じる場合には、慰謝料について記載します。

慰謝料は一括払いとする場合もあれば、分割払いとする場合もあります。
慰謝料については、次の事項を明記しましょう。

  • 慰謝料の金額
  • 慰謝料の支払い期限
  • 慰謝料の支払い方法(銀行振込など)

通知義務を記載する

特に養育費など長期にわたる金銭の授受などが生じる場合や面会交流の取り決めをする場合には、通知義務を定めておきましょう。

通知義務とは、住所や職場などが変わった際に、相手に通知する義務のことです。

清算条項を記載する

清算条項とは、この協議書に記載した事項以外に、離婚に関して相手に対して何ら請求をしないという確認条項です。
ただし、離婚に関して他に請求する可能性があるのであれば、清算条項を入れてはいけません。

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離婚協議書はなるべくプロに作ってもらったほうがよい

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夫婦によって、離婚協議書の作成の進め方はそれぞれです。
ただ、インターネットなどで手に入る離婚協議書のひな形をそのまま利用するのはあまりおすすめできません。

ひな形はあくまでもひな形です。多くの人に当てはまる可能性の高い必要最低限の体裁を整えているだけなので、各夫婦の実情や希望に合わせるためには、離婚協議書の内容を作り直す必要があります。

しかし、一般的に離婚協議書のような法的文書の作成は簡単ではなく、夫婦によって収入や、子どもの有無、人数なども違います。
慣れない法律用語を用いながら、個別のトラブルを防ぐための項目を追加したり削除したりするのは、簡単なことではありません。

離婚協議書の内容に不備があると、かえってトラブルにつながってしまいます。
一度は弁護士といった法律用語の専門家に離婚協議書の内容をチェックしてもらうことをおすすめします。

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離婚協議書作成のタイミングは離婚届を提出する前がおすすめ

離婚協議書は、お互いが内容に合意するのであれば、いつ作っても構いません。
しかし、現実的に考えると、離婚後に別れた夫婦が何度も話し合いをするのは難しいでしょうし、相手が話し合いに応じない危険もあります。
したがって、離婚協議書を作成してから離婚するのがおすすめです。

離婚後2年から3年で財産分与などを請求できなくなるので要注意

離婚をする際、

  • 夫婦で協力して築いた共有財産の分割(財産分与)
  • 年金分割
  • 相手側が有責配偶者にあたる場合は慰謝料の請求

をすることができます。ただし、財産分与を請求できる期限は、離婚してから2年です。

また、年金分割の請求についても、離婚してから2年と定められています。
夫婦間の離婚慰謝料請求は、基本的には離婚の成立時から3年です。

結婚中の財産を整理してから離婚届を出したほうが将来トラブルになりづらいため、離婚協議書作成は離婚届を出す前に終わらせることをおすすめします。

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離婚協議書を公正証書にする意味と効力

離婚協議書を公正証書とすることには、どのような意味や効力があるのでしょうか?
主な意味や効力は、次のとおりです。

相手が約束を破った際の強制執行が容易となる

離婚協議書を公正証書とする最大のメリットは、仮に相手が約束を破って養育費などを滞納した際に、強制執行が容易になることです。

強制執行とは、裁判所が支払い義務者の財産や給与債権などを差し押さえて、強制的に養育費などを取り立てる手続きです。
強制執行をすることで、たとえ相手が支払う気をなくしていても、約束どおりに養育費などを受け取ることが可能となります。

しかし、離婚協議書を公正証書としていなければ、たとえ滞納が生じたとしてもすぐに強制執行を申し立てることができません。
この場合には、強制の前に、合意がある場合は訴訟や支払督促、合意ができていない場合は調停や審判などを行い、相手に法的な支払い義務があることを明確にすることが必要です。
その後、ようやく強制執行手続きが可能となります。

一方、離婚協議書を公正証書としておけば、万が一滞納が発生した場合、すぐに強制執行手続きを申し立てることが可能です。

また、強制執行で給与などを差し押さえれば、給与の支払元である職場に裁判所から通知がされるため、自ずとトラブルが職場に知られることとなります。
そのため、相手が職場にトラブルを知られたくないと考えることで、滞納の抑止力ともなるでしょう。

原本が公証役場に保管されるため紛失の心配がない

離婚協議書を公正証書で作成した場合、手元には正式な写しである「正本」や「謄本」が交付されます。
公正証書の原本は公証役場で保管されるため、万が一謄本などを紛失した場合であっても、再交付を受けることが可能です。

一方、公正証書としなかった場合の離婚協議書は、手元にある用紙自体が原本です。
そのため、紛失などをしてしまうリスクが高いといえるでしょう。

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離婚協議書を公正証書にする手順と流れ

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離婚協議書を公正証書とする場合、その手順と主な流れは次のとおりです。

離婚条件の協議をまとめる

公証役場へ出向く前に、離婚条件についての協議をまとめておきましょう。

公証役場は、あくまでも既に決まった内容を公正証書化する役所です。
たとえば、二人の間に入って意見を調整してくれたり離婚協議の内容についてアドバイスをくれたりするわけではありませんので注意しましょう。

当人同士で離婚条件がまとまらない場合には、公証役場へ行く前に、弁護士へご相談ください。

必要書類を準備する

離婚条件がまとまったら、必要書類を準備しましょう。
必要となる書類は、たとえば次のものなどです。

  1. 離婚に関する合意内容のメモ(箇条書きなどで構いません)
  2. 離婚する当事者の戸籍謄本
  3. 未成年の子どもがいる場合、子どもとの親子関係のわかる戸籍謄本(「2」の書類に子どもも載っていることが一般的です)
  4. 本人それぞれの印鑑登録証明書または運転免許証などの本人確認書類
  5. 財産分与の対象に不動産が含まれている場合には、その不動産の登記簿謄本と固定資産評価証明書
  6. 年金分割をする場合には、年金分割情報通知書と基礎年金番号のわかる年金手帳

必要書類は公正証書に記載する内容などによって異なるため、こちらはあくまでも参考としてご覧いただき、相談先の公証役場にあらかじめ確認することをおすすめします。

公証役場に事前相談をして文案を作成してもらう

必要書類が揃ったら、これらの書類を持って、まずは公証役場へ事前相談に出向きましょう。

公証役場は予約なしに出向くと、長時間待ったり、その日に公証人の空き時間がなく相談を受けられなかったりする可能性があります。
そのため、あらかじめ電話で予約をしてから出向きましょう。

相談時には、夫婦で合意した内容について公証人へ説明したり、必要書類を確認するなどします。

事前相談のあと、公証人が文案を作成してくれます。

予約をする

公証人が作成した文案が意図した内容と異なっていなければ、本作成日の予約をしましょう。

作成日には、原則として夫婦がともに公証役場へ出向く必要がありますので、双方の予定を確認のうえ予約してください。

予約当日に当事者が公証役場に出向く

予約当日に、夫婦がともに公証役場へ出向きます。

この日の必要書類については公証人から予約時に説明があるかと思いますので、指示に従って持参してください。
一般的には、本人確認に必要な運転免許証や印鑑証明書、実印などです。

離婚公正証書が作成できたら、正式な写しである正本や謄本が交付されますので、大切に保管しましょう。

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まとめ

離婚する人の88.3%が協議離婚で離婚をしています。
しかし、財産分与や年金分割、慰謝料や養育費について、後々のトラブルを避けるためには、口約束ではなく離婚協議書の作成をするのがおすすめです。

さらに、養育費の支払いなどの金銭債務を夫婦どちらか一方が履行しなかった場合に備えて、離婚協議書を「公正証書」にしておくことが重要です。
作成するには費用や手間がかかりますが、離婚時に作っておけば将来のトラブルを予防できます。

ただし、離婚協議書を作成していても、内容が不明確だったりするとトラブルが起こってしまうことがあります。
内容が明確でかつ法的に効力のある離婚協議書を作成するために、一度は、弁護士などに、離婚協議書の内容をチェックしてもらうことをおすすめします。

Authense法律事務所には、離婚問題にくわしい弁護士が多数在籍しております。
離婚協議書の作成や離婚に関する話し合いなどでお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。
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Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
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弁護士らで構成する離婚専任チーム

離婚問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
感情的になりがちな相手方との交渉を弁護士に任せることで、精神的なストレスから解放されますし、日常生活への影響も最小限に留められます。
相手方に有利な条件での示談や和解を要求された場合でも、弁護士に依頼することによって、過去の判例などを踏まえた対等な交渉ができます。
また、問題終結後に弁護士を通して合意書を作成しておけば、和解成立後に相手方から再び慰謝料を請求されたり、不貞行為の内容をSNSに投稿されたりといった事後的なトラブルを未然に防止することも可能になります。

私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
どうぞお気軽にご相談ください。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶応義塾大学法学部法律学科卒業、上智大学法科大学院修了。個人法務から企業法務まで多様な案件に従事する。特に、離婚、相続を中心とした個人法務については、請求側・被請求側、裁判手続利用の有無などを問わず、数多くの案件を解決してきた実績を有する。
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