コラム
公開 2020.03.12 更新 2023.11.16

結婚25年の熟年離婚、妻への財産分与はどうなる?

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離婚件数は平成14年をピークに減少傾向にありますが、平成29年の離婚件数は21万2,262件と平成初頭に比べるとまだまだ高い水準にあります。

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財産分与の種類は大きく分けて3つある

結婚25年~の熟年離婚の財産分与はどうする?

一言に財産分与といっても、その種類は大きく分けて3つあります。
また、これに加えて、過去の未払い婚姻費用の清算という点についても考慮されることがあります。

離婚時の状況によって発生しないものもありますが、それぞれの財産分与の特徴についてまとめました。

夫婦が築いてきた共有財産を分ける「清算的財産分与」

一般的に離婚の財産分与といえば清算的財産分与を意味します。
清算的財産分与とは、結婚期間中に夫婦が築いてきた共有財産を分ける財産分与のことです。

ここでいう共有財産とは預貯金や有価証券のほか、マイホームなどの不動産や自家用車、家財道具、貴金属、絵画、骨董品、さらには生命保険や学資保険なども含まれます。

たとえ短期間であっても、ともに生活してきた間には何らかの財産を築いているはずですので、清算的財産分与は離婚する夫婦のほとんどが行う財産分与となります。

離婚後に生活が苦しくなる人をフォローする「扶養的財産分与」

離婚によって夫婦のどちらかが経済的に苦しくなる場合に、経済力のあるほうが相手の生活費を補助するために行うのが扶養的財産分与です。

たとえば長年専業主婦ですぐに定職に就くのが難しい場合や、乳幼児がいて仕事をするのが困難な場合、あるいは病気で勤労するのが難しいといったケースでは扶養的財産分与を離婚の条件に含められます。

扶養的財産分与の額は、協議離婚であれば夫婦間で話し合って決めることが一般的です。
ただ、扶養的財産分与はあくまで補助的なものですので、結婚期間中と同じくらいの水準を維持する必要はないと考えられています。

協議によって財産分与の額を決めた場合はこの限りではありませんが、調停で取り決める場合は、この側面が考慮されるとしても、結婚期間中より低い生活水準をベースにした額になると予測されます。

清算的財産分与はその性質上、離婚と同時に双方が一括で受け取るケースがほとんどですが、扶養的財産分与は生活維持を目的としたものなので、毎月一定の額を一定期間にわたって受け取るという方法を採られることもあります。

精神的苦痛を和らげるために行われる「慰謝料的財産分与」

慰謝料的財産分与とは、名前のとおり、慰謝料の性質を持つ財産分与のことです。
たとえば離婚の原因が夫の不貞や借金、DVなどにある場合、妻が結婚期間中に受けた精神的苦痛を和らげるために慰謝料的財産分与を求められます。

一般的な慰謝料と違う点は、金銭以外の財産分与も可能であることです。
たとえば夫の不貞行為が原因で離婚する場合、慰謝料を現金で受け取りつつ、慰謝料的財産分与でマイホームの所有権を要求することも可能です。

過去の婚姻費用の清算にともなう財産分与

婚姻中の夫婦は、同居・別居の有無にかかわらず、婚姻費用を分担する義務を負います。
そのため、結婚期間中に何らかの理由で婚姻費用を分担していない時期があった場合、上記の3つの性質を持つ財産分与に加え、財産分与という形で過去の婚姻費用の清算を行うことが可能です。

たとえば経済力があるにも関わらず、夫が長年生活費を家計に入れなかった場合や、別居期間中の生活費を負担しなかった場合、未払い分の婚姻費用を財産分与として請求できます。

なお、婚姻費用は原則として収入の多いほうが低いほうに対して支払うものです。
夫よりも妻のほうが高収入である場合は、婚姻費用の清算として妻への財産分与は行われないこともあることに注意しましょう。

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財産分与の額は婚姻期間が長いほど大きくなる

財産分与額は婚姻期間が長いほど大きくなる!

財産分与の額は夫婦2人で築いた財産や扶養的財産分与の有無などによって異なりますが、一般的に婚姻期間が長くなるほど大きくなるとされています。

平成29年の司法統計年報によると、婚姻期間が6ヵ月未満~5年未満までは財産分与の額が100万円以下の割合が4割を超えています。[注2]
一方、婚姻期間が20年以上経過した場合の財産分与の額は400万円を超えるケースが4割以上を占めています。[注2]

婚姻関係25年以上の場合に至っては、1,000万円を超えるケースが2割以上を占めており、婚姻期間が長くなるほど財産分与額も大きくなることが伺えます。[注2]

これは離婚時の財産分与の大半を占める清算的財産分与の額が、結婚期間中に築いた夫婦の財産に比例しているためです。
一般的に、夫婦の共有財産は結婚期間の年数を経るごとに積み重なっていくものなので、25年以上連れ添った夫婦の財産分与額が大きくなるのは自然なことでしょう。

また、日本では年功序列を基本としている企業が多いため、年齢が上がるごとに収入も増えていきます。
収入が増えれば夫婦の財産や資産も自然と増えていくので、結婚25年目の財産分与額も結婚当初より多額になります。

さらに結婚期間が長くなると土地や家を購入する世帯が増加することも財産分与額が大きくなる理由の1つに数えられます。

なお、夫が世帯主である場合、土地や家が夫名義になっているケースがほとんどですが、財産分与において名義は問題になりません。
結婚期間中に自分たちでマイホームを建てた場合は、たとえ土地・家が夫名義になっていたとしても財産分与の対象となります。

その場合、家や土地を処分して現金で分けるのが一般的ですが、どちらか一方がそのまま家に住み続ける場合は、土地と家の価額相当の財産を相手に分与することになります。

[注2] 裁判所:平成29年司法統計年報 3 家事編
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/032/010032.pdf

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専業主婦であっても財産分与の額が減る心配はない

清算的財産分与の対象となるのは「結婚期間中に夫婦2人で築いた財産」と聞くと、収入のない専業主婦はしばしば「自分の取り分なんてないのでは?」と思い込んでしまいがちです。

実際、財産分与の話し合いにあたって夫側から「俺の収入で貯めたり買ったりした財産なんだから、おまえがもらう権利はない」などと言われるケースもあるようです。

確かに収入を得ていたのは夫かもしれませんが、夫が外で仕事に専念できるように家を切り盛りしたり、子育てに奮闘したりしてきたのはほかならぬ妻です。
結婚期間中の収入は妻が夫を支えることによって得られた財産ですので、専業主婦であっても引け目を感じる必要はありません。
財産分与の割合は共働き夫婦のケースと同様に考えましょう。

さらに専業主婦の場合、扶養的財産分与が認められる場合もあります。

時効などに注意!気を付けるべき財産分与の落とし穴

財産分与によって得られる資産は第二の人生を歩み始めるにあたって必要不可欠なものです。
離婚後に後悔しないためにも、財産分与を行うにあたっては以下の点に注意しましょう。

財産分与の対象になるのは夫婦の共有財産のみ

離婚時に財産分与の対象となるのは、あくまで結婚期間中に築いた夫婦の共有財産のみで、結婚前に所有していた各々の財産などについては分与の対象外となります。

たとえば結婚前に貯めていたお金や、独身の頃に購入した車などは結婚後に築いた財産ではないので、分与の対象にはなりません。

ほかにも、個人的に購入した有価証券や、自分の親から相続した財産、個人的な借金なども夫婦の共有財産とはみなされないため、財産分与の資産には含まれません。

もし独身の頃に貯めたお金や親から受け継いだ財産が多額だった場合、何も知らずにすべてひっくるめて財産分与してしまうと損をしてしまう可能性があるので要注意です。

財産分与は離婚成立時から2年で時効になる

財産分与の権利は離婚が成立してから丸2年と定められています。
後から相手の隠し口座が発覚したとしても、離婚から2年が経過してしまうと財産分与を求めることはできないので注意が必要です。

逆に一度財産分与を行った後でも、離婚から2年以内であれば後から見つかった隠し口座の分について財産分与を請求することが可能です。
ただ、一度財産分与の話し合いを済ませた後だと、話し合いを済ませる際に、その他の財産についてはお互いこれ以上請求しない、という合意(これを「清算条項」などといいます。)をしていることがありますので、弁護士に相談して、詳しい事情を話した方がよいでしょう。

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まとめ

財産分与は夫と離婚し、新しい生活を始める妻にとって大切な資産です。たとえ専業主婦であっても、夫婦で築いてきた財産の半分を受け取る権利がありますので、離婚時には平等に財産分与を行うようにしましょう。

特に結婚25年と婚姻期間が長かった場合は財産分与の額も大きくなりますので、きちんと話し合って分与することが大切です。

ただ、分与する財産が多くなるほど計算も複雑になりますし、夫婦間でトラブルが起こる火種にもなります。一度こじれてしまうと協議が難しくなってしまうので、離婚する際は離婚案件を多く取り扱う弁護士に相談することをおすすめします。

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Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
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離婚問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
感情的になりがちな相手方との交渉を弁護士に任せることで、精神的なストレスから解放されますし、日常生活への影響も最小限に留められます。
相手方に有利な条件での示談や和解を要求された場合でも、弁護士に依頼することによって、過去の判例などを踏まえた対等な交渉ができます。
また、問題終結後に弁護士を通して合意書を作成しておけば、和解成立後に相手方から再び慰謝料を請求されたり、不貞行為の内容をSNSに投稿されたりといった事後的なトラブルを未然に防止することも可能になります。

私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
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