コラム

公開 2024.01.11 更新 2024.03.06

離婚での財産分与は専業主婦でも受け取れる?いくらになる?弁護士がわかりやすく解説

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離婚に際しては、財産分与がなされることが一般的です。

財産分与は、外部からの収入を得ていなかった専業主婦(主夫)であっても受け取ることができるのでしょうか?
また、どのような財産が財産分与の対象となり、どのような財産が対象外なのでしょうか?

今回は、財産分与の概要や専業主婦(主夫)が財産分与を受けられるかどうかについて、弁護士が詳しく解説します。

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財産分与とは

財産分与とは、離婚に伴って夫婦の共有財産を清算することです。

婚姻生活を送る中で、夫婦の共有財産は積み上がります。
しかし、積み上がった財産の多くが夫婦のうち外部からの収入を得ている者に集中しており、専業主婦(主夫)であった側の名義の財産がほとんどないケースも少なくありません。
たとえば、妻が長年専業主婦で夫が外部からの収入を得ていた場合、自宅などの土地建物、預貯金などがほとんど夫名義であり、妻名義の財産がわずかというケースです。

離婚の際に、夫婦の一方が外部から収入を得て財産を築くことができたのは、夫婦が協力したからであり、財産形成に対する寄与や貢献の程度は、原則として夫婦平等であると考えます。
そこで、離婚の際は、名義を問わず、婚姻期間中に築かれた対象財産を全体として2等分することとしています。

これを「財産分与」といいます。

解説をわかりやすくするため、これ以降、「夫が長年外部から収入を得ており財産のほとんどが夫名義となっており、妻が長年専業主婦であった」ことを前提として解説します。

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離婚時の財産分与は専業主婦でも受けられる?

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離婚時の財産分与は、専業主婦であっても受けられることが原則です。
先ほど解説したように、夫が外部からまとまった収入を得て財産を築くことができたのは、専業主婦である妻の内助の功もあってのことと考えられるためです。

ただし、財産分与は国などが強制的に相手から取り立ててくれるものではなく、まずは夫婦間で協議をして合意を図らなければなりません。
ここで、離婚の際に、「財産分与は一切受け取らない」などの内容で合意をしてしまった場合は、その合意どおり財産分与を受けることができなくなります。
夫婦間で合意がまとまらない場合は調停(裁判所で行う話し合い)や裁判を行いますが、裁判では財産分与が認められることが一般的です。

このように、財産分与は「何もしなくても自動的にもらえる」とうことではなく、自ら主張して請求することが必要です。

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専業主婦が離婚で財産分与を受けられる割合

離婚に伴い、専業主婦が財産分与を受けられる割合はどの程度なのでしょうか?
ここでは、原則と例外をまとめて解説します。

財産分与の割合は2分の1が原則

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財産分与の割合は、2分の1とされるのが原則です。
そのため、婚姻期間中に積み上がった財産がすべて夫の名義であり、専業主婦であった妻名義の財産が一切ない場合は、婚姻期間中に積み上がった夫名義の財産の2分の1相当額が、離婚に際して夫から妻へと引き渡されることとなります。

財産分与の割合が2分の1とならないケース

例外的に、財産分与の割合が2分の1とならないケースも存在します。
ここでは、例外的なケースを2つ紹介します。

ただし、ここで紹介しているのはあくまでも典型的な例であり、明確に線引き できるものではありません。
そのため、実際に離婚をする際に財産分与の割合で迷ったら、相手と合意をしてしまう前に弁護士へご相談ください。

夫自身の能力や努力の影響が大きいと考えられる場合

1つ目は、夫が資格や能力を有していることで高い収入を得られた場合など、夫の財産形成について夫自身の能力や努力の影響が大きいと考えられるケースです。
この場合は、財産分与の割合が2分の1より少なくなる可能性が高くなります。

財産形成に特有財産の寄与が大きかったと考えられる場合
2つ目は、婚姻生活とは関係のない「特有財産」(後述する相続財産など)があるケースです。
特有財産は原則として財産分与の対象外となります。そのため、婚姻後の財産形成に特有財産の寄与が大きい場合(相続した不動産の賃料収入があった、その不動産の売却益を得た、など)は、財産分与の割合が修正されることがあります。

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財産分与の対象となる財産

財産分与の対象となる財産は、夫婦の「共有財産」です。
ここでいう「共有財産」とは、名義が共有ということではなく、婚姻期間中に夫婦の協力によって形成・維持された財産を指します。

夫婦の財産のうち、婚姻中に形成した財産はこの共有財産であると推定されます。
たとえば、夫名義の預貯金のほか、夫がローンを組んで購入した不動産、家財などがこれに該当します。

しかし、実際にどの財産が共有財産に該当するか検討することは容易ではありません。
そのため、次で解説する「財産分与の対象とならない財産以外の財産」が原則として財産分与の対象になると考えた方が理解しやすいでしょう。
自分で判断することが難しい場合は、相手と離婚へ向けた話し合いを始める前に、離婚問題に詳しい弁護士へご相談ください。

財産分与の対象とならない財産

財産分与の対象とならない財産は「特有財産」です。

特有財産については、民法で「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする」と定義されています(民法762条)。
具体的には、次の財産は財産分与の対象とはなりません。

  • 婚姻前に築いた財産(例:婚姻前に貯めた定期預金、婚姻前に購入した不動産や有価証券)
  • 婚姻中自己の名で得た財産(例:婚姻中に親からの相続で受け取った不動産)

ただし、実際は相続で受け取った金銭が給与の入金口座でまとめて管理されているなど、共有財産であるか特有財産であるかの区分が難しいことも少なくないでしょう。
その際は、離婚問題に詳しい弁護士へご相談ください。

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離婚で専業主婦が財産分与を受ける際のポイント

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離婚で専業主婦が財産分与を受ける場合、どのような点に注意するとよいのでしょうか?
ここでは、離婚で専業主婦が財産分与を受ける際のポイントを3つ解説します。

夫の財産を調べておく

1つ目は、夫の財産を調べておくことです。

たとえば、夫が所有している不動産の情報のほか、金融機関の口座情報、取引のある証券会社の口座情報などを確認しておくとよいでしょう。
ほかにも夫名義となっている財産がある場合は、可能な限り漏れなく確認しておくようにしてください。

財産の調査は、離婚に向けた話し合いを始めたり別居をしたりする前に行うことが鉄則です。
なぜなら、先に離婚を切り出してしまうと、財産分与の額を減らすために夫が財産を隠すおそれがあるためです。

また、先走って別居してしまうと、夫の財産を調べることが困難となってしまいます。
別居後に夫が住む家に無断で侵入すると、警察を呼ばれるなどしてトラブルとなる可能性があるためです。

なお、先に離婚を切り出すなどして夫に財産を隠されてしまった場合であっても、諦める必要はありません。
この場合は、弁護士へ依頼したうえで、裁判所に調査嘱託を申し立てたりするなど、財産を見つけられる可能性はあるためです。

あらかじめ弁護士へ相談する

2つ目は、離婚問題を専門に取り扱う弁護士にあらかじめ相談することです。
離婚や財産分与を自分一人で進めようとすると、手順を誤ったり相手の提案に不用意に乗ってしまったりして、不利となる可能性があります。

たとえば、先ほど解説したように、先に離婚を切り出してしまうと財産を隠されるおそれがあります。
また、夫の不貞行為を理由に離婚しようとしている場合は離婚を切り出すことで夫が慎重になり、不貞行為の決定的な証拠が掴みづらくなるかもしれません。
ほかにも、夫が積極的に「財産分与として〇円払う」などと申し出てこれに書面で合意したところ、本来はさらに多くの財産分与を受けられたことに気付く場合もあるでしょう。

このように、離婚へ向けた話し合いは、一つ間違えると大きく損をする可能性があります。
そのため、相手に対して離婚を切り出す前に弁護士へ相談し、弁護士のサポートを受けつつ話し合いを進めるようにしましょう。

離婚後2年を経過すると財産分与の請求権が消滅する

離婚を急ぎたい事情があったり離婚をする際に財産分与について知らなかったりして、財産分与について何ら取り決めをしないまま離婚してしまうこともあるでしょう。
この場合は、離婚後の財産分与を請求することも可能です。
すでに離婚が成立しているものの、財産分与をしたいとお考えの際は早期に弁護士へご相談ください。

ただし、財産分与は離婚時から2年が経過すると請求できなくなる ため、これより早く請求しなくてはなりません(同768条2項)。
また、離婚時に相手と書面を取り交わしており、これに清算条項(今後相手に対して財産分与や慰謝料などを一切請求しない旨の規程)が含まれている場合は、離婚から2年が経過していなくても請求が困難となる可能性が高いといえます。

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離婚で財産分与の他に専業主婦が受け取れる可能性のあるお金

離婚では、財産分与以外にも専業主婦が受け取れる可能性のあるお金があります。
離婚に際して相手に対して請求できる可能性のある給付は次のとおりです。

  • 養育費
  • 慰謝料
  • 年金分割

相手に請求できるお金を知っておき、後悔のない離婚を目指しましょう。

また、養育費など継続的に金銭のやり取りが発生する場合、任意の書面を取り交わすのではなく、離婚協議書を公正証書としておくことをおすすめします。
離婚協議書を公正証書としておくことで、夫がその後支払いを滞納した場合において、財産や給与の差押え手続きがスムーズとなるためです。
夫にとっても「もし滞納したら給与などが差し押さえられる」との意識が働き、滞納を抑止する効果も期待できます。

養育費

養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用です。
離婚をする夫婦に未成年の子どもがいる場合は、離婚に際して親権者を決めます。
養育費は、親権を持たなかった側の親から親権を持った側の親に対して、「毎月〇日月〇円支払う。」など定期的に支払う形をとることが一般的です。

専業主婦が離婚によって未成年の子どもの親権を獲得する場合は、夫に対して養育費を請求することができます。
親権を持たなかった親も引き続きその子どもの親であることには変わりなく、養育費の支払いは親としての義務であり、子どもにとっての権利です。
未成年の子どもがいる状態で離婚する際は、子どもが十分な監護や教育を受けられるよう、しっかりと養育費に関する取り決めを行いましょう。

慰謝料

慰謝料とは、不法行為によって被害者が精神的苦痛を受けた場合に、被害者が受けた精神的苦痛を補てんする損害賠償のことをいいます。
離婚においても、夫または妻の一方が離婚原因を作って離婚する場合、その離婚原因がなければ離婚しないで済んだ他方に対し、離婚せざるを得なくなったことに対する慰謝料を支払う必要があります。
もっとも、離婚をしたからといって必ずしも慰謝料の請求が発生するわけではなく、性格の不一致などによる離婚では原則として慰謝料を請求することはできません。

一方、離婚原因が夫の不貞行為やDVなどである場合は、妻は夫に対し、慰謝料を請求できる可能性が高くなります。
慰謝料の相場は離婚原因によって異なるため、弁護士に依頼してご相談ください。

なお、慰謝料は必ずしも「夫が妻に払う」ものでもなければ、「収入の高い側が低い側に支払う」ものでもありません。
離婚原因が専業主婦である妻の不貞行為によるものである場合は、妻が夫に慰謝料を支払うべきとされることもあるため、誤解のないよう注意してください。

年金分割

年金分割とは、夫婦の一方が働き、厚生年金保険等の被用者年金の被保険者等となっている夫婦が離婚した場合に、婚姻期間に働いていなかった他方が、一方の標準報酬等を自身の標準報酬等にすることができる、という制度です。
「標準報酬等」とは、給与及び賞与額の平均額に、一定の係数と被保険者であった期間を乗じて算出したものです。

夫が外部からの収入を得て妻が長年専業主婦であった場合、妻は将来受給できる年金額が少なくなる場合があります。
そこで、離婚時に年金分割を行うことで、妻が将来受給できる年金が増える効果を得られます。

年金分割には、厚生年金保険の被扶養配偶者から請求すれば当然に2分の1で分割できる「3号分割」のほか、夫婦間の合意によって分割割合を決められる「合意分割」があります。
合意分割を希望する場合はあらかじめ制度内容を理解のうえ、離婚にあたって合意を得ておきましょう。

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まとめ

離婚時の財産分与は、専業主婦であっても受け取ることができます。
しかし、財産分与は自動的に給付されるようなものではなく、自ら相手に請求しなければなりません。

話し合いにあたって不利な言動をしてしまったり、よくわからないままに相手の言い値を飲んでしまったりすることのないよう、相手に離婚を切り出す前に弁護士へご相談ください。

Authense法律事務所では離婚問題のサポートに力を入れており、これまでも多くの離婚問題を解決してきました。
専業主婦が財産分与を受けたいと考えている場合や離婚を有利に進めたい場合は、Authense法律事務所までご相談ください。

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
女性弁護士が数多く在籍しており、面談予約時に「弁護士性別」をご希望いただくことも可能です。

弁護士らで構成する離婚専任チーム

離婚問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
感情的になりがちな相手方との交渉を弁護士に任せることで、精神的なストレスから解放されますし、日常生活への影響も最小限に留められます。
相手方に有利な条件での示談や和解を要求された場合でも、弁護士に依頼することによって、過去の判例などを踏まえた対等な交渉ができます。
また、問題終結後に弁護士を通して合意書を作成しておけば、和解成立後に相手方から再び慰謝料を請求されたり、不貞行為の内容をSNSに投稿されたりといった事後的なトラブルを未然に防止することも可能になります。

私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
どうぞお気軽にご相談ください。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(神奈川県弁護士会)
神奈川県弁護士会所属。同志社大学法学部法律学科卒業、同志社大学法科大学院修了。離婚・相続といった家事事件や、不動産法務、企業法務など幅広く取り扱うほか、労働問題にも注力。弁護士として少年の更生の一助となることを志向しており、少年事件にも意欲的である。法的トラブルを客観的に捉えた的確なアドバイスの提供を得意としている。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

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