コラム

公開 2024.02.07 更新 2024.03.06

離婚の財産分与は退職金も対象?計算方法・注意点を弁護士がわかりやすく解説

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離婚時には、財産分与を行うことが一般的です。

財産分与の対象には、退職金も含まれるのでしょうか?
また、退職金が財産分与の対象となる場合、財産分与で受け取れる退職金はどのように計算するのでしょうか?

今回は、退職金が財産分与の対象となるかどうか、財産分与にあたって退職金以外に知っておくべきポイントなどについて弁護士が詳しく解説します。

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財産分与とは

財産分与とは、離婚に際して夫婦の共有財産を原則として2分の1ずつに分けることです。

夫婦の一方(仮に、夫)が主に外部からの収入を得ており、もう一方(仮に、妻)が主に家事や育児などを担ってきた場合は、家の財産のほとんどが夫名義であり、妻名義の財産がほとんどないことも少なくありません。
しかし、夫が外部から収入を得ることができたのは、妻による内助の功があったためであると考えられます。

そこで、離婚時には財産の名義を問わず、夫婦の共有財産を原則として2分の1ずつに分けることが原則です。

財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に築かれた財産のすべてです。
ただし、たとえ婚姻期間中に得た財産であっても、夫婦の協力によることなく取得した財産(親からの相続で受け取った財産など)は、「特有財産」として、財産分与の対象となりません。

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【パターン別】退職金は財産分与の対象になる?

退職金はまとまった額であることも多く、これが財産分与の対象となるかどうかによって財産分与の額が大きく異なることとなるケースも少なくありません。
ここでは、退職金は財産分与の対象となるのか、ケースごとに解説します。

退職金がすでに支払われている場合

退職金がすでに支払われている場合は、財産分与の対象となることが原則です。
ただし、支給された退職金がすでに使われて残っていない場合は、財産分与の対象とはなりません。
ないものを分けることはできないためです。

とはいえ、退職金がなくなったことが相手の浪費によるものなどである場合は、他の財産を多く分与するなどして調整することがあります。

退職金がまだ支払われていないものの支給がほぼ確実と見込まれる場合

退職金がまだ支払われていないものの、今後退職金が支給されることがほぼ確実である場合は、財産分与の対象になる可能性が高くなります。
退職金が支給されることが確実であるといえるかどうかは、次の事項などを踏まえて個別に判断されます。

  • 勤務先の就業規則や雇用契約書の内容:既定の有無や、算定方法が明確であるかどうかなど
  • 勤務先である会社の規模:倒産すれば支給を受けられないため、考慮対象となる

このように、未支給の退職金を財産分与の対象として考慮できるかどうかはケースバイケースです。
自分で判断することは容易ではないため、弁護士へご相談ください。

退職金がまだ支払われておらず将来の支給見込みも不確実である場合

離婚時点で退職金がまだ支給されておらず、将来の支給見込みも不確実である場合は、退職金は原則として財産分与の対象として含まれません。

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財産分与で受け取れる退職金の計算方法

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退職金が財産分与の対象となる場合、財産分与で授受される退職金の額はどのように算定するのでしょうか?
ここでは、財産分与で授受される退職金の計算方法の概要について解説します。
ただし、実際の計算方法は状況によって異なる可能性があるため、具体的なケースにおいては弁護士へ別途ご相談ください。

退職金が既に支払われている場合

退職金が既に支払われている場合、財産分与の対象となる退職金は次の式で算定します。

  • 財産分与の対象額=支給された退職金の額×在職期間中の婚姻期間(別居期間を除く)÷その会社に在職していた期間

財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦の協力によって築いた財産のみです。
そのため、この式では婚姻前の期間分に対応する退職金や、別居期間中に対応する退職金を対象から除外しています。

その会社に勤務していた間ずっと婚姻し同居していたのであれば、計算をするまでもなく退職金の全額が財産分与の対象です。

財産分与として授受される額は、これに財産分与の割合(原則として2分の1)を乗じた額となります。

退職金がまだ支払われていない場合

退職金がまだ支給されていない場合において、財産分与を受ける方法と、対象となる退職金を計算する方法には次の3つの方法があります。

  • 離婚時に分与する方法
  • 将来の退職金受給時に分与する方法
  • 財産分与全体の金額で調整する方法

ここでは、それぞれの概要を解説します。

離婚時に分与する方法

1つ目は、将来支給される見込みである退職金の額を算定し、離婚時に分与する方法です。

この方法の最大のメリットは、離婚時に財産分与を受けられるため、早期の解決が図れることです。
一方で、将来受け取る退職金額は予想額でしかないため、実際に退職金が支給された時点で財産分与を受ける場合と比較して、分与額が少なくなる傾向にあります。

この方法による財産分与対象額の計算式は、次のとおりです。

  • 財産分与の対象額=離婚時における退職金相当額×在職期間中の婚姻期間(別居期間を除く)÷その会社に在職していた期間

実際に財産分与として授受される額は、計算結果に財産分与の割合(原則として2分の1)を乗じた額となります。

計算式は、先ほど紹介した既に退職金が支給されている場合とほとんど同じであり、計算のベースが「離婚時における退職金相当額」である点だけが異なっています。
この「離婚時における退職金相当額」は、次のいずれかの方法で算定します。

  • 現時点で退職したと仮定した場合に受け取れる退職金額とする方法
  • 将来の退職金受給額から中間利息(利息相当額)を控除する方法

これらを自分で正しく算定することは容易ではないため、弁護士へご相談ください。

将来の退職金受給時に分与する方法

2つ目は、将来実際に退職金が支給された時点で財産分与を受ける方法です。

この方法のメリットは、実際の退職金額をベースとして財産分与を受け取れるため、離婚時に分与を受けるよりも金額が増える可能性があることです。
一方で、離婚をしてから財産分与を受けるまでに時間がかかることや、将来相手がきちんと支払ってくれるかどうか不安が残りやすいことがデメリットとなります。

そのため、この方法を選択する場合は、離婚協議書を公正証書としておくことをおすすめします。

この方法による財産分与対象額の計算式は次のとおりであり、離婚時に既に退職金を受け取っている場合と同じです。

  • 財産分与の対象額=支給された退職金の額×在職期間中の婚姻期間(別居期間を除く)÷その会社に在職していた期間

財産分与として授受される額は、この計算結果に財産分与の割合(原則として2分の1)を乗じた額となります。

財産分与全体の金額で調整する方法

3つ目は、他の財産で財産分与の額を調整する方法です。
これは、将来受け取る退職金の額を詳細に算定する代わりに、他の財産を多めに分与する方法です。

この方法には、明確な計算方法はありません。
そのため、夫婦間で折り合いがつくのであれば、この方法がもっとも柔軟に対応しやすいといえます。

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退職金のほかに財産分与で知っておくべきこと

財産分与に際して、退職金以外に知っておくべき主なポイントを2つ紹介します。

企業年金も財産分与の対象となり得る

企業年金も、財産分与の対象となり得ます。
企業年金とは、退職金を一括で受け取るのではなく、分割して定期的に受け取る制度です。

退職金ではなく企業年金として受け取ったからといって、財産分与の対象から外れるわけではなく、企業年金も財産分与の対象となる可能性があります。

ただし、企業年金は亡くなるまでずっと支給される終身とされていることもあり、財産分与の対象額を正確に算定することは容易ではありません。
そのため、企業年金を財産分与の対象としたい場合は、あらかじめ弁護士へご相談ください。

年金分割ができる可能性がある

財産分与とは異なる制度であるものの、離婚に際しては年金分割が受けられる可能性があります。
年金分割とは、離婚する夫婦の婚姻期間中における保険料納付額に対応する厚生年金を分割し、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。

たとえば、夫が会社員として長年多くの収入を得ており、妻が専業主婦やアルバイトなどであり収入が少なかった場合、特に何もしなければこれが将来の年金額にも影響します。
つまり、夫はそれなりの額の年金を受給できる一方で、収入が少なかった妻は年金額も少なくなります。

そこで、年金分割をすると、婚姻期間中における夫の厚生年金記録が妻に分けられます。
これにより、夫が受け取る年金は本来よりも少なくなる一方で、妻が受け取る年金が増えることとなります。

年金分割には、次の2つの制度があります。

  • 3号分割:会社員の妻である専業主婦など国民年金第3号被保険者であった者からの請求により、年金を2分の1ずつに分割する方法
  • 合意分割:夫婦間の合意や裁判手続きで決まった割合で分割する方法

このうち、3号分割は離婚をした日の翌日から2年以内に年金事務所などで手続きするだけでよく、相手の同意などは必要ありません。
ただし、3号分割の対象は、2008年4月以降の年金積立分に限られます。
一方、合意分割は原則として相手の合意が必要となります。

退職金の財産分与を弁護士に相談するメリット

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退職金の財産分与については、弁護士へご相談ください。
ここでは、弁護士へ相談する主なメリットを4つ解説します。

自分で法令や判例を確認する必要がなくなる

弁護士へ相談することで、自分で法令などを調べる必要はなくなります。

退職金を財産分与の対象としたい場合、自分で法令や判例を確認しなければなりません。
あらかじめ知識を得ておかないと、相手から反論された場合に対応することが難しくなるためです。

しかし、ただでさえ行うべきことの多い離婚の前後において、自分で法令や判例を調べて理解することは容易ではないでしょう。

話し合いを有利に進めやすくなる

弁護士へ相談してサポートを依頼することで、話し合いを有利に進めやすくなります。
離婚問題に詳しい弁護士は財産分与についても多くの知識を持っているほか、事務所全体でも事例が蓄積しているためです。

また、弁護士は交渉のプロフェッショナルでもあります。
このような理由から、調停や裁判までもつれ込んだ場合の結論までを意識しつつ交渉を進めることが可能となり、有利な結果を得られる可能性が高くなります。

相手と直接交渉する必要がなくなる

弁護士へ依頼することで、相手と直接交渉する必要性から解放されます。

離婚へ向けた話し合いを相手と直接行うことに、大きなストレスを感じる人も少なくないでしょう。
また、直接交渉をすると相手に丸め込まれてしまったり相手の勢いに押されてしまったりして、不利な内容で合意してしまうリスクも高くなります。

弁護士へ依頼すれば、原則として相手との交渉を弁護士が代理してくれるため、財産分与などについて相手と直接交渉する必要がなくなります。

調停や訴訟の手続きも任せることができる

弁護士へ依頼すると、調停や訴訟の手続きも任せることができるため安心です。

退職金を財産分与の対象とするかなどについて相手との交渉がまとまらない場合は、裁判所での話し合いである「調停」や、裁判所に結論を下してもらう「訴訟」へと移行することになります。
たとえ調停や訴訟へもつれ込んだとしても、弁護士へ依頼している場合は慌てることなく、適切な対応をしやすくなります。

弁護士は調停や訴訟で必要な証拠の収集などについてもアドバイスをくれるため、有利な結論を得やすくなる効果も期待できます。

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まとめ

退職金がすでに支給されている場合は、これも財産分与の対象となることが原則です。
離婚時点で退職金が未支給であっても、将来退職金を受け取れる確実性が高い場合は、将来の退職金を財産分与の対象とできる可能性もあります。

ただし、退職金が未支給である場合において、将来に支給が確実といえるかどうかはケースバイケースであり、自分で判断することは容易ではありません。
そのため、退職金を財産分与の対象としたい場合などは、あらかじめ弁護士へご相談ください。

Authense法律事務所には離婚問題に強い弁護士が多数在籍しており、退職金と財産分与についても多くの事例が蓄積しています。
退職金を含めて財産分与を請求したい場合など財産分与を有利に進めたい場合、その他離婚に関する条件交渉がまとまらずお困りの場合などには、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

離婚に関するご相談は、初回60分間無料でお受けしています。

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
女性弁護士が数多く在籍しており、面談予約時に「弁護士性別」をご希望いただくことも可能です。

弁護士らで構成する離婚専任チーム

離婚問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
感情的になりがちな相手方との交渉を弁護士に任せることで、精神的なストレスから解放されますし、日常生活への影響も最小限に留められます。
相手方に有利な条件での示談や和解を要求された場合でも、弁護士に依頼することによって、過去の判例などを踏まえた対等な交渉ができます。
また、問題終結後に弁護士を通して合意書を作成しておけば、和解成立後に相手方から再び慰謝料を請求されたり、不貞行為の内容をSNSに投稿されたりといった事後的なトラブルを未然に防止することも可能になります。

私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
どうぞお気軽にご相談ください。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶応義塾大学法学部法律学科卒業、上智大学法科大学院修了。個人法務から企業法務まで多様な案件に従事する。特に、離婚、相続を中心とした個人法務については、請求側・被請求側、裁判手続利用の有無などを問わず、数多くの案件を解決してきた実績を有する。
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