コラム
公開 2023.12.15 更新 2024.08.01

お互いが実家で別居婚するメリット・デメリットは?手続きと注意点を弁護士が解説

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さまざまな事情から、別居婚を選択する夫婦も存在します。
お互いが実家に住みつつ別居婚を始めるにあたっては、どのような手続きが必要となるのでしょうか?

また、実家に住みつつ別居婚をすることには、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
今回は、お互いが実家に住みつつ行う別居婚について弁護士の視点からくわしく解説します。

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別居婚とは

別居婚について、法律の定義はありません。
一般的には、婚姻関係となっても同居をしないことを選択する婚姻の形を指すことが多いでしょう。

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単身赴任との違い

別居をしつつ婚姻生活を送るという点では、単身赴任も共通しています。
また、一時的に両親の介護などで夫婦が別居する場合もあるでしょう。

しかし、単身赴任や親の介護など、必要に迫られて行う別居を「別居婚」と呼ぶことは少ないようです。
別居婚には、「あえて別居を選択して行っている」とのニュアンスが含まれているものと考えられます。

「卒婚」との違い

別居婚と似て非なるものに、「卒婚」があります。

卒婚とは「卒婚のススメ」という書籍で提唱された造語であり、法律上の定義はありません。
一般的には、夫婦が婚姻関係を維持したままお互いに自由を認め合い、干渉し過ぎずパートナーシップを築く夫婦の形を意味することが多いようです。

卒婚は必ずしも別居をともなうものではなく、同居しながら卒婚をするパターンもあり得ます。
また、「卒婚」は、同居して婚姻関係を継続してきた夫婦に対して使われることが多く、「離婚届を提出せずにとる選択」というニュアンスが含まれているものといえるでしょう。
これに対し、「別居婚」は、婚姻関係を始める段階の夫婦に対して使われることが多いようです。

別居婚の主なパターン

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一口に「別居婚」といっても、別居婚の形は夫婦によってさまざまです。
主なパターンを4つ紹介します。

距離のある場所に居住してたまに会う

1つ目は、距離のある場所にそれぞれが居住しつつ、たまに会うパターンです。
お互いに異なる地で実現したいことがある場合などは、この方法をとることが多いでしょう。

同じマンションなど近所に住んで頻繁に会う

2つ目は、同じマンションやアパートなどいわゆる「スープの冷めない距離」に住みつつ、頻繁に会うパターンです。

週末のみ一緒に暮らす

3つ目は、平日は別居しつつ、週末のみ一緒に暮らすパターンです。
仕事が多忙であり帰宅が深夜になることが多い場合などに、会社の近くにもう1つ住まいを設けることなどが想定されます。

お互いが実家に住みつつ別居婚をする

4つ目は、お互いが実家に住みつつも別居婚をするパターンです。
これについては、次から詳しく解説を進めます。

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お互いが実家に住みつつ別居婚を始める手続き

夫婦がお互いの実家に住んだまま別居婚を始める場合、どのような手続きを踏めばよいのでしょうか?
ここでは、一般的に必要となる手続きを紹介します。

婚姻届を提出する

別居婚を始める場合に必須となる手続きは、婚姻届の提出のみです。
婚姻届が受理されると、晴れて夫婦して戸籍に記載されます。

なお、別居婚とはいえ婚姻をする以上、夫婦が同一の戸籍に掲載されることとなります。
そのため、別居婚であったとしても、夫婦が戸籍を分けることはできません。

一方で、お互いが実家に住む形での別居婚の場合は、住民登録上は別世帯となります。

扶養に入る場合は被扶養者(異動)届を提出する

一方の年収が一定の基準以下(原則として年間収入130万円未満)である場合、社会保険上、相手の扶養に入ることができます。
扶養に入る要件に同居であることなどは定められておらず、一定の条件を満たせば、別居婚であったとしても扶養に入ることが可能です。

配偶者を扶養に入れる場合は、異動が生じた日から5日以内に、勤務先などを通じて「被扶養者(異動)届」を提出します。
そのほか、配偶者を税法上の扶養に入れる場合は、勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出します。

必要に応じて勤務先に届出をする

必要に応じて、婚姻したことを勤務先に届け出ます。
届出をすることで企業によっては結婚祝金などが支給されることもあるため、確認しておくとよいでしょう。

住民票の異動は必要ない

お互いが実家に住んだままで別居婚をする場合は、住民票の異動をする必要はありません。
夫婦である以上「本籍地」は必ず同じとなる一方で、住民票上の住所をお互いに実家のままとすることは可能です。

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お互いが実家に住みつつ別居婚をするメリット

お互いが実家に住みつつ別居婚をすることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、主なメリットとして4つを解説します。

お互いが趣味や仕事に集中しやすい

夫婦が同居せずお互いの実家で暮らし続けることで、趣味や仕事に集中しやすくなります。

夫婦2人での生活を始めると、家事は2人で分担して行わなければなりません。
しかし、実家であれば両親のサポートを受けることが可能となります。

両親の介護がしやすい

両親が高齢であったり障がいを持っていたりする場合は、両親の介護をするために別居婚を選択することもあります。
婚姻をしても両親と同居を続けることで、親の介護がしやすくなります。

生活費の負担が少なくて済む

お互いが実家で暮らし続けることには、夫婦の経済的な負担が少なくなるメリットがあります。
夫婦の収入が少なく独立した夫婦生活を営むことが難しい場合において、ある程度金銭的な余裕ができるまでの間、実家で生活を続けることもあるでしょう。

新鮮な気持ちが保ちやすい

一般的に、夫婦が同居をするとお互いが生活の一部となり、相手に対して新鮮な気持ちを保つことは難しくなります。
一方で、婚姻届を提出しても同居をしないことで、新鮮な気持ちが保ちやすくなります。

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お互いが実家に住みながら別居婚を始めるデメリットと注意点

お互いが実家に住みながら別居婚を始めることには、デメリットや注意点も存在します。
別居婚を始める際は、これらのデメリットと注意点を十分に理解したうえで行う必要があるでしょう。
メリットのみを見て安易に別居婚を選択すると、後悔してしまう事態となりかねません。

お互いが実家に住みつつ別居婚を行う主なデメリットと注意点は、次の7点です。

会う頻度や連絡の頻度を決めておく

別居婚の場合は新鮮な気持ちが継続しやすいとはいえ、関係が長くなればいつまでも新鮮さを保ち続けられるわけではありません。
また、世の夫婦の多くはお互いに異性としての新鮮さを感じ続けているから婚姻関係を続けているのではなく、家族としての情愛や信頼関係があるからこそ婚姻関係を維持していることが多いでしょう。

一方で、別居婚の場合は新鮮な気持ちが薄れた時点で、会う頻度や連絡の頻度が減ってしまうことも少なくありません。
そうなると、家族としての情愛に移行することなく、夫婦関係の継続が困難となる可能性があります。

そのため、別居婚をする場合は、会う頻度や連絡の頻度について取り決めておくことをおすすめします。

いつまで別居婚を続けるのか決めておく

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別居婚を始める際には、期限や同居を開始する条件を決めておくことをおすすめします。
たとえば、次の期限を設けることなどが考えられます。

  • 1年後に同居する
  • 今進行している仕事のプロジェクトに区切りが付いたら同居する
  • 妊娠したら同居する
  • 〇万円の貯金ができたら同居する

このような期限や条件を定めておかないと、いずれ関係が自然消滅してしまうこととなりかねません。
また、別居婚の期限に関する取り決めは口頭のみではなく、文書で残しておくことをおすすめします。

なお、同居の条件をすり合わせる中で、婚姻届の提出自体を見送ることとなる可能性もあるでしょう。
たとえば、一方はいずれ同居することを念頭に置いていたものの、もう一方は単に責任から逃れたいかっただけであることに気付く場合などです。
話し合いをする中で信頼関係が揺らいだ場合は、婚姻届の提出自体をいったん白紙に戻すことも1つの選択肢となります。

不貞行為をされるリスクが高い

一般的に、別居婚は不貞行為が相手に「バレにくい」環境であるといえます。
夫婦が同居していないことから、不貞行為への心理的ハードルが下がってしまうこともあるでしょう。
別居婚をする際は、このリスクを考慮しておくことが必要です。

離婚へのハードルが下がりやすい

お互いが実家に住みつつ別居婚をする場合、離婚へのハードルが低くなりやすいといえます。
良好な夫婦関係を維持するため、日頃からコミュニケーションを密とする必要があるでしょう。

子どもができた際にトラブルとなりやすい

別居婚では、子どもができた際にトラブルとなるリスクがあります。

子どもがいない場合、夫婦がともに仕事や趣味を充実させて独立した生活を送ることはさほど難しいものではありません。
一方で、妻が妊娠したり出産したりすると、妻の自由は制限されます。
また、妻の収入が大きく減ることも多いでしょう。

このような事態となっても、夫側が生活をまったく変えたくないと主張する可能性もゼロではありません。
そのため、別居婚をする際は子どもができた場合の対応を明確に取り決めておくことをおすすめします。

なお、避妊をしていても子どもができる可能性はゼロではないため、たとえ子どもをもうけるつもりがなかったとしても、「もしできたら」との視点から話し合っておくことも重要です。

  • もし妊娠したらどうするか(もしできたら生むのか、それとも絶対に子どもをもうけたくないので堕胎や離婚を求めるのか)
  • 子どもができたら同居をするのか、それとも別居を続けるのか
  • 妊娠中や出産後の生活費はどうするのか
  • 子育てに関わるつもりはあるか

中には非常に踏み込んだ項目もありますが、これらについて確認しておかないと、将来トラブルとなるリスクが高くなります。

また、話し合い事態を拒否したりのらりくらりと避けたりする場合は、万が一子どもができたときに逃げてしまう可能性があることを覚悟しておく必要があるでしょう。
相手が無責任であると感じるようなら、婚姻届の提出を見送ることも1つの選択肢となります。

離婚時に慰謝料が減額されるおそれがある

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慰謝料とは、精神的苦痛の代償として相手に行う請求です。
離婚をするからといって慰謝料が必ずしも発生するわけではなく、性格の不一致などによる離婚の場合は慰謝料の請求は発生しません。
一方、離婚原因が不貞行為やDVなど一方に非がある場合は、慰謝料を請求できることが一般的です。

ただし、別居婚の場合はたとえ離婚することになったとしても、慰謝料が低く算定される可能性があります。
また、別居婚の場合は不貞行為などの証拠が掴みづらく、証拠がないことで慰謝料請求をすることができない可能性もあります。

別居婚で離婚をしたい場合は、慰謝料請求の見込みや目安となる金額を確認するため、離婚問題に詳しい弁護士へあらかじめご相談ください。
Authense法律事務所の弁護士は、法律な解決にとどまらず、依頼者の気持ちの整理や感情に寄り添うことを信条としております。
弁護士への依頼に緊張したり不安を感じている方は、ぜひ一度Authense法律事務所の初回相談をご利用ください。

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離婚時に財産分与を受けられない可能性がある

財産分与とは、離婚に伴って夫婦の共有財産を分けることです。

夫婦の一方(仮に、夫)が主に外部からの収入を得ており、もう一方(仮に、妻)が専業主婦などであった場合、夫名義の財産が多くある一方で妻名義の財産がほとんどないことも少なくありません。
しかし、たとえ外部からの収入を得ていたのが夫で、夫名義の財産が増加した場合であっても、これは妻による内助の功があったためであると考えられます。
そのため、離婚に際しては財産の名義を問わず、婚姻期間中に積み上がった財産を2分の1ずつで分けることとなります。

しかし、お互いが実家で生活をする別居婚である場合は、離婚時に財産分与が認められない可能性があります。
なぜなら、別居をしている以上は夫や妻の財産の増加は夫と妻それぞれの努力によるものであり、相手の内助の功があったとは認められにくいためです。

まとめ

お互いが実家に住みながら別居婚をする場合、婚姻届を提出するだけで手続きは完了します。
そのうえで、必要に応じて勤務先への届出などを行いましょう。

別居婚で重要となるのは、手続きよりもそのデメリットと注意点をよく理解しておくことです。
これらを理解せずに別居婚を始めてしまうと、後悔する事態となりかねません。

Authense法律事務所では、夫婦問題や離婚に関するトラブルの解決に力を入れています。
別居婚を始めるにあたって不安がある場合や別居婚の相手との離婚を検討している場合は、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。
離婚や夫婦問題に関する初回のご相談は、45分間無料です。

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
女性弁護士が数多く在籍しており、面談予約時に「弁護士性別」をご希望いただくことも可能です。

弁護士らで構成する離婚専任チーム

離婚問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
感情的になりがちな相手方との交渉を弁護士に任せることで、精神的なストレスから解放されますし、日常生活への影響も最小限に留められます。
相手方に有利な条件での示談や和解を要求された場合でも、弁護士に依頼することによって、過去の判例などを踏まえた対等な交渉ができます。
また、問題終結後に弁護士を通して合意書を作成しておけば、和解成立後に相手方から再び慰謝料を請求されたり、不貞行為の内容をSNSに投稿されたりといった事後的なトラブルを未然に防止することも可能になります。

私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
どうぞお気軽にご相談ください。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
早稲田大学法学部卒業(3年次卒業)、東京大学大学院法学政治学研究科修了。企業法務から、離婚、相続問題を中心とした一般民事事件、刑事事件など幅広く取り扱う。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

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