コラム
公開 2022.04.19 更新 2024.05.01

【令和6年4月施行】女性の再婚禁止期間が廃止!概要・理由を弁護士がわかりやすく解説

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令和6年(2024年)4月1日、女性の再婚禁止期間を撤廃する改正民法が施行されました。

これまで、再婚禁止期間はどのような変遷をたどってきたのでしょうか?
また、再婚禁止期間はそもそもなぜ設けられていたのでしょうか。

今回は、再婚禁止期間の撤廃や嫡出推定規定の見直しなど、令和6年(2024年)4月1日施行された改正民法について弁護士がくわしく解説します。

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女性の再婚禁止期間が廃止

これまで、女性には再婚禁止期間が設けられており、離婚後すぐに別の相手と再婚することができませんでした。
しかし、令和6年(2024年)4月1日に施行された改正民法により、この再婚禁止期間が撤廃されました。
これにより、女性も男性と同じく、離婚後すぐに再婚することが可能となりました。

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女性の再婚禁止期間の改正の変遷

女性の再婚禁止期間については、近年、段階的な改正がなされています。
ここでは、再婚禁止期間に関する改正の変遷を解説します。

平成28年(2016年)5月31日以前

平成28年5月31日までは、女性は離婚後6か月を経過した後でないと再婚できないと定められていました。
また、この再婚禁止期間に例外はありません。

そのため、個別事情にかかわらず、女性は一律で離婚後6か月は再婚できませんでした。

平成28年(2016年)6月1日以降

女性は離婚後6か月を待たなければ再婚できなかった一方で、男性は離婚後すぐにでも再婚できます。
また、後ほど解説しますが、再婚禁止期間の定めに「出生した子どもの父親の推定の重複を避けるため」という理由があったとしても、6か月の再婚禁止は長すぎるうえ、個別事情に関わらず一律に再婚禁止期間を定めることは不合理です。

そのため、一律6か月の再婚禁止期間の定めについて、法の下の平等を定めた憲法に違反するのではないかとの訴えが提起されました。
その結果、最高裁判所は従来の定めが違憲であると判断しています。
これを受けて、女性の再婚禁止期間を100日へと短縮する改正がなされました。

また、次のいずれかに該当する場合は、100日を待たずに再婚することが可能となりました。

  1. 女性が離婚時に懐胎(妊娠)していなかった場合(医師の診断書などで証明)
  2. 女性が離婚後に出産した場合

再婚禁止期間の目的が出生した子どもの父親の推定の重複を避けることである以上、離婚時に妊娠していなかった場合や、再婚前にすでに出産している場合まで再婚禁止期間を適用する必要はないためです。

令和6年(2024年)4月1日以降

令和6年(2024年)4月1日からは、女性の再婚禁止期間が撤廃されました。
民法では、再婚禁止期間について定めていた条文(旧733条)がまるごと削除されています。
これにより、女性も男性と同様に、離婚後すぐに再婚できることとなりました。

これに伴い、子どもの嫡出推定規定についても改正がされています。
これについては、次で解説します。

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再婚禁止期間と嫡出推定との関係


先ほども触れたように、女性の再婚禁止期間は、嫡出推定の規定と密接に関係しています。
嫡出推定とは、生まれた子どもの父親が誰であるのか推定する規定のことです。
また、「推定」とは法律上、反証(異なる事実の証明)がない限り事実として取り扱うことを指します。

まず、子どもと母との関係は、出産によって明らかになります。
日本では代理出産は想定されておらず、生まれた子どもの母親は、当然にその子どもを出産した女性です。

一方で、生物学上の父子関係を証明するには、DNA鑑定などをするほかありません。
しかし、従来のDNA鑑定はさほど精度が高くありませんでした。

また、昨今のようにDNA鑑定の精度が上がっていても、DNA鑑定を経なければ子どもの父親が確定しないとなれば非常に煩雑であるうえ、子どもの立場が不安定になります。

そこで、逐一DNA鑑定をするのではなく、父母の婚姻関係から自動的に父子関係を推定する規定が設けられています。
これが、嫡出推定です。

なお、あくまでも「推定」規定であるため、これと異なる事実が証明できれば、推定された父子関係を否定できます。
これを「嫡出否認」といいます。

従来、再婚禁止期間が設けられていた理由

女性の再婚禁止期間が設けられていた理由は、嫡出推定の重複を避けるためです。
令和6年(2024年)4月1日の改正前は、嫡出推定については次のように規定されていました。

  • 婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する
  • 婚姻の成立の日から200日を経過した後または婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する

嫡出推定がこのようになっているにもかかわらず、再婚禁止期間の定めがなければ、A男との離婚後すぐにB男と再婚した女性が生んだ子どもの父親は、次のように推定されます。

  1. A男との婚姻前に妊娠し、A男の婚姻後200日経過前に生まれた場合:推定規定なし(認知をしなければ父親不在)
  2. A男との婚姻から200日経過以降に生まれた場合:A男
  3. A男との離婚かつB男との再婚後、200日経過前に生まれた場合:A男
  4. A男との離婚かつB男との再婚後、200日経過後300日以内に生まれた場合:A男・B男(嫡出推定の重複)
  5. A男との離婚かつB男との再婚後、300日経過後に生まれた場合:B男

法律は、このうち特に「4」の推定の重複を問題視しています。
そこで、嫡出推定が重複する事態をできるだけ避けるため、女性に再婚禁止期間を設けていました。

先ほど解説したように、再婚禁止期間は平成28年(2016年)5月31日までは一律6か月でした。
しかし、これは目的に照らして不合理であるということで、平成28年(2016年)6月1日からは100日に短縮されたうえ、離婚時に懐胎していない場合などには100日を待つことなく再婚が可能とされました。

再婚禁止期間が撤廃された理由

令和6年(2024年)4月1日より、再婚禁止期間が撤廃されました。
これは、嫡出の推定を避けるために出産しても届け出ず、子どもが無戸籍となる事態が散見されたためです。
無戸籍となると、住民票やパスポートが作成できないなど、生活において多大な不利益が生じます。

しかし、このような不利益を甘受してでも出生届を出さないことには、相当な理由がありました。
それは、従来の推定規定に照らすと、離婚から300日以内に生まれた子どもが前夫の子と推定されることにあります。

また、子どもが生物学上は前夫の子どもではないとしても、嫡出を否認できるのが父親であると推定された者(前夫)に限られていたことも理由の一つと考えられます。

それでも、前夫との離婚原因が単なる性格の不一致などであれば、話し合いなどで解決できる可能性はあるでしょう。
生物学上の父親が前夫でないのであれば、前夫から嫡出否認の訴えをしてもらえばよいためです。

一方で、前夫からのDVなどから逃げて何とか離婚を成立させたような場合、前夫による協力は期待できません。
それどころか、生まれた子どもの父親であるとの権利を振りかざし、居場所を特定しようとしたり、子どもが成長してから扶養するよう迫ったりするおそれもあります。
このような事態を避けるため、苦肉の策として子どもの出生届を出さない場合などがありました。

このような事態を避けるべく、嫡出推定の規定が改正されました。
これにより嫡出の推定が重複しなくなったことから、推定の重複を避ける目的で設けられていた再婚禁止期間が撤廃されています。

令和6年(2024年)4月からの嫡出推定の考え方

先ほど解説したように、令和6年(2024年)4月1日以降は嫡出推定についても改正法が適用されます。
改正後、嫡出の推定は次のとおりとなりました(民法772条)。

  1. 妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。女が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする。
  2. 前項の場合において、婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎したものと推定し、婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
  3. 第1項の場合において、女が子を懐胎した時から子の出生の時までの間に2以上の婚姻をしていたときは、その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定する。

ある女性がA男との離婚後すぐにB男と再婚した場合、改正後の規定に照らすと、子どもの父親は次のように推定されます。

  1. A男との婚姻前に妊娠し、A男との婚姻後200日経過前に生まれた子:A男
  2. A男との婚姻から200日経過以降に生まれた場合:A男
  3. A男との離婚かつB男との再婚後、200日経過前に生まれた場合:B男(出生の直近の婚姻における夫)
  4. A男との離婚かつB男との再婚後、200日経過後300日以内に生まれた場合:B男(出生の直近の婚姻における夫)
  5. A男との離婚かつB男との再婚後、300日経過後に生まれた場合:B男

改正後は、前夫であるA男との婚姻期間中に妊娠した子どもであっても、その後再婚してから出生しているのであれば、まずはその再婚相手の子どもであると推定されることとなります。
これにより、前夫の子どもであると推定される事態を避けやすくなり、あえて出生届を出さないという選択をする必要がなくなりました。

ただし、離婚後再婚をしておらず、離婚から300日以内に出生した場合は、従前どおり前夫の子どもと推定されます。
とはいえ、この場合であっても子どもの母が嫡出否認の訴えをすることが可能となっているため、子どもを無戸籍とする必要はありません。
これについては、改めて次で解説します。

再婚禁止期間撤廃に関連するその他の改正

令和6年(2024年)4月1日施行の改正では、「嫡出否認制度」と「認知無効の訴えの規律」についても見直しがされました。
ここでは、これらの改正の概要を解説します。

嫡出否認制度の見直し

嫡出否認制度とは、推定された嫡出を否認するための調停や裁判です。

嫡出否認は調停前置主義がとられているため、まずは調停(調停委員立ち合いのもと、裁判所で行う話し合い)で解決をはかります。
調停が不成立となった場合には、訴えを提起して裁判所が決断を下すこととなります。

嫡出推定は父母の婚姻関係から自動的になされる以上、事実とは異なる推定がなされることもあります。
たとえば、ある女性がA氏との離婚後B氏と再婚した場合、再婚後に生まれた子どもの父親はB氏と推定されます。

しかし、実際はB氏の子どもではない場合、子どもの父と推定されたB氏は裁判所に調停の申立てや訴えの提起をして嫡出を否認することが可能です。
これらをまとめて、嫡出否認の訴えといいます。

これまで、この嫡出否認の訴えは夫(例の場合は、B氏)からのみ可能でした。
改正により、嫡出否認の訴えが子ども自身や子どもの母親からも可能となっています。

また、前夫であるA氏からも嫡出否認の訴えが可能です。
そして、訴えを提起できる期間はこれまで「子の出生を知った時から1年以内」であったところ、原則として「子の出生を知った時から3年間」へと伸長されました。

認知無効の訴えの規律の見直し

認知とは、嫡出の推定が働かなかった子どもを、父親が自分の子どもであると認めて届け出ることです。
ただし、実際には血縁関係がないにもかかわらず認知がなされることもあり、この場合は「認知無効の訴え」の原因となります。

認知無効の訴えとは、認知の無効を主張する調停や訴訟を指します。
認知無効の訴えも調停前置主義がとられており、いきなり訴訟を提起するのではなく、まずは調停を申し立てなければなりません。

これまでは、認知無効の訴えができる人について、認知をされた子のほか、「その他の利害関係人」と規定されていました。
しかし、当事者が認知を有効なものとする意思を有している場合であっても、「その他の利害関係人」が認知無効の訴えができるとの規定が相当でないとの指摘がされていました。

そこで、今回の改正により、認知無効の訴えができる人が次の者に限定されています。

  • 子又はその法定代理人
  • 認知した者(父)

また、これまでは認知無効の訴えを提起できる期間に定めがなかったところ、改正後は、所定の時期から7年間との期間制限も設けられました。

再婚禁止期間や嫡出推定でお困りの際は弁護士へご相談ください

令和6年(2024年)4月1日から、再婚禁止期間や嫡出推定が大きく変更されました。
再婚前後で子どもを出生する場合には、推定規定によって誰が父親とされるのか、改正後の規定に照らしてご確認ください。
推定された父親が実際の父親とは異なる場合には、嫡出否認の訴えにより父子関係を否認する道があります。

また、改正法は原則として施行日以後に生まれた子どもに適用されますが、施行日から1年間に限り、施行日前に生まれた子どもについても嫡出否認の訴えを提起できるとされています。
これは、改正前から存在している無戸籍者の救済を図るためです。
嫡出推定を避けるために子どもが無戸籍となっている場合や、過去に推定された嫡出を否認したい場合は、できるだけ早期に弁護士へご相談ください。

まとめ

女性の再婚禁止期間を撤廃する改正が施行されました。
これと併せて、嫡出推定についても大きな見直しがされています。

子どもの権利を守るため、子どもの嫡出推定でお悩みの際は、早期に弁護士へ相談するとよいでしょう。
施行日前に出生した子どもの嫡出否認は施行日から1年間に限って可能であるため、早めの相談をおすすめします。

Authense法律事務所では離婚問題や男女トラブルの解決に力を入れており、数多くの解決実績があります。
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(神奈川県弁護士会)
早稲田大学法学部卒業、早稲田大学法学部法務研究科を修了。これまで離婚、相続など個人の法律問題に関する案件を数多く取り扱い、依頼者の気持ちに寄り添った解決を目指すことを信条としている。複数当事者の利益が関わる調整や交渉を得意とする。現在は不動産法務に注力。
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