養育費の支払いに男性か女性かの区別はないため、養育費は女性が払う場合もあります。
今回は、養育費を女性が支払う場合のポイントや注意点などについて、離婚問題に詳しい弁護士が解説します。
目次
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離婚における養育費について
離婚の際に特に重要となる取り決めが、養育費です。
まずは、養育費とはどのようなものかご説明します。
養育費とは
養育費とは、簡単にいえば「未成熟の子どもが自立するまでにかかる生活費」のことを指します。
養育費の内容として、一般的には、生活する上で必要なお金以外に、教育費や医療費などが含まれると解されています。
養育費を決める際に考慮されること
養育費の金額は、話し合いによって自由に決めることはできますが、養育費を支払う側と養育費を受け取る側それぞれの年収と子の人数、そして子の年齢を考慮して算定していくことが一般的です。
調停や審判では、これらに個別事情が多少考慮されたうえで養育費が決定するのが実務上通例となっています。
養育費の相場と算定方法
養育費の相場は、裁判所が公表している算定表で確認することができます。
一般的に、この算定表の範囲で養育費が決まることが多いでしょう。
養育費を支払う期間
養育費を支払う期間は、原則として養育費の請求があったときから、取り決めをした終期までです。
一般的には、「20歳の誕生月まで」と年齢で区切る場合と、「大学を卒業する月まで」「22歳に達した後の3月まで」などと大学進学を想定して区切る場合が多いでしょう。
成人年齢引き下げによる養育費の支払い期間への影響
民法の改正により、令和4年(2022年)4月1日より、成人年齢が18歳へと引き下げられました。
そのため、「成人した月まで」と取り決めていた場合に、終期はどのようになるのでしょうか。
法務省の見解では、取決めがされた時点では成年年齢が20歳であったことからすると,成年年齢が引き下げられたとしても,従前どおり20歳まで養育費の支払義務を負うことになると考えられる、とされています。
今後、新たに養育費に関する取決めをする場合には、明確に支払期間の終期を定めることが望ましいでしょう。
養育費は誰が支払う?
それでは、離婚後の養育費は誰が支払うのでしょうか。親権者でない親は、養育費を支払う必要がないのでしょうか。
両親には扶養義務がある
「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」(民法877条1項)。
親子は、直系血族であり、親は子に対して、また子が成長して親が老いれば、子は親に対して、互いに扶養する義務があると、民法には明記されています。
扶養とは養うことですから、子どもが未成熟であり、社会的に自立できない間は、親が子どもを養わなければなりません。
そのために、養育費としてお金を負担するわけです。
これは、改正後の民法766条1項でも、「子の監護に要する費用の分担」という言葉が明記されたことからも理解できます。
なお、離婚という事実は、子に対する扶養義務には影響しません。
離婚は夫婦関係の問題であり、親子関係は変わりません。そのため、子どもの生活にかかるお金は、親である以上、負担しなければなりません。
それは、一緒に住むかどうかや、親権者となるかどうかとは関係なく、親である以上、当然の義務なのです。
身上監護権を有していない側が養育費を支払う
子どもが生活していく上で欠かせないのが、生活費です。
これらを賄うものとして養育費の存在は非常に重要です。
それでは、誰が養育費を支払うのでしょうか。
まず、同居している親は、必然的に子どもの生活費を支出している状況といえます。
共に暮らしているため、食事や寝る場所なども提供しているでしょう。
賃貸住宅であれば必要となる賃料、食費、日常生活に必要な様々なものの代金などの費用を負担しています。
一方で、監護をせずに別居している親は、これらの費用を負担していません。
そのため、別居側の親が子どもの生活にかかわるお金を一部負担するのが公平といえます。
よって、別居している側が養育費を支払うことになります。
養育者側にも養育費を負担する責任はある
養育費は、子どもと別居している親のみが負担すると考えている人もいるかもしれませんが、そうではありません。
同居している親も、収入に応じて養育費を負担しています。
ただし、同居している親が負担する分の養育費は誰かに一括で支払うわけではなく、生活費や教育費として日々直接出費されるものであるため、いくら負担しているのかは見えにくいといえるでしょう。
男性が養育費を請求するケース
養育費は男性が負担するものとのイメージを持っている人も少なくありませんが、養育費の負担に男女の差はありません。
たとえば、男性が親権を持ち、子どもと同居する場合には、子の母親である元配偶者に対して養育費を請求することが可能です。
子どもと養子縁組している場合
子が自分の実子ではなく、元配偶者の連れ子を養子としていた場合には、養子縁組を解消することで養育費の支払い義務はなくなります。
なお、親が離婚したからといって子との養子縁組が自動的に解消されるわけではありません。
この場合には、別途離縁の手続きが必要となります。
女性が養育費を支払う際の注意点
男性側が親権を取り、女性側が養育費を支払う場合には、次の点に注意しましょう。
養育費を支払う妻の方が、収入が低い場合
養育費を支払う妻の方が、養育費を受け取る夫よりも収入が低いからといって、養育費の支払いが免除されるわけではありません。
養育費は、子の監護にかかる費用を双方の親が収入に応じて負担する仕組みであるからです。
ただし、収入が少ない場合には、支払うべき養育費もそれだけ低くなります。
また、仮に妻の年収が極端に低く経済的余裕もない場合には、負担すべき養育費が0円と算定される可能性もあるでしょう。
具体的な金額は、算定表を参照してみましょう。
再婚したらどうなる?
養育費は、取り決めた後でも金額の変更を申し入れることが可能です。
たとえば、養育費を支払っている妻側が再婚し、かつ再婚相手の連れ子を扶養している場合などにおいては、養育費の減額を請求できる可能性があります。
一方、養育費を受け取っている夫側が再婚して子が再婚相手の養子となった場合にも、養育費の減額や免除がされる可能性があります。
再婚相手の養子となった子は、原則として、夫と再婚相手である養親に扶養義務があるためです。
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養育費を決める際の注意点
養育費を取り決める際には、次の点に注意しましょう。
親権と引き換えの「養育費なし」の合意は慎重に
「子どもの親権をどちらが有するか」という問題は、なかなか解決が難しいものです。
というのも、離婚は夫婦の問題で、子どもとの関係で起こるものではないからです。
別れたいと思う相手は配偶者であり、子どもと離れたいと思うケースは少ないでしょう。
そのため、どうしても親権者として、子どもと同居し育てたいという気持ちを捨てきれません。
中には、親権者になることの引き換えに養育費を交渉の一つとする場合があります。
つまり、「養育費はいらないから親権を得たい」という交渉です。
このようなケースにおいて、「養育費は不要」という夫婦間の合意は、果たして有効なのでしょうか。
夫婦間の合意は、あくまで夫婦との間の取り決めであり、子どもの権利を放棄するわけではありません。
親は子どもを扶養する義務があり、子どもからすれば親に扶養の請求を行うことができます。
そのため、夫婦間で「養育費が不要」と合意したところで、子どもからの扶養請求には応えなければなりません。
したがって、安易に「養育費不要」の合意をすることはおすすめしません。
養育費を支払わなくてよい場合
養育費は、親としての義務です。
また、親が離婚をしたからといって、子が自分の子ではなくなるわけではありません。
そのため、子どもと別居した側の親は、原則として養育費の支払い義務があります。
ただし、無収入である場合や極端に収入が低い場合には、支払わなくて良いと判断される場合もあるでしょう。
なお、離婚の原因と養育費の支払いとは関係がありません。
たとえば、夫の不倫が原因で離婚したからといって、親権を持った夫に妻が養育費を支払わなくて良いということにはならないため注意が必要です。
親の学歴が養育費に影響するケースも
養育費をいつまで支払うのか取り決める際に、親の学歴が影響する場合があります。
たとえば、離婚した両親がともに大学まで卒業しているのであれば、養育費の支払い終期も高校卒業までではなく、大学卒業までとされるケースがあるでしょう。
養育費が支払われないとき
離婚時に養育費を取り決めたとしても、その後約束どおりに支払われず、滞納状態となるケースは少なくありません。
では、養育費の不払いはなぜ起きてしまうのでしょうか?
養育費の不払いはなぜ起きるのか
養育費の不払いが起きる原因はさまざまです。
支払いたくても収入が激減して支払えないなどやむを得ない事情による場合もある一方で、自分が親権を持たなかった子の養育費など支払う必要はないなどと、誤った認識を持っている場合もあります。
養育費の不払と面会交流の関係
養育費の支払いと面会交流とは、いわゆる対価関係にあるものではなく、本来は関係ありません。
しかし、思うように面会交流が実現しないことを理由に、養育費を滞納する人がいることも事実です。
養育費を支払うのが難しいとき
収入が激減したり自分が病気になるなど事情が変わったりして、取り決めどおりに養育費を支払うことが難しい場合もあるでしょう。
このような際には、どのように対応すれば良いのでしょうか?
支払う意思があることを伝える
養育費の支払いが難しいやむを得ない事情がある場合には、その旨を相手方に申し入れ、支払う意思があることを伝えましょう。
何ら連絡のないままに対応をしたり、勝手に支払額を減らしてしまったりすれば、不審に感じた相手方から強制執行などを申し立てられる可能性があります。
経済事情が変わってしまった場合
収入の激減や自己の病などやむを得ない事情がある場合には、養育費の減額請求が認められる可能性が高いといえます。
まずは相手方に事情を話して合意を図り、合意が難しい場合には養育費減額請求調停の申し立ても検討しましょう。
弁護士に相談する
養育費を支払うことが難しく減額を申し入れたい場合には、弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで、仮に調停や審判となった場合に減額が認められそうかどうかの見通しが立ちやすいうえ、過去の事例を踏まえたサポートを受けることで、交渉を有利に進められる可能性が高まるためです。
まとめ
養育費は必ずしも男性が支払うものではなく、女性が支払う場合も存在します。
また、相手より収入が少ないからといって払わなくて良いというものではありませんので、誤解のないようにしておきましょう。
Authense法律事務所には離婚問題に詳しい弁護士が多数在籍しており、日々離婚問題や養育費問題の解決にあたっています。
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