コラム

公開 2019.11.07 更新 2024.02.15

養育費をもらえない人が7割?支払ってもらえない場合の対処方法を弁護士が解説

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養育費を払ってもらえない場合、どのような対応を取ることができるでしょうか?
今回は、民事執行法の改正内容にも触れつつ、養育費不払いを解消するポイントや不払いとならないための対策などについて、弁護士が詳しく解説します。

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養育費とは

養育費とは、子の教育や監護に必要となる費用です。
一般的に、離婚後に親権を持たなかった側の親が、親権を持った側の親に対して支払うこととなります。

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養育費の権利は誰のもの?

養育費の支払先は親権者の口座であることが多いため、親権者の権利であると誤解していることもあるでしょう。

しかし、養育費を受け取ることは、子自身の権利です。
親権者は、子の代わりに請求をしたりお金を預かったりしているに過ぎません。

養育費の計算方法

養育費の額は、それぞれの親の収入や子の人数などによって決まります。

当事者双方で合意をするのであれば、養育費はいくらであっても構いません。
双方の主張が食い違う場合には、裁判所が公表している算定表を参考として決めることが多いでしょう。

仮に調停や審判となった場合には、この算定表の範囲で決まることが多いためです。

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養育費はいつからいつまで支払われる?

養育費の支払いは、原則として請求した時点から始まります。
離婚に伴って養育費を定めた場合には、離婚が成立した時点から支払いが開始されることが多いでしょう。

一方、養育費の終期は、原則として双方の取り決めによります。
たとえば、「20歳の誕生月まで」や「大学を卒業する月まで」などと取り決めることが多いでしょう。

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養育費未払いの問題

養育費未払いの問題
養育費の未払いが社会問題となっています。
ここでは、養育費の未払い問題について掘り下げていきましょう。

養育費の未払いはなぜ起きる?養育費未払いの現状

厚生労働省の調査によれば、母子家庭の約70%が養育費を受け取っていません。

約75%が養育費を受け取っていないとの回答であった前回調査から多少改善されているとはいえ、本来子の権利であるはずの養育費が適切に支払われていないというのは、非常に由々しき事態であるといえるでしょう。

これが、母子家庭の相対的な貧困につながっているとの指摘もあります。

養育費の支払いを諦めてしまう理由

養育費が不払いである場合、請求を諦めてしまう理由はさまざまですが、厚生労働省の調査では、次の理由が上位に挙がっています。

  • 第1位:相手と関わりたくない(31.4%)
  • 第2位:相手に支払う能力がないと思った(20.8%)
  • 第3位:相手に支払う意思がないと思った(17.8%)

しかし、養育費の支払いは親としての義務です。
子の健全な養育のため、相手の収入の範囲であってもできる限り支払ってもらえるよう、可能な限り請求しておくべきでしょう。

高校卒業までにかかる教育費

子の養育や監護には、大きな費用がかかります。

文部科学省の調査によれば、幼稚園から高校まですべて公立に通った場合にトータルでかかる教育費の平均額は約540万円、すべて私立に通った場合の平均額は約1,830万円です。

これはあくまでも教育のみにかかる費用であり、食費など生活のためにはこれとは別で費用がかかりますので、これを踏まえて適切な養育費を受け取っておきましょう。

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民事執行法改正の影響

令和2年4月1日、改正民事執行法が施行されました。
民事執行法とは、養育費など支払うべきお金を支払わない相手の財産を差し押さえる手続きなどについて定めた法律です。

この改正により、未払いの養育費の支払いを受けられる可能性が高まっています。
その理由は、次のとおりです。

財産開示手続が改正された

養育費を差し押さえるための準備段階として、相手の財産がどこにあるのか(どの銀行に預金があるのかなど)を調べる必要があります。

この財産の状況を相手に開示させる手続きが財産開示手続きです。
財産開示手続き自体は従前からあったものの、仮に嘘の申告をしたり裁判所からの呼び出しを無視したりしたとしても、30万円以下の過料が科されるのみでした。

そのため、制度の実効性が疑問視されていたところです。

これを受け、今回の改正で、嘘の申告や裁判所からの呼び出しを正当な理由なく無視する行為などについての罰則が引き上げられました。
改正法施行後に適用される罰則は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金です。

懲役の可能性もある重い罰則が科されるため、財産開示手続きの実効性向上が期待されています。

第三者からの情報取得手続が新設された

今回の改正により、第三者からの情報取得手続きが新設されました。
これは、裁判所を通じて金融機関や市町村、日本年金機構などの第三者から、債務者の財産や勤務先などについての情報提供を得ることができる制度です。

これにより、相手の勤務先や預金のある金融機関などの調査がしやすくなりますので、強制執行をしやすくなる効果が期待されています。

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養育費をきちんと支払ってもらうために気をつけたいこと

養育費は、子として受けるべき当然の権利です。
では、養育費をきちんと支払ってもらうために、どのような対策を取ることができるでしょうか?

離婚時に養育費の取り決めを行う

離婚後、養育費を払ってもらうには、離婚する際に「きちんと養育費の取り決めをする」ことが必須です。養育費の約束をしていなければ、相手の方から養育費を払ってくることはほとんど期待できないからです。

離婚時、子どもの親権者を決めるときに一緒に養育費の金額や支払方法も決めましょう。養育費の金額は、支払う側と支払いを受ける側の収入のバランスや子どもの人数、年齢によって異なります。こちらの家庭裁判所の算定表が参考となります。

※参考:裁判所「養育費・婚姻費用算定表」
https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/index.html
※令和元年12月23日に公表された改訂標準算定表(令和元年版)です

養育費についての合意書は「公正証書」にする

養育費について話し合いをして取り決めたら、必ずその内容を「合意書(書面)」にしましょう。口約束では、払ってもらえなくなる危険性が極めて高くなるからです。
また、単なる当事者間で作成した合意書ではなく「公正証書」にすることを強くお勧めします。

公正証書とは、公証役場で公証人に作成してもらう公文書です。
公正証書にすると(不履行があった場合に直ちに強制執行に服する旨の強制執行認諾文言が明記されている場合)、相手が不払いを起こしたとき、すぐに相手の給料や預貯金などを差し押さえることができます。
特に相手が会社員や公務員の場合、給料を差し押さえるとその後は会社や自治体などから差押え分を直接払ってもらえるので、相手による不払いを心配する必要がなくなります。

離婚公正証書を作成するには、合意した養育費やその他の離婚条件を公証人へ伝え、「これを離婚公正証書にしてください」と言って申込みをします。
すると、公証人が案文を作成し、それを当事者双方で確認したうえ、日時を決めて当事者2名が公証役場に行き、署名押印をすれば離婚公正証書が完成します。

公正証書の作成には合意内容の財産的価値に応じた手数料が必要です。
養育費や財産分与まで含めた離婚協議書の場合、数万円の費用が必要となる場合があります。
公証役場に行ったり書類を集めたりする手間もかかりますが、後に養育費を確実に回収できることを考えれば費用や手間に見合う価値があります。必ず作成しましょう。

養育費の未払いが起きてしまったら

養育費の未払いが起きてしまったら、次の方法を検討しましょう。

離婚協議書で養育費の合意をしている場合「内容証明郵便」で催告する

離婚時に養育費についての取り決めができなかった場合、相手は離婚後に養育費を払ってくれないことが少なくありません。
また、当初は払ってくれていても、だんだんと養育費を支払ってくれなくなることがあります。

そのような場合には、家庭裁判所で「養育費調停」を申し立てましょう。
養育費調停とは、子どもの養育費の金額や支払方法を決めるための調停です。裁判所の調停委員が間に入り、養育費の話し合いを進めてくれます。
相手が支払いに消極的なケースでも説得してくれますし、相場に従った養育費の金額を提示してくれるので、自分では決め方がよくわからない場合にも安心です。

養育費調停で、相手と申立人の双方が納得できる金額を決められたら調停が成立します。通常は、その後調停内容に従った支払いをしてくれるでしょう。

一方、相手が頑なに「払いたくない、払えない」という場合もありますし、ときには養育費調停に出頭しないケースもあります。
そのような場合には、養育費調停が「審判」に切り替わり、裁判官(この場合には「審判官」と言います)が養育費の金額を決めて、相手に支払命令を出します。

離婚時に決められなかったときや公正証書がない場合には「養育費調停」を行う

養育費調停や審判で養育費の支払いが決定されても、相手が従わないケースもあります。
その場合、家庭裁判所で「履行勧告」をしましょう。
履行勧告とは、家庭裁判所から相手に対し「調停や審判で決まったことを守ってください」と連絡する手続きです。

履行勧告の方法は、家庭裁判所に行って履行勧告の申請書を提出するのみなので、簡単です。また、電話でも申し出を受け付けている裁判所もあります。
ただし履行勧告には強制力がないので、相手が無視する危険もあります。

似たような制度に「履行命令」があります。
これも家庭裁判所に申立をして、裁判所から「調停や審判で決まったことを守りなさい」と命令してもらう手続きです。
これを無視すると、相手には「10万円以下の過料」という行政罰が下される可能性があります。
ただし過料の制裁が発動されても養育費を払ってもらえるわけではありませんし、それ以上の強制力はありません。

無視されたら「強制執行」をする

相手が養育費を払ってくれないとき、履行勧告を無視されたら「強制執行」を検討しましょう。
また、離婚時に公正証書を作成していたら、養育費調停をしなくてもいきなり強制執行が可能です。

強制執行とは、相手の債権や資産を差し押さえる手続きです。
差押えの対象になるのは、以下のようなものや債権です。

  • 預貯金
  • 生命保険の解約返戻金
  • 給料
  • 社内積立
  • 不動産
  • 株式などの有価証券

相手が会社員や公務員の場合には「給与差し押さえ」が有効です。
養育費の場合、相手の概ね「手取り額の2分の1まで」毎月取り立てることが可能です。
一度申立をしたら、その後は強制執行を取り下げるか、相手がその職場を辞めるまで差押えの効力が続きます。
つまり相手が今の職場を辞めるまで、給料から確実に養育費を支払ってもらえるということです。

相手が会社員や公務員でない場合には、預貯金や生命保険の解約返戻金などを差し押さえることも可能です。
不動産や車などの差押えにはかなりの労力と費用がかかるので、優先順位としては後になります。特に車や動産差押えの場合、費用の方が高くかかって「赤字」になる可能性もあるので注意が必要です。

また住宅ローンが設定されている「オーバーローン」物件の場合、そもそも差押えが難しいケースもあります。

養育費の請求には時効がある

養育費は、不払いとなった時期からあまり期間が経過してしまうと、時効によって権利が消滅してしまいます。

養育費は一度に時効にかかるわけではなく、月々支払ってもらうべき養育費が、時効期間を迎えた月の分から順次時効にかかっていきます。

養育費の時効は、原則として5年です。
例外的に、調停や審判、裁判で養育費について取り決めた場合には10年へと伸長されます。

養育費の不払いが起きてしまったら、時効にかからないよう早期に請求するようにしましょう。

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養育費未払いへの対応のポイント

養育費未払いへの対応のポイント
養育費が未払いとなってしまった場合の対応ポイントは、次のとおりです。
これらのポイントを踏まえ、早期の解決を図りましょう。

養育費の請求はなるべく早く

とにかく離婚することを優先した結果、離婚時に養育費について取り決めず、「どうしよう」と思って悩み続けて数か月が経過してしまうこともよくあります。

しかし、養育費の請求はなるべく早く行うべきです。
なぜなら養育費は「請求したときからの分」しか払ってもらえない可能性が高いからです。

本来、養育費は離婚時から子どもが成人するまで払ってもらえるはずのものです。
しかし離婚後に養育費調停や養育費審判をするとき、調停や審判で支払いを認めてもらえるのは「養育費調停などを申し立てた月から」の分となることが多いです。

「離婚後、養育費調停などを申し立てるまでの分」は払ってもらえない可能性があるのです。
養育費調停などを早く申し立てれば申し立てるほど、長い期間分の養育費を払ってもらえる計算となります。

面会交流との関係

離婚後、親権者にならなかった相手には子どもとの面会交流権が認められます。
確かに養育費の支払いと面会交流は引換えではありませんが、子どもと面会して緊密な関係を築けている方が、相手としても養育費を積極的に支払う気持ちになりやすいことは確かです。
もしも今相手と子どもが会えていない場合には、面会交流と養育費の問題を同時解決することも可能です。

正しい知識を持って適切な対応をすれば、多くの方が養育費を受け取れるようになります。
養育費を払ってもらえていなくてお困りであれば、弁護士がケースに応じたアドバイスと対応を実施いたしますので、なるべく早めにご相談ください。

養育費の強制執行は負担が大きい

養育費を強制執行するには、相手の財産状況や勤務先の情報などを調べる必要があり、請求する側にとっても負担が大きいものです。
また、仮に養育費の取り決めを離婚合意書など公正証書ではない任意の書式で作成していた場合には、強制執行に先立って調停や訴訟をしなければなりません。

この負担を避けるため、相手と交渉し、強制執行をすることなく養育費を支払ってもらった方がスムーズです。
強制執行がなされれば、給与差し押さえの過程において相手の職場や家族などへも知られる可能性が高いため、相手にとっても強制執行前に任意で支払う方が望ましい場合が多いでしょう。

養育費の不払いを解決するためには、必ずしも強制執行のみに拠らず、多くのカードを持ったうえで相手との交渉にあたることをおすすめします。

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弁護士に依頼するメリット

養育費の不払いが起きたら早期に弁護士へ相談することが、不払い問題解決へのカギとなります。

相手によっては、「お金がないといえば払わなくて済むだろう」「支払わなければ、そのうち諦めるだろう」などと養育費を軽く考えている場合もあるでしょう。
しかし、弁護士へ依頼をして弁護士から養育費を請求することで、元配偶者の養育費支払いへの強い意志にようやく気がつき、養育費を支払う可能性があります。

また、任意に支払わず強制執行へと移行すれば、給与などを差し押さえる段階で勤務先に養育費不払い問題を抱えていることが知られてしまいます。
これを避けたい場合には、強制執行の前に任意で支払う場合もあるでしょう。

いずれにしても、養育費不払い問題の解決には、適切な請求を適切なタイミングで行ったり、支払いへ向けた交渉を進めていったり、相手や状況によって異なる戦い方をする必要があります。

弁護士は法律や交渉のプロですので、離婚問題に詳しい弁護士へ依頼することで、早期の解決ができる可能性が高くなるでしょう。

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まとめ

養育費は、子の教育や監護に必要となるお金です。
離婚をしても2人ともが子の親であることに変わりはありませんので、子に対する責任として、養育費はきちんと支払ってもらいましょう。

離婚をした相手から養育費を支払ってもらえない場合には、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。
民事執行法の改正により、養育費の取り立ては以前よりも行いやすくなっていますので、たとえ相手に支払う気が見られない場合であっても、諦める必要はありません。

Authense法律事務所には離婚や養育費不払い問題に詳しい弁護士が多数在籍しており、日々養育費不払い問題の解決にあたっています。
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記事を監修した弁護士
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弁護士 
(神奈川県弁護士会)
神奈川県弁護士会所属。中央大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。離婚、相続を中心に家事事件を数多く取り扱う。交渉や調停、訴訟といった複数の選択肢から第三者的な目線でベストな解決への道筋を立てることを得意とし、子の連れ去りや面会交流が関わる複雑な離婚案件の解決など、豊富な取り扱い実績を有する。
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