コラム

公開 2020.01.21 更新 2021.10.06

卒婚、定年離婚、熟年離婚…シニア世代の離婚は慎重に!

最近、50代以上の夫婦で「卒婚」するカップルが増えているといいます。卒婚とは婚姻関係は解消しないまま夫婦が没交渉となり他人のようになることです。
また卒婚状態では済まず、定年になった時点で離婚してしまったり、熟年離婚したりするご夫婦もたくさんいます。

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1.卒婚とは

卒婚とは、子育てを終えた熟年夫婦が離婚をしないまま夫婦関係を卒業することです。
つまり離婚届を提出しないだけで、事実上夫婦としてのコミュニケーションや関係を断ち切ります。典型的なケースでは「別居」しますが「同居のまま」卒婚するご夫婦もいます。

卒婚の動機は、長年一緒に暮らして相手に嫌気がさしたことです。特に「夫が働いて妻が家を守る」というロールモデルの元で生活してきた場合、妻が現状に不満を抱いて卒婚を希望するパターンが多くなっています。

2.定年離婚とは

定年離婚とは、夫が定年になったタイミングで離婚することです。退職金も入ってくるので、それを財産分与することにより、夫婦の離婚後の生活もある程度維持できると見越しています。
「第二の人生は自分の自由に歩みたい」と希望して離婚に踏み切るパターンです。

3.熟年離婚とは

熟年離婚は、年数を重ねた夫婦が離婚することです。定年を機に離婚する場合もありますし、定年前や定年後何年も経って70代で離婚するパターンもあります。

4.卒婚と離婚の違い

卒婚と離婚の決定的な違いは「婚姻関係を解消するかどうか」です。

4-1.生活費の分担義務

卒婚の場合、夫婦関係は解消されないので完全に「一人」になるわけではありませんし生活費の分担義務も残ります。夫婦にはお互いに扶助義務があるので、別居型の卒婚を選択する場合、収入の高い方(多くは夫)は低い方(多くは妻)へ生活費を払わねばなりません。別居状態を解消するか離婚が成立するまで生活費の分担義務が続きます。ただし離婚しないので、財産分与は行いません。

一方離婚すると、離婚後は生活費の分担義務がなくなります。ただし離婚の際には退職金なども含めて財産分与を行うので、財産が一気に目減りする可能性があります。

4-2.遺産相続権

卒婚の場合、配偶者としての関係が継続するのでどちらかが死亡したら「遺産相続」が発生します。卒婚して別居して没交渉にしていても、「配偶者」として2分の1~4分の3の高い割合で遺産を相続することが可能です。
一方離婚すると遺産相続権はなくなるので、相手の遺産を相続することは不可能です。

4-3.年金について

卒婚の場合、年金は「1つの世帯」であることを前提にして計算され、振り込まれます。配偶者加算などもあるため、1人のケースより金額が大きくなっているケースもあります。そして多くの場合、夫が亡くなったら妻は遺族年金を受け取れます。

一方離婚してしまったら、年金は夫と妻それぞれの分が計算されて個別に振り込まれます。夫が受け取る金額は夫婦のときよりも少なくなりますし、婚姻中に夫の扶養に入っていた妻が受けとれる年金は月額6万円程度です。

また離婚時に年金分割すると、夫の年金はさらに減らされます。妻の年金は数万円程度加算されますが、生きていくのには十分ではありません。
卒婚を続けて夫が死亡した場合の遺族年金と比べると、年金分割で加算された年金は少額であるケースが多数です。

5.卒婚か離婚、どちらを選ぶべきか

以上のように、経済的な側面において卒婚と離婚には大きな違いがあります。
妻の場合、別居後も生活費をもらい続けられること、相手の死亡後に遺産相続できて遺族年金を受け取れることを考えると、卒婚にメリットがあるといえそうです。

ただし離婚すると、そのときにまとまった財産分与をしてもらえます。若くてまだ元気なうちに多額のお金をもらって第二の人生をやり直したい場合には、定年離婚などの選択も充分にありえます。

一方お金を渡す夫側からしてみると、卒婚ではずっと生活費を払い続けなければならず、経済的に厳しくなりますから、すっきり離婚を選択して第二の人生をやり直すメリットが大きくなります。ただしまとまった財産分与が必要なので、痛し痒しというところでしょう。

6.シニア世代が卒婚、離婚する際の注意点

シニア世代が卒婚や離婚をするときには、以下のようなことに注意が必要です。

6-1.経済的にやっていけるのか

一番重要な点は、お互いが経済的に自立してやっていけるのかということです。
離婚すると家計が完全に別になり、自分一人の収入で生活していかねばなりません。専業主婦だった妻も、夫から生活費をもらうことは不可能です。年金分割してもらっても通常は年金だけで生活するのは困難です。卒婚の場合にも、年金生活の相手からもらえる生活費の金額は大きくないので、別居後それだけに頼って生活するのは不安でしょう。

50代、60代になって新しい仕事を探すのは大変です。結果的に子どものお世話になるパターンも少なくありません。

夫の方も、離婚すると妻の分の加算がなくなって年金が減る可能性がある上、妻から年金分割を申し立てられて受け取れる年金を大きく減額される可能性が高くなっています。
財産分与まで取られるので、手元資金も非常に寂しくなります。それなのに妻はもういないので、家事などはすべて自分でしなければなりません。
少ない年金でのやりくりと家事に追われて、思い描いていた「第二の人生」など夢のまた夢、という状況に陥る可能性もあります。

6-2.介護の不安

シニア世代のご夫婦の場合、将来の介護についても考えておく必要があります。夫婦が一緒に暮らしていたら、どちらかが倒れたらどちらかが面倒をみます。少なくとも「放置されて誰も発見してくれない」状況にはなりませんし、精神面でも支えになってくれるでしょう。

離婚してしまったら完全に他人ですから、倒れても誰も気づいてくれませんし相手に介護の負担を求めることは不可能です。
卒婚の場合も、別居状態が続いていたら倒れても相手は気づかないでしょうし、発見されたとしても介護してくれるとは限りません(法律上は介護の義務があります)。

シニア世代が離婚・卒婚するときには、将来体調を崩したときの問題も考えておく必要があります。

6-3.子どもの理解

結婚や離婚は個人が自由に選択すべき事柄ですので、親だからといって子どもに遠慮する必要はありません。しかし実際には、子どもの理解を得られていない卒婚や離婚をすると、子どもとの関係が悪化する可能性があります。
特に離婚後別の相手と再婚すると、子どもとの間で軋轢が生じやすくなります。

そうでないケースでも、親が離婚すると子どもはどちらかの親に肩入れするケースがあるので、一方の親とは疎遠になってしまう可能性が高くなります。老後、配偶者がいなくなってただでさえ孤独なのに子どもとも疎遠になったら、強い孤独感にさいなまれることになるでしょう。

7.卒婚、離婚は慎重に決断すべき

長年夫や妻と一緒に暮らしてきて「相手がいるのが当たり前」の状態になると「イヤだな」「耐えがたいな」と思う瞬間があるものです。ただそれによって安易に「卒婚」「離婚」に結びつけるのはリスキーです。
経済的な問題が大きくのしかかりますし、孤独感や家事の負担、将来の介護や遺産相続の問題なども考えておかねばなりません。

弁護士としては、まずはこういった問題を慎重に検討し、クリアできるケースであれば卒婚・離婚に進まれても良いのではないかと考えます。

配偶者との関係にお悩みで離婚を検討されているなら弁護士も法的観点からご相談を伺います。よろしければお気軽にご相談下さい。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
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