コラム

公開 2020.06.09 更新 2024.04.02

別居後に離婚の話が進まない場合の対応方法は?弁護士がわかりやすく解説

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別居したものの、その後離婚へ向けた話が進まない場合には、どのように対応すればよいのでしょうか?
また、離婚と別居との違いはどの点にあるのでしょうか?

今回は、別居後に離婚の話を進める方法や離婚時の注意点などについて、弁護士がくわしく解説します。

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別居と離婚の主な違い

別居はしたものの、その後離婚へ向けた話し合いが進まない場合もあることでしょう。
はじめに、別居と離婚の違いについて解説します。

相互扶助義務

夫婦には、相互扶助義務が定められています。
相互扶助義務とは、夫婦がお互いに助け合う義務のことです。

この相互扶助義務は、正式に離婚をしていない以上、たとえ別居状態にある夫婦も負うものと考えられています。
一方、離婚をした夫婦には、もはや相互扶助義務はありません。

名字

別居をしていても離婚をしていない以上、夫婦はともに婚姻期間中の名字のままです。

一方、離婚をした場合には、婚姻によって名字を変えていた側は、原則として婚姻前の名字に戻ります。
なお、離婚日から3か月以内に役所へ届出することで、婚姻時の名字を名乗り続けることも可能です。

婚姻費用

婚姻費用とは、夫婦の一方が配偶者に対して支払う生活費です。
先ほど解説したように、夫婦には相互扶助義務があり、原則として相手に自己と同じ水準の生活をさせなければなりません。

この婚姻費用は、婚姻期間中にのみ発生します。
離婚をした場合には、その後婚姻費用を負担する必要はありません。

財産分与や養育費

離婚をする際には、財産分与や養育費について取り決めることとなります。
財産分与とは、離婚に伴って夫婦の財産を清算することが主な目的です。
また、養育費とは、子どもの監護のために必要な費用負担を指します。

なお、養育費自体は婚姻期間中にも生じていますが、婚姻期間中は先ほど解説した婚姻費用に含めて支払っていることが多いでしょう。

相続の権利

法律上の夫婦である以上、たとえ別居期間が長かったとしても、相手が亡くなった際に相続の権利を得ることができます。

一方、離婚が成立していたのであれば、相続の権利はありません。

再婚可能かどうか

法律上の配偶者がいる以上、別居期間が長かったとしても、再婚(重婚)することはできません。

別居後に離婚の話が進まない主な理由

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別居をしたものの、その後なかなか離婚の話が進まないこともあるかと思います。
別居後に離婚の話が進まない際、考えられる主な理由は次のとおりです。

関係の再構築を望んでいるから

別居はしたものの、冷却期間を置いた後に夫婦関係を再構築することを望んでいることが考えられます。

この場合には相手は離婚を望んでおらず、離婚へ向けた話し合いを切り出しても難航する可能性が高いでしょう。

子どもへの影響を心配しているから

離婚による子どもへの影響を心配して別居状態を続けていることが考えられます。
離婚をすることで子どもが心理的に不安定となったり、子どもの名字が変わることで子が不利益を受けたりすることを心配している場合などです。

この場合には、子どもがある程度の年齢になった時点や子どもの進学のタイミングなどで、離婚へ向けた話し合いが進展する可能性があるでしょう。

仕事などへの影響を心配しているから

現代においては3組に1組の夫婦が離婚をするといわれています。
そのような中では、離婚は決して珍しいことでも、恥ずべきことでもありません。

しかし、職業によっては離婚がマイナスイメージとなる場合もあり、それを恐れて離婚へ踏み切らない場合もあるでしょう。

婚姻費用(生活費)を受け取り続けたいから

たとえ別居状態であったとしても、離婚していない以上は法律上の夫婦であり、相互扶助義務が存在します。
夫婦のうち収入が少ない側としては、婚姻費用が受け取れなくなることで、経済的に困窮したり生活レベルが下がったりすることを避けるため、離婚に踏み切らない可能性があるでしょう。

離婚へ向けた話し合いをしたくないから

正式に離婚をする際には、いつ離婚をするのかということに加え、養育費や財産分与など、さまざまな取り決めをしなければなりません。
このような取り決めへ向けた話し合いには、非常にエネルギーを使います。

そのため、離婚へ向けた話し合いを億劫に感じ、単に先延ばしにしている場合もあることでしょう。
また、相手と直接話し合いをすることに不安を感じ、話し合いを避けていることも考えられます。

別居後に離婚の話が進まない場合の対応策

このまま別居状態を続けずに離婚をしたいと考えているものの、相手が離婚へ向けた話し合いに応じてくれないなどして話し合いが進まない場合には、どのように対応すればよいのでしょうか?
主な対応方法は、次のとおりです。

改めて話し合いの場を設ける

子どもに関する用事などで顔を合わせたタイミングで、「ついで」のように話を切り出した場合には、心の準備ができておらず、話し合いを避けられてしまうかもしれません。

また、そもそも離婚の話し合いをするために設定した場所でなければ、その場所で離婚の話し合いを避けたい場合もあることでしょう。
たとえば、近所の飲食店や子どもを遊ばせている公園、子どももいる家の中などであれば、近所の住民や子どもに話を聞かれてしまうリスクがあります。

このような場合には、離婚についてきちんと話したいとあらかじめ告げたうえで、たとえば家から少し離れた場所にある喫茶店など、お互いにとって落ち着いて話し合いができそうな場所で会う提案をしてみると、話し合いが進行するかもしれません。

当事者同士で無事に話し合いができ、離婚へ向けた諸条件もまとまった場合には、その内容を書面に残しておくことをおすすめします。
特に、相手から養育費など定期的な給付を受ける場合には、公正証書にしておくとよいでしょう。

公正証書にしておくことで、万が一相手が約束どおりに養育費などを支払わなかった場合における強制執行などの手続きがスムーズとなるうえ、滞納の抑止力ともなるためです。

弁護士に代理交渉をしてもらう

当人同士で話し合いが進まないのであれば、弁護士へ相談し、代理で交渉してもらうことを検討しましょう。
相手からの話をのらりくらりとかわしている場合でも、弁護士が離婚協議を申し入れることで話し合いに応じる可能性があります。
弁護士へ依頼することで、離婚へ向けた本気度が伝わるほか、「話し合いに応じなければ調停などへ移行する」とのプレッシャーを感じさせることもできるでしょう。

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離婚調停を申し立てる

弁護士が協議を申し入れても交渉に応じない場合や、話し合いがまとまらない場合には、離婚調停へ移行します。

離婚調停とは、家庭裁判所で行う離婚についての話し合いのことです。
話し合いといっても、当事者である夫婦が直接対峙するわけではなく、家庭裁判所の調停委員が夫婦双方に順に話を聞く形で話し合いが進行します。
弁護士に代理で出席してもらったり、弁護士に同席してもらったりすることも可能です。

当事者の一方が離婚調停を申し立てると、裁判所から相手に対して「調停期日通知書」が送付されます。
調停期日通知書とは、調停の日時などを知らせる書面のことで、裁判所からの呼び出し状だとイメージするとよいでしょう。
調停で、離婚をすることや養育費など離婚に関する諸条件についての話し合いがまとまれば、その内容で離婚が成立します。

また、一方が出頭しないことを続ければ、調停は成立しないと家庭裁判所が判断して、次で解説する訴訟への移行が可能となります。

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離婚訴訟を利用する

調停でも話し合いがまとまらなかった場合や相手が調停に出頭しなかった場合など調停が不成立となった際には、原則として、離婚訴訟へと移行します。

離婚訴訟では、諸般の事情を踏まえたうえで、離婚するかどうかや、離婚に関する諸条件について裁判所が判断します。
たとえ相手が離婚をしたくないと主張している場合であっても、別居期間が長ければ離婚すべきとの判決が下される可能性が高くなるでしょう。

別居期間がどの程度であれば離婚すべきと判断されるかについて、明確な線引きがあるわけではありません。
しかし、おおむね5年程度の別居期間があれば、離婚が認められる可能性が高いとされています。

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別居後に離婚をする際の注意点

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長い別居期間を経たうえで離婚をする際には、通常の離婚と比較して、次の点に注意する必要があるでしょう。

財産分与が少なくなる可能性がある

財産分与とは、離婚に伴って、婚姻期間中に増加した夫婦の財産を、夫婦で清算する手続きです。
そして、分与対象となる財産は、別居開始時点における財産と考えるのが一般的です。
すると、仮に別居期間中に相手の財産が大きく増加した場合でも、それは財産分与の対象とはならないことが多いでしょう。

したがって、別居期間が長い場合には、財産分与が離婚時点の財産の内容に照らすと少なくなる可能性があります。

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財産隠しの証拠がつかみにくい

財産分与の額を算定するためには、双方の財産を正確に把握しなければなりません。
しかし、財産分与の対象となる財産を減らすため、財産隠しをするケースがあります。
同居をしている場合と比較して、別居している場合に相手の財産を調査することは困難でしょう。
別居している以上、勝手に相手の生活スペースへ入り込むことはできず、調査方法が限られてしまうためです。

相手が財産を隠している可能性が高いと考える場合には、弁護士へ相談することをおすすめします。

不貞行為の慰謝料が認められない可能性がある

別居期間が長い場合には、仮に別居後に相手が不貞行為をしたとしても、慰謝料請求が認められない可能性があります。
不貞行為以前に、そもそも長期の別居によって夫婦関係が破綻していたと判断される場合には、維持すべき婚姻生活自体が存在しないため、慰謝料請求は認められない可能性が高いでしょう。

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不貞行為の証拠がつかみにくい

別居期間中の不貞行為であったとしても、不貞行為以前に夫婦関係が破綻していなかったと判断されれば、慰謝料請求は可能です。

しかし、別居している場合には、同居している場合と比較して、不貞行為の証拠を掴むことが難しくなりやすいでしょう。

まとめ

別居はしたものの、その後、離婚について話し合いが進まない場合には、弁護士への相談など、次の一手を検討するとよいでしょう。
何も行動をしなければ、そのままの状態がいつまでも続いてしまう可能性があるためです。

Authense法律事務所には、離婚問題にくわしい弁護士が多数在籍しております。
別居後に離婚の話し合いが進まずお困りの際などには、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
女性弁護士が数多く在籍しており、面談予約時に「弁護士性別」をご希望いただくことも可能です。

弁護士らで構成する離婚専任チーム

離婚問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
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相手方に有利な条件での示談や和解を要求された場合でも、弁護士に依頼することによって、過去の判例などを踏まえた対等な交渉ができます。
また、問題終結後に弁護士を通して合意書を作成しておけば、和解成立後に相手方から再び慰謝料を請求されたり、不貞行為の内容をSNSに投稿されたりといった事後的なトラブルを未然に防止することも可能になります。

私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
どうぞお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
日本大学法学部卒業、日本大学大学院法務研究科修了。個人法務及び企業法務の民事事件から刑事事件まで、幅広い分野で実績を持つ。離婚や相続などの家事事件、不動産法務を中心に取り扱う一方、新規分野についても、これまでの実践経験を活かし、柔軟な早期解決を目指す。弁護士会では、人権擁護委員会と司法修習委員会で活動している。
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