コラム
公開 2019.12.19 更新 2023.11.27

妻の「DV」で男性が離婚請求できる?慰謝料は?男性のDV相談が増加中

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一昔前までは「DV」と言えば「男性が女性に暴力を振るう」ものと認識されていました。
ところが最近では、女性が男性に暴力を振るうケースも増えてきているといいます。
男性がDV被害者となったときにも離婚は可能なのでしょうか?

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※この記事は慰謝料請求をしたい方に向けて書いております。
 慰謝料請求を受けてお困りの方はこちらのページをご確認ください。

1.男性がDV被害を受ける事例が増えている

「DVは女性が被害者になるものだ」
「身体が大きく力も強い男性が被害者になるなんて、どういうことだろう?」

男性がDV被害を受けるというと、上記のように感じる方が多いかも知れません。

しかし現実には、男性がDV被害を受ける事例が増えていることを示す公的な調査結果が存在します。

平成29年度に調査が実施された内閣府「男女間における暴力に関する調査 配偶者からの暴力の被害体験」によると、妻から身体的暴行、心理的攻撃、経済的圧迫、性的強要のうち、1つ以上をされたことがあると回答した男性の割合が約20%でした。
つまり夫婦の5組に1組は男性が暴力を受けている可能性があるといえます。

2.男性からのDV相談が増えている

警察に寄せられる相談内容でも、男性からのDV相談事例が増えていると言います。
警視庁の発表によると、2018年度におけるDVに関する相談者の件数と割合は、女性が7,471件で82.6パーセント、男性が1,571件で17.4パーセントとなっています。

2014年には男性からの相談はわずか181件で4.41パーセントに過ぎなかったところ、どんどん件数と割合を増やし、2018年には件数的には8倍以上、割合的にも4倍近くになっています。

警察に寄せられたDV相談の男女別件数

女性からの相談件数 男性からの相談件数 合計
2004年 3,926 181 4,107
2005年 4,550 421 4,971
2006年 5,866 953 6,819
2007年 7,005 1,416 8,421
2008年 7,471 1,571 9,042

このことからしても、現実に男性が女性によるDV被害を受ける事例が増加していることがみてとれます。

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3.妻から男性に「身体的な暴力」が振るわれている

妻が夫に暴力を振るうとき、具体的にはどういった「暴力」が行われているのか、気になる方も多いでしょう。
「言葉の暴力が多いのでは?」と思う方もおられると思われます。
確かに言葉の暴力もありますが、最近では妻が実際に夫へ「身体的暴力」を振るう事例も多くなっているようです。

たとえば2018年、妻から暴力を受け続け、夫が耐えかねて妻を殺害してしまった事件がありました。
その事件の被告人である銀行員は「妻から髪の毛を引っ張られ、引きずられたり顔面を殴られたり、土下座を強要されて蹴りつけられた」などと話しています。
それ以外にも、男性が妻から「拳で殴られた」「物で殴りつけられた」などの事例は少なくありません。

「女性だから男性に身体的暴力を振るうことはない」
というのは世間的な思い込みとなりつつあるようです。

4.男性がDVを受けていても離婚原因になる?

日常的に妻から暴力を受けている場合、男性側から離婚請求できるのでしょうか?

4-1.協議離婚、調停離婚なら問題なく離婚できる

まず協議離婚や調停離婚であれば、問題なく離婚請求できます。これらは話し合いによる離婚の方法なので、妻さえ納得したら理由は何であっても離婚が成立するからです。

4-2.訴訟では婚姻を継続し難い重大な事由が必要

一方妻が「絶対離婚しない」などと強硬に主張するケースもあるでしょう。
その場合には、訴訟によって離婚を認めてもらう必要があります。
法律が訴訟による離婚を認めるのは、以下の5つのケースに限られます。

  • ・不倫
  • ・悪意をもって相手を見捨てること
  • ・3年以上の生死不明
  • ・回復しがたい精神病
  • ・その他婚姻を継続し難い重大な事由

女性がDV被害を受ける場合、多くのケースでは5番目の「婚姻を継続し難い重大な事由」と評価されて離婚原因と認定されています。

婚姻を継続し難い重大な事由は、不貞や悪意の遺棄、3年以上の生死不明などに準じる程度の重大な問題により夫婦関係が破綻してしまった場合に認められます。

男性がDV被害者の場合にも、妻による暴力が酷すぎてもはや夫婦関係を継続するのが不可能となってしまったら、婚姻を継続し難い重大な事由が認められて離婚できる可能性があります。

ただし暴力の程度が軽い場合には離婚原因にはなりません。どういった場合に離婚できてどういった場合にはできないのか、みてみましょう。

4-3.男性がDV被害を受けて離婚できる可能性が高いケース

  • ・妻から顔面を拳で殴られてけがをする、その程度の暴力が日常的に行われている
  • ・妻から土下座をさせられて蹴りつけられ、流血するけがをした、その程度の暴力が日常的に行われている
  • ・妻からバットで殴られてけがをした、日常的に同程度の暴力を振るわれている

離婚が認められるには、けがをするほどの酷い暴力があり、それが日常的に繰り返されていることが必要です。

4-4.男性が暴力を振るわれても離婚できない可能性が高いケース

  • ・妻から平手で殴られた
  • ・妻が暴れるので制止するのにけがをした
  • ・妻から1回蹴られた

このような軽い暴力の場合や、暴力を振るわれた回数や頻度が少ない場合には離婚原因と認めてもらえない可能性が高くなります。

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5.男性がDV被害者の場合にも慰謝料請求できる?

夫が妻からDV被害を受けて離婚請求するとき、慰謝料も同時に請求できるのでしょうか?

慰謝料が発生するのは、相手に婚姻関係を破綻させたことについての「有責性」がある場合です。

配偶者への暴力は相手の人格を否定する重大な不法行為ですので、加害者には婚姻関係を破綻させた有責性が認められます。
ここでは男女の区別はありません。男性が被害者で離婚が認められるケースでも慰謝料を請求できます。

慰謝料の金額についても、男性と女性とで区別はありません。
相場としては100~300万円程度となることが多いでしょう。

ただし男性が被害者の場合、どうしても女性より被害結果が軽くなるでしょうから(身体的に男性の方が頑強であるため)、その意味では慰謝料の金額が女性より低めになるケースが多くなる可能性はあります。

6.男性がDVで離婚請求するために必要な証拠

男性がDVで離婚と慰謝料を請求するには、「証拠」が必要です。
世間的にはまだまだ男性がDV被害者になるという認識がなく、証拠がなかったらほとんど誰もDV被害を信じてくれない可能性が高くなるからです。

DVの証拠としては、以下のようなものを集めましょう。

  • ・けがをしている部位の写真や動画
  • ・妻から暴力を振るわれているときの録音、録画
  • ・診断書、診療報酬明細書
  • ・知人や関係者の証言
  • ・妻とのメールの内容
  • ・毎日詳細につけている日記

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7.DV被害を受けて困ったときの相談先

男性が女性からDVを受けているとき「こんなことを誰に相談したら良いのか?」と迷ってしまう方が多数ですし、「恥ずかしい」と思って抱え込んでしまう方もおられます。

しかしそれでは状況がどんどん悪化する可能性がありますし、子どもがいる場合には子どもへの悪影響も懸念されます。
夫への暴力がエスカレートして子どもに波及するケースも珍しくありません。

DVを受けたら、地域の男女共同参画センターなどで相談できるケースがあります。
また市役所でも離婚相談を受け付けています。
激しい暴力を受けていて生命や身体への危険があるなら早めに警察に行きましょう。

また本気で離婚を検討しているなら、弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
そもそも離婚できる事案なのか、慰謝料はどのくらいとれるのか、財産分与や親権がどうなるのかなど、見通しを説明してもらえて、今後の展望が開けるでしょう。

「男だから多少辛くても我慢しなければいけない」という時代は終わりました。
暴力は女性からであっても許されるものではありません。
困ったときには弁護士を始めとした周囲のサポートを頼りましょう。

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
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離婚問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
感情的になりがちな相手方との交渉を弁護士に任せることで、精神的なストレスから解放されますし、日常生活への影響も最小限に留められます。
相手方に有利な条件での示談や和解を要求された場合でも、弁護士に依頼することによって、過去の判例などを踏まえた対等な交渉ができます。
また、問題終結後に弁護士を通して合意書を作成しておけば、和解成立後に相手方から再び慰謝料を請求されたり、不貞行為の内容をSNSに投稿されたりといった事後的なトラブルを未然に防止することも可能になります。

私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
どうぞお気軽にご相談ください。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
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