離婚の際の慰謝料は、性格の不一致による離婚の場合でも発生するのでしょうか?
また、養育費を請求することはできるのでしょうか?
今回は、性格の不一致を理由とする離婚にまつわる諸問題に関して、弁護士が詳しく解説します。
目次
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性格の不一致とは
離婚をしたい理由の上位である性格の不一致とは、どのような状態を指すのでしょうか?
はじめに、性格の不一致の例と、実際に性格の不一致が原因で離婚をした夫婦の割合を紹介しましょう。
性格の不一致の例
夫婦間の性格の不一致の例には、次のものが挙げられます。
-
子の養育方針に関する違い
- 金銭感覚の違い
- 宗教観の不一致
- 政治思想の不一致
- 休日の過ごし方に関する不一致
- 仕事に関する考え方の不一致
- 居住環境に関する考え方の不一致
- 老後の生活に関する考え方の不一致
- 食事のマナーに関する考え方の不一致
特に、子の養育方針に関する不一致や宗教観の不一致、金銭感覚の不一致などがある場合には、折り合いがつかず、婚姻関係の継続が非常に困難となる場合が多いでしょう。
これらの性格の不一致の中には、婚姻期間前には気づきにくいものも存在します。
また、たとえ違和感があったとしても、新婚であるうちはそこまで気にならないかもしれません。
しかし、夫婦となり生活を積み重ねていく中で、不満が溜まっていく可能性があります。
お互いに譲らない状況が続けば、結果的に離婚に至ってしまうケースもあるでしょう。
性格の不一致が原因で離婚をしている割合
性格の不一致が原因で離婚している割合は、どの程度なのでしょうか?
裁判所が公表している婚姻関係事件を申立ての動機別にまとめた統計(令和2年度)によると、裁判所が関わって婚姻関係事件の件数(総数:58,969件)のうち、「性格が合わない」が実に25,544件であり、全体の約43.3%を占めています。
次いで、「精神的に虐待する」が、14,107件(約23.9%)です。
これは、申立人のいう動機のうち主なものを3個まで挙げる方法で調査重複集計したものですが、少なくとも離婚原因の1つに「性格が合わない」を挙げているケースが非常に多い現状が伺えます。
なお、これはあくまでも調停など裁判所に対して婚姻関係事件の申立てをしたケースにおいて、カウントされた統計であり、裁判所を通さずに離婚が成立した「協議離婚」は含まれていません。
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離婚する方法とは
性格の不一致を理由にして離婚することはできるのでしょうか。
当事者双方の合意があれば離婚できる
性格の不一致が理由で離婚する場合、互いが離婚に対して同意をしていれば、離婚が成立します。
協議離婚や、調停の話し合いの中で双方が合意する調停離婚の場合、当事者同士が離婚に合意すれば、どのような理由でも離婚は成立します。
性格が不一致であることについて、必ずしも相手に具体的内容を述べなくても、問題ありません。
そのほか、裁判の中で離婚を合意する和解離婚なども、結果的にどちらの当事者も、離婚に対して合意したケースといえます。
当事者の一方が同意しない場合は?
離婚について一般的に争われるケースは、離婚自体についてか、もしくは離婚条件についてかのどちらかで、双方の意見がまとまらない場合です。
離婚自体について争うとは、夫婦の一方は離婚を望み、片や相手は離婚を拒むという状況のことです。
このようなケースでは、当事者の合意が難しいため、裁判で争われることになります。
つまり、当事者の言い分を聞いて、証拠を確認して、裁判所が離婚を認めれば、離婚成立となるわけです。
夫婦の一方が別れたくないと抵抗しても、離婚は成立します。このような離婚を裁判離婚といいます。
裁判所は離婚をどのような基準で認めるの?
それでは、裁判所はどのような基準で離婚を認めるのでしょうか。
婚姻関係は法律で保護されており、仮に相手が応じなくても離婚をすることができるケースは、法律で限定されています。
民法770条1項に、5つの離婚原因が明記されています。
具体的な内容は以下の通りです。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
そして、裁判では、上記の離婚原因のうち、少なくともいずれか1つが該当すると判断されれば、裁判離婚が成立することになります。
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性格の不一致が離婚原因となる場合とは
それでは、性格の不一致は、上記5つの離婚原因のうちのどれに該当するといえるのでしょうか。
一番理由が近いものとしては、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」といえそうです。
実際の具体例をみながら、考えてみましょう。
その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるときとは?
まず、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」とは、具体的にどのような事情を指すのでしょうか。
これは、言い換えれば「夫婦関係が破綻していて回復の見込みがないとき」といえます。
裁判所としては、既に夫婦関係が破綻していて回復の見込みがなければ、婚姻関係を続けさせる意味がないとして、当事者の意思に反して離婚を成立させても問題ないと考えるわけです。
性格の不一致だけでは足りない?
そうであれば、性格の不一致という事実だけでは、「夫婦関係が破綻していて回復の見込みがない」と判断されるのは難しいといえます。
他に夫婦関係の破綻の事実を示すような状況が必要となります。
例えば、以下のような事実です。
長期間の別居
単なる冷却期間とは異なり、これ以上互いがもう一緒に暮らせないとして別居している場合などは、夫婦関係が破綻して回復の見込みがないと認められやすいでしょう。
ただ、1ヵ月などの短い期間では説得力がありません。
別居期間や当事者の離婚意思の強さなども総合考慮され、判例では、おおむね5年を基準にしているものが多いようです。
相手からの暴言や暴力などDVがあった
別居が長期間でなくても、暴言や暴力などのDVの事実は重大といえ、修復不可能と判断される場合があります。
以上のように、性格の不一致だけでなく、他に「夫婦関係が既に破綻している」という事実があって、複合的にみれば、回復が不可能だと判断されれば、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」として、離婚が成立すると解されます。
なお、裁判官が判断するにあたっては、これまでの経緯や婚姻期間など、個別的な事情を基礎に、問題となる事実を含んだ全ての事情を総合的に考慮します。
同じようなケースであっても、裁判官の捉え方で、導き出す判断が異なる場合もあります。
相手が超わがままな性格だったら?
それでは、性格の不一致の中でも、「相手のわがままに付き合い切れない」という状況での離婚の申し立てであれば、どうでしょうか。
「わがまま」と一口にいっても、そのレベルは他人からは想像できません。
そのため、相手が許容範囲を超えるほどわがままな性格であり、「結果的に夫婦としての協力関係が築けずに、夫婦関係が破綻して修復不可能」と判断されれば、離婚が成立する可能性があります。
ただ、それを裏付ける事実、その証拠がどれだけ揃っているかによるといえるでしょう。
例えば、相手の言動の証拠です。
わがままな言動の音声データや、動画、一方的なメールなど、相手の振る舞いが分かる証拠を揃えましょう。
親戚、同僚、友人などの証言もあれば確保しておくことをお勧めします。
また、それにより、どのような結果となったのかを明確にするといいでしょう。
- 仕事を欠勤させられた
- 相手の一方的な支出により家計がひっ迫している
- 精神的にダメージを受けて病院の診察を受けた
このように、ひとつずつ事実と証拠を積み重ねて、「夫婦関係の破綻」と判断されれば、離婚成立の可能性があるといえます。
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性格の不一致で離婚した場合の慰謝料は?
性格の不一致で離婚が成立した場合の慰謝料はどうなるのでしょうか。
そもそも、離婚の慰謝料請求は、離婚に付随して理由もなく認められるわけではありません。
不倫などの不貞行為や暴力など不法な行為により、離婚に至った場合に、相手から精神的な苦痛の対価として支払われるのが、離婚の慰謝料です。
つまり、離婚の慰謝料が認められるためには、相手の不法行為が必要となります(民法709条、710条)。
性格の不一致の場合、どちらかに不法な行為があるとはいえません。
というのも、どちらかの性格に優先順位をつけ、良い、悪いと区別はできないからです。
また、相手と性格を合わせないことが不法ともいえません。
そのため、夫婦で性格が合わないのは、不法行為とはいえないと解されます。
よって、性格の不一致だけが理由であれば、慰謝料請求は認められないでしょう。
ただ、相手からの暴力や暴言など複合的な事実が他にあって、離婚が認められる場合には、他の事実が不法行為と認められる可能性があります。
そうなれば、慰謝料請求が認められることもあります。
性格の不一致で離婚した場合に養育費はもらえる?
性格の不一致で離婚をした場合でも、養育費の支払いは生じます。
夫婦が離婚をしても子にとってはそれぞれが引き続き父親と母親であり、双方が子の養育について離婚後も責任を負う立場であるためです。
そもそも養育費は子の監護や教育のために必要な費用を親である双方が負担するものであり、離婚についてのペナルティ的な意味を持つものではありません。
そのため、離婚原因が、性格の不一致であったとしても、養育費の負担が免除されるわけではありません。
慰謝料の負担がないことと、混同することのないよう、注意しておきましょう。
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まとめ
性格の不一致だけでは、当事者の合意がない限り、離婚は難しいといえるでしょう。
そのため、裁判においては、性格の不一致だけを理由にせず、それと複合的な要因として「夫婦関係が破綻し修復が不可能」となる事実を主張していくことが必要です。
具体的にどのような事実を主張したらいいのか知りたい場合は、まずは弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
Authense法律事務所には、離婚問題に詳しい弁護士が多数在籍しております。
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Authense法律事務所では、離婚問題について、豊富な経験と実績を有する弁護士らで構成する離婚専任チームを設けています。
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離婚問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
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相手方に有利な条件での示談や和解を要求された場合でも、弁護士に依頼することによって、過去の判例などを踏まえた対等な交渉ができます。
また、問題終結後に弁護士を通して合意書を作成しておけば、和解成立後に相手方から再び慰謝料を請求されたり、不貞行為の内容をSNSに投稿されたりといった事後的なトラブルを未然に防止することも可能になります。
私たちは、調停や裁判の勝ち負けだけではなく、離婚後の新生活も見据えてご相談者様に寄り添い、一緒にゴールに向けて歩みます。
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